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なぜ強いのか!?米シェールオイルの最新動向
吉田 哲
週刊コモディティマーケット
コモディティ(商品)をお取引いただく上でのコメント・アイディアを提供するレポートです。金をはじめとした貴金属、原油をはじめとしたエネルギー関連銘柄、とうもろこし・大豆などの穀物な…

なぜ強いのか!?米シェールオイルの最新動向

2018/1/19
・米シェール生産量はイラン・イラクを凌ぐ規模まで拡大。すでに逆オイルショック前の水準を超えている
・米国内のシェール主要地区の生産シェアは60%超。シェールが米国の原油生産量を増加させる主因に
・米シェール生産量が増える理由。1.技術革新、2.効率化、3.原油価格の上昇
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 米国の政府機関であるエネルギー省(The U.S. Energy Information Administration 以下EIA)は、毎月、米国のシェールオイル主要地区の原油生産量や稼働リグ数などのデータを公表しています。

 1月16日(火)に公表されたデータから、筆者が注目しているデータを紹介します。

米シェール生産量はイラン・イラクを凌ぐ規模まで拡大。すでに逆オイルショック前の水準を超えている

 シェールオイル主要地区の原油生産量についてです。

 以下は、米国全体の原油生産量と、EIAが提唱する米国にあるシェールオイル・ガスの生産・開発活動が活発な地区の生産量です。比較するため、サウジアラビア、イラン、イラクといったOPEC(石油輸出国機構)内の生産上位3カ国の生産量も記載しています。

図:米国、米シェール主要地区、およびOPEC内生産上3カ国の原油生産量 単位:万バレル/日量

出所: EIAのデータを元に筆者作成

 

 赤い太線で示した米シェールオイル主要地区の生産量が大きく増加していることがわかります。現在の同地区の原油生産量はすでに、OPEC内で生産2位のイラク、3位のイランを上回っています。

 2017年12月時点の米シェールオイル主要地区の原油生産量は日量634万バレルです。この水準は、逆オイルショック(2014年後半から2016年初頭にかけて起きた原油価格の急落・低迷)時に急減する前のピーク(2015年3月の日量597万バレル)を超えています。

 米国のシェールは、逆オイルショックから復活し、すでに米国のシェール主要地区だけで世界の主要産油国を凌ぐ規模になっていると言えます。

 

米国内のシェール主要地区の生産シェアは60%超。シェールが米国の原油生産量を増加させる主因に

 その米シェール主要地区の原油生産量ですが、米国内の原油生産という点からみると、米国全体のおよそ60%を占め、米国全体の原油生産量を増加させる大きな要因になっています。

図:米国内の原油生産の内訳 (項目名の右に記載した値は2017年12月時点)

出所: EIAのデータより筆者作成

 

 2017年12月時点で、米国の原油生産の6割以上がシェール主要地区からの生産であることがわかります。年々、シェール主要地区の動向が与える米国全体の原油生産の動向への影響が大きくなってきています。

 逆オイルショック時、原油価格の急落・低迷によりシェールは大きな打撃を受けた、と報じられましたが、現在はすでに、米国の原油生産を強力に支え、主要生産国を凌ぐ生産を誇る、世界の原油生産における勢力図を塗り替える大きな存在になっていると言えます。

 

米シェール生産量が増える理由。1.技術革新、2.効率化、3.原油価格の上昇

 米国のシェールオイル主要地区の原油生産量が増加している背景には何があるのでしょうか?筆者は次の3つの点からそれを説明できると考えています。

技術革新

・IT化により、良好な掘削地点を探す探査の技術が向上した。

・掘削した坑井(井戸)の中で管をさらに枝分かれさせる技術が向上した。

効率化

・生産地を効率よく生産ができる地区(埋蔵量が多い、インフラが整っている、政策面で

開発を進めやすい等)に集中させた。

・リグ(掘削機)を稼働させる際に用いるやぐらを、掘削後、解体せずに、そのまま次の・掘削地点に移動させる工夫をした。

原油価格の上昇

・生産した原油によって得られる収益が上がったこと(上がることが見込まれること)で、開発が推進されると同時にさらなる設備投資が進んだ。

 

 技術革新と効率化については、上記はあくまでも一例にすぎません。ここでは触れませんが、さらに詳細な例がいくつもあります。

生産地の集中については、7つある主要地区の中で米南部のテキサス州とニューメキシコ州にまたがる「パーミアン地区」(下図 赤枠内)への集中が目立っています。

図:米シェールオイル主要地区

出所: EIAのデータをもとに筆者作成

 

図:「パーミアン地区」の原油生産量の推移 単位:万バレル/日量

出所: EIAのデータをもとに筆者作成

 

 パーミアン地区の原油生産量はOPEC内生産3位のUAE(アラブ首長国連邦)に急接近しています。UAEは現在実施中の減産のため、生産量を増やすことが難しい状態です。仮にイラン情勢が悪化してイランへの全面的な制裁が再開された場合、制裁で生産減少を余儀なくされるイランの生産量をパーミアン地区が上回る可能性が出てきます。

 米国内の一つの地区原油生産量が、世界の主要産油国と同等の生産量となっている、ということです。

 また、パーミアン地区の原油生産量は2010年のシェールブーム開始以降、一貫して増加しています。これは、言い換えれば、“原油価格の動向に依らずに生産量が増加している”と言えます。

 シェールの生産増加は、原油価格の上昇が大きな要因である、という報道がありますが、このパーミアン地区の生産動向をみれば、原油価格が急落・低迷しても、生産量は増加し続けていることがわかります。

 パーミアン地区があるテキサス州はもともと石油の生産の主要な地区であるため、インフラや技術・ノウハウが豊富であるほか、政策的な面で他の州に比べて有利なため、パーミアン地区に集中した理由であると考えられます。

 

 次に、原油価格の動向とシェール主要地区全体の開発進捗の状況については以下のとおりです。

図:原油価格の推移(右軸)とシェール主要地区全体の掘削数・仕上げ済の井戸の推移(左軸)

出所:CME,および EIAのデータをもとに筆者作成

 

 原油価格の動向に追随するように、掘削済・仕上げ済の井戸の数が推移しています。この点は、原油価格が上昇した場合に、掘削と仕上げの活動が活発化すること(逆もしかり)を示しています。

 今回のレポートで示したような、技術革新・効率化が進んだ背景には、逆オイルショックの発生があると筆者は考えています。原油価格の下落の折、生産効率を高めることを求められ、それに石油業者が応えたのではないか?ということです。

 その技術革新・効率化が、逆オイルショック時の米シェールオイル主要地区の原油生産量の減少幅を縮め、復活を早める大きな要因になったのだと思います。

 1月16日(火)に公表されたデータには、今回紹介したデータ以外に、向こう2カ月間の生産量などの見通しも含まれています。その見通しによれば、シェール主要地区の原油生産量は引き続き、増加するとされています。

 米国の生産量がサウジアラビアに肉薄している件は、先週のレポートで述べましたが、その米国の原油生産量が増加する原動力となっているのが、今回述べた米国のシェール主要地区での生産です。

 米国のシェールが、原油市場を揺るがすきっかけとなる可能性がある点に、引き続き注意が必要です。

 

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