すでにポケモンGO相場も終焉を迎えた感もありますが、関連株に投資した方はしっかりと利益確定をすることができましたでしょうか。
首尾よく上昇の初動で買えたとして、次に考えなければならないのは「いつ売るか」。筆者の実際の売却手法も含め、どのように売却を進めていったらよいかをお話しします。
買い時以上に難しいテーマ株の「売りタイミング」
テーマ株は、ある日ある時突然株価が急落します。例えば、サノヤスホールディングス(7022)は、株価が8連騰した翌日の7月25日も前日終値より高く寄り付き、800円台で推移していました。ところが突然多くの売り注文が現れて売り気配になりました。それに慌てた投資家が次々と売り注文を発注した結果、ストップ安売り気配の637円になっても株価は寄り付かず、比例配分で終了しました。その翌日からストップ安が3日連続で続き、7月25日に800円台で買ってしまった投資家は、株価急落に慌てて売り注文を出したとしても、そこから40%近く値下がりしてからようやく売却できました。
このように、通常の銘柄であっても株価の天井で売ることは至難の業であるのに、テーマ株を天井で売り抜けることなどまず不可能です。ですから、テーマ株の「売りタイミング」は非常に難しいのです。
買い時については、前回ご説明したように高値掴みさえしなければよいのですからそれほど難しくはありませんが、売りについては一工夫が必要になってきます。
通常の「売りタイミング」では遅すぎる
通常、筆者が実践する株価トレンド分析では、保有株の売りタイミングは、25日移動平均線を株価が明確に下回ったときです。
しかし、株価が短期間に急騰したテーマ株は、25日移動平均線との上方かい離が非常に大きくなっていることが通常です。そのため、そうした銘柄の株価が25日移動平均線を明確に下回るのを待っていると、高値から大きく下落した後で売却することになってしまいます。
例えば任天堂(7974)は高値32,700円に対し、25日移動平均線を割り込んだのは20,000円強ですから高値からすでに40%近く下がった水準です。イマジカ・ロボットホールディングス(6879)は1,374円の高値に対し、25日移動平均線割り込みは650円前後ですから高値から50%下がってしまっています。サノヤスホールディングスに至っては、高値865円に対して25日移動平均線割り込みが320円前後、高値から60%以上も下がった水準です。
このように、通常の「売りタイミング」があまり役に立たないわけですから、それ以外の方法で売却を進めるしかありません。そこにはある程度の「割り切り」も必要になってきます。
自身が満足できる水準まで上昇したら少しずつ売却を進める
結局のところ、「こうしていればまず大丈夫」という方法がないのがテーマ株の売り時です。したがって、筆者は「これだけ利益が得られればまあいいだろう」と妥協できるレベルまで株価が上昇したら、上昇途中でもすこしずつ売却を続けていくという「山登り方式」をよく使います。
実際、今回のポケモンGO相場でも、たまたま上昇の初動で買えていたある銘柄につき、買値の約2倍まで上昇したところで保有株の8分の3を、さらに約3倍まで上昇したところで8分の1を売却しました。残りの半分(8分の4)はそのまま保有し、結局25日移動平均線を割り込んでしまいましたのでそこで全て売却しました。そのときの利益率は40%弱でした。
他にたまたま保有していたポケモンGO関連銘柄は、上昇幅が50%程度しかなかったため売らずに保有を続けていましたが、25日移動平均線を割り込んでしまったので全て売却、利益率は10%程度にとどまりました。
他の売却タイミングとしては、例えば5日移動平均線を割り込んだら売却、といった方法も考えられます。ただ、サノヤスホールディングスのように突然株価が崩れてしまうような場合、5日移動平均線からかなり下方まで株価が下がってからようやく売れる、というケースも少なくありません。
結局は筆者自身も完全な手法を確立できてはおらず、「まあこんなものか」と妥協しているようなものです。例えば上昇率が50%程度ならば売却しないことも多いので、そこから株価が急落してしまうとせっかくの含み益を取りこぼしてしまいます。筆者は株価が5倍、10倍にも上昇するような大きな波をできるだけ取りたいため、最低でも2倍以上に上昇しないと利食い売りをしないのですが、もっと小さな利益率でもこまめに利食い売りをしていく、というスタイルを取るのも1つの方法です。ご自身に合った方法を見つけていただければと思います。
テーマ株に対して最も行ってはいけないこととは?
ここまで、テーマ株の買いタイミング、売りタイミングについて筆者なりの考え方・実践手法をご紹介してきました。最後に、筆者がテーマ株に対して最も避けなければならないと思っていることをお伝えします。それは「空売り」です。
テーマ株に限らず、筆者の投資手法はトレンドに従った「順張り」です。トレンドに逆らった「逆張り」をすると、そのトレンドが想定以上に続いた場合に非常に大きな損失を被ってしまうことにつながるからです。
株価が急騰しているテーマ株は、当然ながら上昇トレンドになっています。このタイミングで空売りを仕掛けることは当然「逆張り」となります。さらにテーマ株は通常の銘柄と異なり、上昇に勢いがついていますから、時に思わぬ高値まで買い進まれることもあります。
今回のポケモンGO相場でのサノヤスホールディングスは2週間で安値から5倍程度まで上昇しました。短期間で株価が天井を付けたあとに急落しましたから、上昇途中に空売りしたとしても何とか耐えることができたかもしれません。しかし、例えば昨年末のフィンテック相場での中心銘柄の1つであるさくらインターネット(3778)は安値から7倍まで上昇、かつ上昇期間も1カ月以上にわたり、さらに天井を付けた後もしばらく高値圏で株価が踏ん張っていました。もう1つの中心銘柄だったインフォテリア(3853)に至っては、安値から8倍に上昇、高値を付けるまでの期間は2カ月以上にのぼります。こうなると、想定外の多額の含み損に耐えられなくなり、踏み上げを余儀なくされたり、追証が発生してしまうケースも相当生じることになります。
テーマ株の株価上昇の大きな原動力となるのは空売りの「踏み上げ」です。空売りが大量に溜まった状態で株価が上昇すると、空売りをしている投資家の含み損が拡大、それに耐えられなくなって買い戻しをした結果、それがさらなる株価上昇につながるのです。
確かに上昇途中に空売りを仕掛け、程なくして株価が天井をつけて急落したならば大成功です。しかし、空売りを燃料にして踏み上げ相場が起これば、短期間でみるみる含み損が膨らみます。さくらインターネットの急騰相場では、著名な個人投資家が空売りにより1億円を超す含み損を生じ、踏み上げによって多額の損失を被ったことが生々しくブログに記されていたことが記憶に新しいです。
テーマ株は株価の値動きも派手で、短期間に株価が急騰することから個人投資家にとって人気です。しかし言うなればテーマ株は、通常の銘柄の値動きを10倍、20倍に凝縮したものといえます。そして足元の業績が伴っていないためファンダメンタルの面を無視した株価の動きになってしまいます。PERなど全く意味をなしません。
テーマ株でうまく立ち回れる自信のある方なら結構ですが、通常の銘柄へ地道に投資していた方が良い成果につながることが多いですし、時にはそうした銘柄の中から運良くテーマに乗って急騰するものも出てくるものです。
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