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アメリカ株式の適正水準は?
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

アメリカ株式の適正水準は?

2014/9/9
8月下旬、ダウと並ぶアメリカの代表的株価指数であるS&P500指数が初めて2000の大台に乗せました。金融危機のときには一時683まで下げていましたから、その後5年半で3倍近くになったことになります。
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8月下旬、ダウと並ぶアメリカの代表的株価指数であるS&P500指数が初めて2,000の大台に乗せました。金融危機のときには一時683まで下げていましたから、その後5年半で3倍近くになったことになります。5年半で3倍というとかなり大きな上昇率のように見えますが、年率にすると22%程度の上昇率で、それが5年半続いて3倍近くになったというだけです。

この間、皆さんは「アメリカ株は買いだ」と思いながらも、実際にアメリカ株に投資することを躊躇させるような多くのメディアを何度も目にされたことと思います。特に昨年春、S&P500指数は2000年のITバブル崩壊以来、初めて本格的に高値を更新しました。そしてそれ以降、断続的に最高値を更新する日が相次ぎ、より多くのメディアが「アメリカ株はバブルだ」などという報道を目にされているのではないかと思います。実際アメリカでもほぼ毎日「アメリカ株は今からXX%下落する」という記事や、テレビのコメンテーターを見ます。もちろん報道もコメントも自由だとは思いますが、「03月14日何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか」 で述べた通り、その結果アメリカ株への投資を見送ってしまっていたとしたら、とても残念なことです。

このような時代、そもそもアメリカの株式指数はどの辺が適正と言える水準なのか、そしてどの辺からがバブルと言える水準なのか、を皆さん自身で知っておく事は、そのような情報からの防衛手段として非常に重要だと思います。メディアの報道によってアメリカ株への投資を躊躇し、預金のまま置いていたとしても、資産は減らなかったかもしれませんが、本質を見抜いてアメリカ株に投資していた人と比べれば、「相対的に」資産は減少しているのです。リスクを取らなかったことによる損失は小さくない事を再認識し、同じ過ちを犯さぬよう、皆さん自身で割高・割安を判断できるようになっていただきたいということです。

アメリカ株の割高・割安を判断する方法の一つとして、通称FEDモデルと呼ばれるものを私の講演で何回かご紹介してきました。これはS&P500指数の益利回りと、アメリカの10年物国債利回りを比較する方法です。例えば現在、S&P500指数採用企業の今年の利益は120ドルと予想されていますが、S&P500指数は2,000ですので、益利回りは120÷2000=6%となります。これに対して10年物国債利回りは2.5%です。株式の益利回りが国債利回りを大きく上回っているので、株式は割安、ということができます。

ここで2つ注意点があります。まず国債と言うのは満期まで保有していれば元本は保証されますが、株式に元本保証はありません。一方で国債の利息は満期まで一定ですが、株式では、企業の利益は経済の成長と共に毎年増加していきます。例えばS&P指数採用企業の場合ですと、ここ5年ほどは年平均9%のペースで増加しています。そしてもし、株式の「元本は保証されない」というマイナス要因と、「利益は成長する」というプラス要因が相殺できるとしたら、S&P500指数の益利回りと、アメリカの10年物国債利回りは同じような水準に落ち着く、という仮定を置くことができます。これがFEDモデルの基本的な考え方です。

シンプルな考え方ですが、このモデルは歴史的にはかなり当てはまっています。要するに、短期的なブレはあるものの、長期的には概ね、S&P500指数の益利回りとアメリカの10年物国債利回りが同じような水準に収束する傾向がある、ということです。一つコメントするとすれば、2002年以降、S&P500指数の益利回りがアメリカの10年物国債利回りを上回る状態(株式が割安な状態)が続いています。これは2000年ITバブル崩壊にはじまり、同時多発テロや金融危機などを経験し投資家がより元本保証を重視するようになった結果、株式を敬遠する一方で、国債を選好するようになっているから、と考えることができます。その結果が、現在のS&P500指数益利回り6%に対して10年物国債利回りは2.5%ということです。

もちろん10年物国債利回りの2.5%という水準は、FRBによる度重なる量的金融緩和の結果であって、金融政策が通常の状態に戻った水準はもっと上と考えるのが妥当でしょう。ただ6月のFOMCで、理事会メンバーによる政策金利の長期的均衡水準は3.75%が中間値となっているので、長期的な10年物国債利回りの均衡水準も4%程度と推定することができます。この推定の下、FEDモデルにおけるS&P500指数はいくらになれば適正と言えるでしょうか?

答えは120÷4%=3,000です。現在S&P500指数は2,000ですが、50%上昇してやっと、歴史的に適正と言える水準に到達するということです。さらに120ドルは今年の利益ですが、経済の成長と共に利益は増加していきます。例えば来年2015年の予想利益は133ドルとなっていますから、来年の適正水準は133÷4%=3325と、時間が経つほどS&P500指数の適正水準は上昇していくのです。一体、S&P500指数がいつになれば3,000に到達するのか見当が付きませんが、到達した頃には適正水準はさらにもっと上になっているはずだということです。

これまでメディアの報道によってアメリカ株への投資を躊躇してきた人にとって悪いニュースは、上昇を逃したことによって「相対的に」資産が減少してしまったことです。そして良いニュースは、今からでも挽回できる可能性があるということ、そして今後はもうメディアの「バブル」報道を気にしなくてよくなる、ということです。

(2014年9月5日記)

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堀古英司氏の著書、「リスクを取らないリスク」
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