平昌オリンピック、スノーボード・平野選手の銀メダルの重み
平昌(ピョンチャン)オリンピックでメダルラッシュが続く日本。6日目に行われたスノーボードハーフパイプ男子では、見事、2度目の銀メダルを平野歩夢選手が獲得しました。
約1年前、平野選手は競技中に選手生命を絶たれるほどの大ケガを負いました。しかし、懸命なリハビリと練習によって困難を乗り越え、再び銀メダルを手にしたのです。
平野選手は今回の銀メダルを、前回のソチ大会より「重い」と語りました。
ソチ大会より「重い」という表現は、オリンピックに臨むまでの、平野選手の犠牲や努力の重みだと、私たちは理解しています。
筆者も報道でそのシーンを見ていましたが、別の思いも抱きました。平野選手は重量としての重さも実感しているのではないだろうかと。
ソチ大会よりも55gも重くなっている銀メダル
銀メダルの重みを語っていた平野選手ですが、実は、平昌オリンピックの銀メダルは、ソチ大会よりも55gも重くなっているのです。
各種報道から推計したところでは、平昌オリンピックで授与されるメダルの重量は、前回のソチ大会比で見ると、銀メダルが55g増(525g→580g)、金メダルで55グラム増(531g→586g)と見られます。
図1は、平昌オリンピックのメダルを構成する各金属の重量と、物質的価値(精神的な価値ではなく、メダルを構成している金属の価値)を示しました。
図1:平昌オリンピックのメダルを構成する金属の重量と物質的価値(筆者推定)
冬季・夏季ともに、オリンピックで1位、2位、3位の競技者に授与されるメダルの規格は、オリンピックの精神やオリンピック開催の条件など、幅広いルールをまとめたオリンピック憲章の第5章「表彰式、メダルと賞状の授与」に、次のように記載されています(JOC(日本オリンピック委員会)のウェブサイトの内容を要約)。
- メダルのデザインは、事前にIOC理事会事の承認を得なくてはならない
- メダルの形は、少なくとも直径が60ミリ、厚さが3ミリでなくてはならない
- メダルの素材は、1位・2位のメダルは純度92.5%以上の銀製でなければならない
- 1位のメダルは少なくとも6gの純金で金張り(メッキ)がほどこされていなければならない
オリンピック憲章によると、金メダルは、「金が張られた銀製のメダル」ということです。
仮に、平昌オリンピックの金メダルが純金(586gの純金のメダル)であった場合、1個あたりおよそ283万円(4,828円×586g)ですが、純金でないのは、開催国の負担軽減が目的と言われています。
次に平野選手が獲得した、4年前のソチ大会の銀メダルと、今回の平昌大会の銀メダルの比較を図2に示します。
図2:ソチオリンピックと平昌オリンピックの銀メダル(1個あたり)の比較
ソチに比べて平昌の銀メダルの重さ(重量)は、55グラム(10.5%)重くなっています。この点が、平野選手が「重い」と語った理由でもあると、筆者は想像しています。
重さが2ケタ増となる一方、銀メダル1個あたりの物質的価値は1.8%の増加に留まります。重量の増加に対して物質的価値の上昇率が小幅なのは、この4年間で銀相場が下落したためだと考えられます。