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何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか

2014/3/14
これは去る1月13日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2014で講演させていただいた内容を要約したものです。
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これはさる1月13日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2014で講演させていただいた内容を要約したものです。

「米国債がデフォルトすればリーマンショック以上」

2013年10月初旬、インターネットでこのようなニュースの見出しを目にする事がありました。もちろん米国債がデフォルトしたからといって、金融市場にリーマンショック以上のショックが走る事など有り得ません。米国債というのは、米国政府が満期の際に米ドルで返済する事を約束する証文であって、その米ドルを印刷する権限を持っているのは米国政府に他なりません。なのでまず、米国政府の返済能力については疑う余地はありません。

とはいえ当時、法定債務上限の引き上げを巡って議会での協議が難航していたので、実務的な要因で短期的に利払いが遅れる、という意味でのデフォルトの可能性はあったかもしれません。ちなみに元金を全て返済できないのも、短期的に利払いが遅れるのも、デフォルトはデフォルトです。我々は最悪の場合でも考えられるのは、1週間程度の利払いの遅れと考えていました。そしてその場合でも、米国政府は間違いなく、1週間利払いが遅れた分の利息も投資家に返していた事でしょう。なのでもし、利払いの遅れが理由で米国債や米国株式が売られるようであればそれは絶好の買い場であり、実際に我々のファンドでも、その場合の買いのプランを周到に準備していました。

実際には10月中旬に債務上限が引き上げられる事になり、米国債のデフォルトは回避されました。そして上記の「米国債がデフォルトすればリーマンショック以上」のニュースが出た数日後にS&P500指数は史上最高値を更新していったのです。もしこのニュースを妄信してしまって不安になって、10月の安値でアメリカ株を売ってしまった人がいたとしたら、それは気の毒というほかありません。しかしそもそも「米国債がデフォルトすればリーマンショック以上」という、有り得ないニュースが、どうして流れてしまうのでしょうか?それにはここ数年急速に起こっているメディア業界の変化を理解しておかなければなりません。

一昔前であれば、皆さんがアメリカ経済や株式に関する情報を得る先は、新聞・雑誌・テレビ・ラジオが殆どだったと思います。しかしインターネットが普及するにつれて、それら既存のメディアから情報を得る割合が減少し、インターネットから情報を得るという方が多くなったのではないかと思います。さらにここ数年はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて情報を得る機会も多くなっていると思います。要するに、これまでほぼ新聞・雑誌・テレビ・ラジオに限定されていたメディア業界に、インターネット、SNSという新しいメディアがどんどん参入し、メディア間の競争が激しくなってきているのです。

メディアの大きな収入源は広告収入です。広告主としては、より発行部数の多い新聞や雑誌に広告を出したいし、より視聴率の高い番組のスポンサーになりたいでしょう。同様にインターネットではクリック数の多さが重視されます。それでは、どうすればより多くの人がクリックしてくれるようになるでしょうか。

2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授の研究等でも明らかですが、人々は悲観的な情報により反応します。即ち、インターネットでクリック数が増えるのは悲観的な情報なのです。その意味で、情報の正確性はともかく「米国債がデフォルトすればリーマンショック以上」は、クリック数を稼ぐという点では成功だったと言えます。

これは日本だけで起こった現象ではありません。米国債がデフォルトするかもしれないというニュースが最も盛り上がったのは2013年10月8日でしたが、その日の5年物CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドは、ギリシャが971、イタリアが240、スペインが215、フランスが67、日本が63。先進国の中では、アメリカはイギリスに次いで低い42でした。要するに、米国債がデフォルトする確率は低いし、万一デフォルトしても投資家が被る損失など殆ど無かったのです。しかしこのような市場の状況に対し、アメリカの有力紙であるNYタイムズでさえ、「市場は油断している」との一面記事を掲載してしまいました。

こうして、新しいメディアが悲観的な情報でクリック数を稼ごうとする動きに対抗するため、既存のメディアも悲観的な情報で競争せざるを得なくなってきています。メディア間の競争が激化する結果、より悲観的なニュースが見出しを飾るようになってしまいます。そして皆さんのもとにはより悲観的なニュースが多く届けられるようになります。特にこの数年、私はこの傾向が強くなっているのを感じています。

検索サイト米グーグルによると、10月前半の2週間で「米国債デフォルト」のニュースは6百万件の該当がありました。10月後半はほぼ毎日、S&P500指数は史上最高値を更新しましたが、10月後半の2週間で「S&P500指数最高値更新」のニュースは僅か80万件でした。如何に人々が悲観的な情報に反応しやすいかが「利用」されているのが分かります。しかし実際には2013年、アメリカの株式相場は30%上昇しています。メディアの情報(=総じて悲観的な情報)を目にしていると、そのような上昇を完全に逃してしまう事になってしまいます。

このような事態を避けるために、投資家としてはどのような事に気を付ければ良いのでしょうか?それは今の時代、そもそも皆さんのもとに入ってくるニュースというのは、より悲観的な方向に偏っている事を認識し、自身で本質を見極める目が必要だという事です。それではアメリカの株式相場を見る上で、その本質とは何なのか?次号でご説明したいと思います。~続く

(2014年3月12日記)

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