山崎元さんはバランス型ファンドについて懐疑的ですがヤマサキさんはどうか

 山崎元さんといえば、基本的にバランス型ファンドに懐疑的です。
▼先日の「トウシル」掲載コラム
初心者向きはウソ。バランスファンドの7つの注意点

 同じ名字で、一時期同じオフィスに在籍したこともあり、山崎元さんの薫陶を受けて今ここにいるヤマサキさん(つまり私)はというと、バランス型ファンドにそれほど否定的ではありません。むしろ、いくつかの条件をクリアすればバランス型ファンドの活用の余地はあると思っています。

 最初に断っておきますが、山崎元さんのコラムを読んで、すぐに理解して納得できたレベルの読者は、自分なりのポートフォリオを試行錯誤すべきレベルにあると思います。

 しかし、そうではないレベルの個人投資家、あるいは効率的な資産配分の検討にプライベートの時間を割けない個人投資家(投資知識があったとしても)は、いくつかの条件(できるだけ簡単な条件)を理解したうえで、バランス型ファンドを活用してもいいと思っています。

 

バランス型ファンドのメリット・デメリットとは?

バランス型ファンドのメリット

複数のアセットクラスを同時に投資できる…単一のアセットクラスに投資する投資信託を複数保有しなくてもいい
アセットアロケーションがあらかじめ提示される…複数のアセットクラスの種類と組み合わせ比率はあらかじめ確認することができる
リバランスが自動的に行われる…運用方針として設定された資産配分からかい離した場合、売買によってその調整が行われ、資産配分比率は維持され、これは個人にとっては商品の売却に当たらない
複数のバランス型ファンドが存在するため選択の余地がある

といったところでしょうか。

バランス型ファンドの留意点

運用にかかる手数料が割高であることが多い…ただし、手数料が割安であるバランス型ファンドも近年増え始めている
効率的とはいえない資産配分のバランス型ファンドもある…資産配分が投資対象としているアセットクラスで均等割になっている場合、リスクリターンやアセットごとの相関係数を考慮した資産配分とはなっていない
複雑な投資方針を追加し、初心者向けと称することで手数料を上乗せしているファンドがある…リスクコントロール型、ターゲットデート型、一定の利回りを目標とするタイプなど、手数料は高く、値動きはわかりにくくなっていることが多い
これは初心者向けの商品ではなく、普通の投資信託として考える…(後述)

 やはり課題としては留意点のほうで、この4項目くらいは理解できないならバランス型ファンドを買う以前に、投資の知識不足の心配があります。手を出す前にほんの少しだけ投資の勉強をしてからでも遅くはありません。

 特に「初心者向けという投資商品などない」ということは山崎元さんの言うとおりですから注意をしてください。初心者向けの商品があるとしたら、それはゴルフでいうハンディキャップがつく商品だと思いますが、そのようなものはマーケットにはありません。個人投資家の1万円も機関投資家の1万円も市場では同じ条件なのだと考えてください。
(昔、Nintendo DSで株式トレードを題材にしたゲームがあって、トレードで有利になるアイテムがあったり、特定の条件だと連鎖コンボが発動しボーナスで利益が倍増する仕組みでしたが、そんなものはリアルの世界にはないのです)

たとえばこんな風にバランス型ファンドを絞り込んでみよう

 さて、バランス型ファンドを選ぶプロセスについて少し考えてみましょう。できるだけ難しく考えなくて済む方法で整理してみます。

フィルタールール1.つみたてNISA適格商品から選ぶ

 これはノーロードで購入でき、かつ運用期間中にかかる信託報酬(運用管理費用)が低いコストですむ、というフィルターを金融庁に代わりにやってもらう、という意味です。

 つみたてNISA対象となる商品は、つみたてNISA専売となっていない限り、つみたてNISA以外でも購入することができますので、フィルタリングとしてとても便利だと思います。

 確定拠出年金専用ファンドも低コストのことがありますが、当該商品を購入できるのは一部の確定拠出年金規約に限られることが多いので、、「つみたてNISA」対象、を最初の絞り込みで使います。

フィルタールール2.同一グループがあったら、リスク高めのものを選ぶ

 もし、見つかったバランス型ファンドに「安定運用型、標準型、積極運用型」「株式25、株式50、株式75」のように複数のラインナップがある場合、一番リスクの高いものを選びます。

