7月中旬の日本株マーケットを席巻した「ポケモンGO」フィーバー。大型株である任天堂株があっという間に2倍以上に上昇、関連銘柄も爆騰しました。でもこうしたテーマ株相場では注意しなければ大ケガをしかねないのも事実。今回のポケモンGO相場を題材に、筆者が実際にどう行動したか、そしてどう行動すべきかをお話ししていきます。

突如大きく上昇した任天堂株と関連銘柄

参議院選挙明けの7月11日、ポケモンGOの大ヒットが報じられた任天堂(7974)の株価が突如大きく上昇し、一時ストップ高まで駆け上がりました。任天堂株の勢いはとどまることを知らず、7月8日の16,270円からわずか6営業日で株価は2倍に上昇しました。スマホゲームのヒットで株価が大幅上昇する銘柄は珍しくありませんが、上昇前の時点ですでに時価総額が2兆円を超える超大型株の値動きとしては異例のことです。

そして、株価が大きく上昇したのは任天堂株だけではありません。ポケモンGO関連銘柄として、モバイルファクトリー(3912)サノヤスホールディングス(7022)イマジカ・ロボットホールディングス(6879)タカラトミー(7867)、さらには日本マクドナルドホールディングス(2702)エレコム(6750)など、いずれも大きく株価が上昇しました。

業績とは関係なく「思惑」のみで株価が大きく上昇している点に注意

超大型銘柄であるの任天堂株がいとも簡単に株価倍増を果たし、関連銘柄に至っては3倍、5倍にまで株価が急騰するのを目の当たりにすると、「この相場に乗り遅れてはならない」と急騰途中に飛び乗ってしまう個人投資家の方も少なくないと思います。

でも、このような、あるテーマに関連した銘柄(今回はポケモンGO関連銘柄)に投資するにあたって必ず頭に入れておかなければいけないのは、株価が足元の業績ではなく「将来の思惑」により上昇しているという点です。

そして、思惑のみで株価が大きく上昇した場合、天井をつけた後の株価の下落も大きくなる点、さらに本命銘柄との関連度合いが薄い銘柄ほど、株価が下落に転じた際の下落率も大きくなるという点にも注意が必要です。こうした点を踏まえて買いのタイミングを慎重に見極める必要があります。

テーマ株投資の鉄則はとにかく「初動に乗る」こと

筆者が考えるこうした「テーマ株」に投資する際の鉄則は、「できるだけ初動に乗ること」、これにつきます。そして、初動で乗れなかった場合は潔くあきらめるべきです。もし株価が大きく上昇したタイミングで下手に飛び乗ると、程なくして株価は天井をつけて下落に転じ、大きな損失を被ってしまう恐れが高いからです。

筆者は、テーマ株へ投資する場合でも、買いタイミングを特段変えたりはしていません。あくまでも基本は25日移動平均線を株価が超え、かつ25日移動平均線からのプラスかい離が10%を超えない水準にあるときだけ新規買いをします。

「この銘柄をどうしても買っておきたい」という場合はプラスかい離が10%を超える水準でも新規買いするケースもありますが、それでもプラスかい離が20%を超えるような場合はそれ以上追いかけて新規買いすることはしません。

例えば、ポケモンGO関連銘柄の1つであるサノヤスホールディングスを例にとると、筆者であれば7月12日に新規買いできなければその後の買いは見送ります。

サノヤスホールディングス株はわずか2週間で株価が5倍になったあと、そこから1週間で60%も株価が値下がりしました。でも、7月12日に新規買いしていれば、株価が高値から60%も下落した7月29日の時点でも十分に含み益を確保することができています。

でも、もし7月25日の寄り付きで買って損切りしなければ、たった1週間で60%の含み損を抱える結果となってしまうのです。

買いタイミングが悪いと、いとも簡単に大きな損失を被ってしまう危険性が高いことをご理解ください。

なお、サノヤスホールディングス株は株価が急騰し、7月13日以降に買ってもうまく売り抜けられれば十分な利益を得ることができました。でもそれはあくまで「結果論」にすぎません。リスクをできるだけ小さく抑えるためには、7月13日以降、株価が25日移動平均線から大きくプラスにかい離した時点での新規買いは控えるべきです。

テーマ株は「狙って買う」のではなく「たまたま買えてラッキー」が丁度良い

筆者もポケモンGO関連株をいくつか保有しており、わずかながら今回の「ポケモンGO相場」の恩恵に預かることができました。でも、筆者はポケモンGO関連株を狙って買ったわけではありません。もちろんポケモンGOの大ヒットを事前に予測できていたわけでもなく、関連銘柄を事前にマークしていたわけでもありません。

筆者は日々400銘柄ほどの株価チャートをウォッチしていますが、たまたまその中に関連銘柄があり、株価が急騰する直前に買うことができていただけです。

テーマ株は業績の裏付けがない分、急騰して天井を付けた後は、そのほとんどが急落してしまいます。そのため、よほど初動で乗ることができなければいとも簡単に損失が生じてしまうのです。

でも、筆者の経験上、テーマ株を狙って買わなくとも、自身が保有している銘柄がたまたまテーマ株の1つとして株価が急上昇するということは結構よくあります。

例えば上のサノヤスホールディングスを例にとると、もし筆者がポケモンGO相場に関係なく、純粋にサノヤスホールディングス株を新規買いしようと思ったならば、25日移動平均線を明確に上回ったら買いとする他、6月9日につけた直近高値の183円を超えたら買いとする逆指値注文をあらかじめ入れておきます。その結果、7月12日の株価上昇の初動で「たまたま」買えることになるのです。

もともとテーマ株は業績の裏付けがない分株価上昇は短期間で終了してしまいますし、株価の乱高下が激しく思ったほど利益を得ることができないことが多いものです。それならば、将来の業績向上が期待できる銘柄に投資し、その銘柄がたまたまテーマ株に該当して株価が急騰すればラッキー、程度に思っておく方が、下手にテーマ株に手を出して大ケガするよりも好成績が残せると思います。

次回は、テーマ株を首尾よく初動で買えた場合の売りタイミングについてや、テーマ株に対して決して行ってはいけない行為についてお話しします。

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