今日の為替ウォーキング

今日の一言

自分の欠点ばかり気になり出したら、そんな劣等感を直してくれる人間はこの世に一人しかいない。つまりあなた自身だ。- カーネギー

Heat of the Moment

 7月の雇用統計は弱かったが、マーケットが言うほど悪くはなかった。雇用統計が示しているのは、新型コロナ後から続いてきた米国経済の「異常な成長」が落ち着き、トレンドに戻ったということだ。

 7月の就業者が予想を大きく下回ったのは、悪天候が大きな理由だった。増加数は減っているが、リストラの不安が広がっているわけではない。失業率はサーム・ルールに該当したが、サーム氏本人が「米国はリセッションにあらず」と述べている。移民急増や労働形態など、新型コロナ後の雇用市場の構造変化がルールの有効性を減じているということらしい。 

 マーケットの一部はFRBの緊急利下げを予想しているが、過去においてFRBが雇用市場を理由に利下げしたのは、雇用者が2カ月連続でマイナスになった時だけだ。また現在の状況が、FRBが911やリーマンショックや新型コロナ流行時ほど深刻かといえば、そうではない。逆に言えば、FRBが0.50%の利下げをするならば、世界規模の不況がやってくる「オーメン」だと覚悟するべきだ。

 FRBが本当に懸念しているのは雇用者数ではなく、賃金上昇率である。米国では、ベビーブーマー世代を中心としたグレート・レジグネーション(大量離職)が発生した結果、構造的な働き手不足に直面している。企業は労働力を確保するために高い給料を払う必要がある。その労働コストは価格に転嫁されるのでインフレ率も上昇する。インフレで生活が苦しくなると、より高い賃金を求めて転職しようとする人が増えるので、企業はさらに賃上げしなくてはいけない。そしてそのコスト分(以上)が値上げされる「賃金・物価スパイラル」が止まらないことをFRBは問題視しているのだ。

 FRB前議長で経済学者でもあるイエレン財務長官は、30数年前に発表した労働市場に関する学術論文の中で、「不況の後、多くの人々は労働市場から完全に離れるが、時間の経過と共に、景気回復と賃金の上昇を期待して再び労働力として戻ってくる」と論じた。

 2020年の新型コロナ禍で多くの人々が仕事をやめたせいで、その後の経済再開の時に人手不足が深刻な問題となり、「賃金・物価スパイラル」が発生した。しかし、時間が経てば、一度は仕事をやめたものの、高賃金に惹かれたり、インフレで生活が苦しくなったりすることで再び働こうとする労働者が増えてくる。労働力参加率が上昇するなかで失業率と賃金は次第に安定に向かい、賃金の伸びは低下していく。これがイエレン氏の需要と供給の考えだ。今後の雇用市場はイエレン理論の正しさを証明することになるかもしれない。

今週の注目経済指標

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今日の重要ブレークアウトレベル

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コーンチャート分析

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