 「え、リスクが高いものを買うの?」と思うかもしれませんが、手元に安全資産、つまり現金や定期預金をそれなりに有して投資を行う人であれば、バランス型ファンドの中で、債券運用の割合を過剰に高くし、株式投資比率を下げるメリットがありません。少なくともGPIF(国の年金運用)のモデルポートフォリオなみに株式やリートへの投資比率は50%はとってもいいと思います。

フィルタールール3.特殊なバランス型ファンドは避ける

 フィルタールール1でほとんどの「地雷」「要注意」バランス型ファンドは除外されていると思いますが、もう少し絞り込むなら、以下の商品を除外してみます。
「資産配分が投資対象の数で均等である」
「ベンチマークがない(提示しない)」
「独自の運用目標を設定している(一定の利回りとか元本割れリスクを抑制するとか)」
「アクティブ運用である(独自の方針によりインデックスに勝とうとしている)」
は避けておくといいでしょう。

 これらは、特殊な運用方針を採用することで、手数料が割高になることが多いか、効率的な運用にならない恐れがあります。これらの投信にプラス数本の投資信託を合わせ買いすることでリスクを調整することもできますが、それでは本来のバランス型ファンドの活用方法(1つ買って楽をする)に合いません。

 特殊な運用方針を採用しているバランス型ファンドは買わず、インデックス運用で複数のアセットクラスについて、かつ均等に資産配分していないものを選んでみるといいでしょう。

 ちなみに楽天証券のサイトで「投信スーパーサーチ」の機能を使い「つみたてNISA買付可能   ミックスアセット   インデックス型」で検索するとリストがすぐチェックできます(執筆時点では28本)。

 

NISAやiDeCoで長期保有するなら、「最初の商品選び」が大事

 ここまではそれほど難しいことを言ってないと思いますが(山崎元さんは高校の数学が理解できるレベルで解説し、ヤマサキさんは中学の数学が理解できるレベルで解説するのが、山崎グループの住み分けとなっています)、どうでしょうか。

 こうして絞り込みをかけていくと、意外に候補が少ないことに気がつきます。特にiDeCoでは金融機関選びで詰まってしまうこともあるでしょう。いくつかのフィルタリングルールは緩和せざるを得ないかもしれません。

 NISAやつみたてNISAでは、好みの商品を買える可能性のほうが高いと思いますから、最初にじっくり商品選びをして、あとは定期的な積立投資を設定しておくといいでしょう。バランス型ファンドは市況をみてたくさん買ったり売ったりするよりは、定期積立で元本を上積みし、長期的な価格の上下動を乗り越えて、長い目でみて利益を得るほうが向いていると思います。

 そしてそのほうが、投資に時間をあまりかけず、中長期的には経済成長の果実を自らの財産とする投資スタイルとして向いているはずです。

 

「投資しないより、100倍いい」「集中投資するより10倍いい」。でも、もう少しできる工夫を

 バランス型ファンドの議論について最後にもう一言だけ指摘しておきたいことがあります。

 私がバランス型ファンドについて常々思うのは「投資をしないよりも100倍くらいベター」ということです。より高度な投資の選択肢を追求することは大事なことですが、そこで行き詰まってそもそも投資をしないことになるのが一番もったいないことです。

 また、下手な相場観に偏って「集中投資をするより10倍ベター」ということでもバランス型ファンドの活用の余地あり、と思います。相場観を主張する人ほど、自分の相場観が当たっていることを信じて疑わないのですが、こうした人ほどマーケットがそっぽを向いたとき大きな損失を被っています。

 そして、私たちは投資にたくさんの時間を必ずしもかけられるわけではない、ということも少し思い返してみるべきです。仕事をおろそかにする投資は本末転倒ですし、プライベートを削って精神的余裕を失ったり、家族との不和が生じるようならそんな投資スタイルは間違っています。

 もちろん、もう少しうまくポートフォリオを考えようと意欲があってその検討を行う余地がある人は自分なりの資産配分を検証するとよいでしょう。そのほうが楽しいし、もしかするとパフォーマンスも向上するかもしれません(結果として下がることもあるでしょうが、これは受け入れるしかありません)。

 でも、普通の人は納得のいくバランス型ファンドを探すところにだけリソースを割いて、そのあとは自動的にバランス型ファンドを買うことがあってもいいのではないでしょうか。

投資はあなたの人生のメインテーマではないのですから。