株式も投信も、人気のランキングをチェックしてはいけない
銘柄選び、商品選びを行うとき、フィルタリングツールやランキング情報を参考としている人も多いと思います。このとき、個別銘柄の売買人気ランキング、投資信託の売買人気ランキングを見て、「みんなが買っているのだから、いい銘柄だ」と考えて、とりあえず注文を出してみたという人は少なくないと思います。
これらの人気ランキングは、証券会社や投資情報ウェブサイトの中でも人気がある鉄板コンテンツとして位置づけられるもので、相当の人がこれをチェックしていると聞いたことがあります。実際、銘柄や投資信託の絞り込みに迷っている人にとって人気ランキングは助けになっているようです。「みんなが買っている」という事実がそこにあり、理由はわからないけど「みんな」が買っているのだから、「いい会社だろう」「いい投資信託だろう」と考えます。そして、人気ランキングの2位以下を買うとパフォーマンスも下がるような気がするので、1位の投資信託銘柄について買い注文を出すことになります。
しかし、このような「人気ランキング投資」で他人のモノマネをしている限り、あなたの投資スキルはステップアップしないと思います。
他人のモノマネをする投資スタイルのうちは「なんとなくの投資」から抜け出せない
失敗を他人の責任にする
人気ランキング投資のよくない点はいくつかありますが、まず「失敗の責任を他人になすりつける」クセがついてしまうことです。人気ランキングを参考にして投資に成功すると、その選択眼を自分の手柄とします。しかし、逆に価格が下がった場合、人気ランキングのせいにしてしまうのです。
失敗を受け入れることは人間の本質としては難しいことですが、投資家の場合、この行動は非常によろしくありません。投資は成功体験より失敗経験から学ぶことが大きな財産になりますが、これを疎かにして、思考停止しているからです。
短期的な企業評価になりがち
また、なぜその銘柄がいいのか、なぜその投資信託がいいのか、あるいはその銘柄に死角はないのか、その投資信託には問題はないのか、というチェック意識が働かなくなるのも人気ランキング投資のよくない点です。
わかりやすい例を挙げれば「『ポケモンGO』が大人気」とニュースになった日に、任天堂の売買ランキングが上がりました。これを見て「やっぱり任天堂か!」と何も考えずに買った人は数日後にガッカリすることになりました。「ポケモンGO』の開発会社は別で、任天堂の業績にほとんど影響がないことを任天堂自らプレスリリースを出したところストップ安となり、ニュースによれば17%値下がりになったからです。
そして、その日あせって損失確定した人は、さらに今ごろガッカリしているはずです。なぜなら「ポケモンGO相場」に踊った当時の最高値より、現在の株価のほうが上回っているからです。同じ任天堂を買うにしても、Switchが売り上げ好調であることがニュースになり、売買ランキングの上位になっていた日に買っていたなら、ひどくはならなかったはずです(それでもすでに株価としては織り込み済みで伸び代は限定的かもしれませんが)。
「ランキングが上位だった」ことだけを見て売買判断をするのは、短期的な思惑が含まれることが多く、中長期的な資産形成の材料としてはあまり向いていません。むしろ短期的に見ると下げる可能性があるのです。
有名な企業としか触れる機会がなくなる
東証1部だけを投資対象としても、実に多くの銘柄があります。その中には日常生活ではほとんど知る機会のない会社であるにもかかわらず、世界的にもトップクラスの技術や製品を有している、ということは少なくありません。
先ほどの任天堂の例のように、人気ランキングに登場する銘柄は誰もが知っているという傾向があります。また投資信託の場合も、人気のファンドマネージャーがよく顔出しをするファンドがランキングに登場しやすい傾向がないとはいえません。これ自体は投信会社の戦術ですから悪いことではありませんし、顔だけでランキング上位になれるわけではありません。
知名度のある有名な会社だけが売り上げを伸ばしているわけではありませんが、ここまでいくつか指摘したとおり、人気ランキングに依存する投資行動は、短期的な評価になったり、投資家としての選択眼を身につけることができなくなったりするのです。
人気ランキングは人気ランキングを再生産している?
最後に、人気ランキングを見てなんとなく買ったあなたは、あなたより後に人気ランキングを閲覧した人のランキングデータの一部となり、また別の人はそれを見て「1位だから」となんとなく投資をすることになる、という妙なサイクルの一部になってしまうことも指摘しておきます。
eコマースウェブサイトなどでは上位10件に入るか入らないかで売り上げはまったく変わるそうです。ファーストビュー、いわゆるウェブサイトを見て「最初の画面」に商品名が入るとクリック数が増え、これにより最初の画面に長く居座ることができる可能性がアップします。その一方、11位以下は目に触れにくいため売り上げは下がり、11位以下が固定化してしまいます。
「人気ランキングが人気ランキングを固定する」という仕組みは否定できません。しかしこれを投資で考えてみると、本来の企業の成長性や投資信託の商品性と異なるところでランキングが固定されてしまう恐ろしさがあるのです。
自分なりのフィルタリングルールを作るべき
最初はモノマネから入り、そこから投資を学ぼうとしている人にとっては、ランキング投資も選択肢のひとつではあります。
しかし、ほとんどの人はランキングをただマネるだけで、ステップアップのための第一歩だと認識していないと思います。もし、投資をしたいと考える銘柄や投資信託商品を見つけたいと思うのであれば、まずはフィルタリングツールを「人気ランキング以外」で使ってみてはどうでしょうか。
実はフィルタリングツールとランキング情報は、「人気ランキング」以外の情報がとても役立つツールだと思います。楽天証券の場合、ログイン後の画面で、個別株式のページに移動すると「スーパースクリーナー」の画面で好みのキーワードでランキングを作成することができます。
例えば、「過去5年間の増収比率」「過去3年平均売上高成長率」などでランキングを作ってみると、意外な企業が上位になるでしょう。「投資金額は10万円以下」など、自分の投資環境に応じた追加の条件も付与できます。
投資信託の場合は投資信託のページから「投信スーパーサーチ」の画面に移動することで、投資対象やファンドスコア、つみたてNISA対象かどうか、などの絞り込みをして商品選びを行うことができます。
さらに信託報酬の低い順で並べ替えしたりすることで候補の投資信託を選び出すことができます。ネット証券は幅広く投資信託を取り扱っているため、こうしたツールで効率よく絞り込みをかけていくことができます。
ここであえて注意点を挙げますが、上記の絞り込みキーワードはあくまで「例」であり、「筆者の好み」です。これをただ丸パクリしている限りは「人気ランキングのマネ」から脱することはできません。投資のヒントをさまざまな人から学びつつ、自分なりの「銘柄発見法」を考えてください。このときこそ、フィルタリングツールは大きな助けになるはずです。インターネットの活用がこれほど投資情報の充実につながった例はありません。紙でしか確認できなかった『四季報』のような投資情報がネットのおかげで「検索可能なデータ」となりました。
ぜひこれからは「人気ランキング投資からの卒業」をしてください。きっとあなたの投資世界が大きく広がっていくことでしょう。