相変わらず二極化相場が続く日本株、今回は前回の基本的内容を踏まえ、足元の日本株では「バリュー」と「グロース」の2つの投資スタイルのどちらが優位にあるのかを解剖していきます。

年初来高値銘柄の特徴から見えてくる足元の日本株の傾向は?

2016年早々から日本株は大荒れの展開となったことはご存じの通りです。日経平均株価は年初から1カ月半で20%以上急落し、一時15,000円をも割り込みました。そして今でも昨年末の株価水準(19,033円71銭)にははるか及ばない水準に甘んじています。

しかし、個別銘柄に目を向けると、すでに今年の高値を更新している銘柄も数多く見受けられます。中には、日経平均株価が21,000円近辺に達していた昨年6月~8月の水準を優に上回っていたり、上場来高値を更新しているものもあります。

一方で、日経平均株価が安値をつけた今年2月中旬の水準さえも割り込み、株価が下落を続けている銘柄も少なくありません。

この違いはいったいどこにあるのでしょうか。一言でいえば「業績」です。つまり、増収増益が続いている高成長銘柄は株価が上値追いを続けている一方、業績が悪化している銘柄については例えPERやPBR、配当利回りといった指標からみて「割安」であるにもかかわらず、株価は下がり続けてしまっているのです。

最近の年初来高値更新銘柄の傾向を見ると、テーマ性のある一部の急騰銘柄を除いては、大部分が増収増益・好業績の「グロース株」です。グロース株が上昇し、それ以外はなかなか上昇しない、これが今の日本株の現状なのです。

いくら低PERでも好業績でないと買われない

実は、今の日本株には、「バリュー株」がゴロゴロしています。例えばPERでいえば、7倍、8倍といった銘柄はいくらでも探すことができます。しかも、それなりに利益をあげ、配当金もしっかり出しているにもかかわらずです。

でも悲しいことに、PERが7倍、8倍であっても、その多くは一向に株価が上昇していません。

私が日々ウォッチしている約400銘柄の中にも、しっかり利益をあげているにもかかわらずPERが7倍、8倍といった水準で放置されているものがいくつもあります。そこで、これらの銘柄の特徴を分析してみました。

するとそれらの銘柄の多くは、当期の業績が減益であったり、利益の伸びがほとんど止まっていたり、来期の業績が減益予想でした。

筆者の経験上、増益率ゼロ(つまりゼロ成長)の銘柄のPERの妥当水準は10倍です。ですから、足元でしっかりと利益をあげていたとしても、来期以降減益の予想であれば、PERが10倍を下回り7~8倍水準にとどまっていても決しておかしくありません。

もしバリュー目線で投資対象を見つけるなら、単にPERが低いだけでなく、来期以降の業績予想が増収・増益となっている銘柄を探す必要があります。

バリュー目線では永遠に成長株は買えない?

今年に入り、そーせいグループ(4565)ペプチドリーム(4587)などバイオ関連株の一角が大きく値上がりしました。それ以外にも、例えばCYBERDYNE(7779)の株価も今年に入って上場来高値を更新しています。

これらの銘柄に共通するのが、PERの水準が非常に高いという点です。ペプチドリームのPERは優に400倍を超えますし、そーせいグループやCYBERDYNEに至っては赤字予想のため算出不可能です。

でも、こうした銘柄の株価が上昇するのが今の日本株の特徴なのです。これらの銘柄に共通するのは将来の高成長期待です。将来急速に業績が伸びることが期待されているため、足元のPERが高かろうが算出不可能であろうが関係ありません。つまり、株価は数年後の業績を織り込みに行っているのです。

また、エムスリー(2413)という銘柄があります。この銘柄はPERでみると万年割高で有名です。現時点のPERも80倍を超えています。しかし、月足チャートを見ると、株価は大きく上昇していることが分かります。つまり、PERが高い状態がずっと続きながらも株価は底値から10倍以上に上昇したのです。

もし、PERが低い銘柄から投資対象を選んでいると、いつまでたってもこのような株価の大きな上昇が期待できるグロース株に投資することができません。

私は割安株に投資するのがポリシー、という方であれば、それはそれで否定しません。現に割安株投資で成果を上げている個人投資家の方もいるからです。でも、どうも自分の選んだ銘柄の株価が全く上がらないとお困りの方は、グロース株目線での銘柄選びを考えてみてはいかがでしょうか。

ほとんど機能していない低PBR投資

もう1つ、最近の傾向から筆者が思うことがあります。それは、PBRを用いた銘柄選択は、全くと言ってよいほど機能していないという点です。

PBRで銘柄選びをする際、PBRが1倍を下回っている銘柄、例えば0.5倍とか0.6倍の銘柄から投資対象を選択します。

以前は、筆者もPBRが0.5倍以下で、かつ利益もしっかりとあげていて配当金も出している銘柄へ投資し、その後の株価上昇の恩恵を受けたこともありました。

しかし、今はPBRがどんなに低くても、それだけでは株価が上昇していません。ポイントは、低PER株と同様に、業績が伸びているかどうかです。

ですから、増収増益かつPBRが1倍を大きく割り込んでいる銘柄があれば、十分に投資対象になるはずです。

ただし、増収増益が続いている銘柄というのは、まずPBRが1倍を大きく上回っています。増収増益かつ低PBRの銘柄を探すのは非常に困難と思います。

こうしたことから、今の日本株ではPBRについてはあまり気にしなくてもよい、と筆者としては結論付けています。

結論・大きな利益を狙うならグロース株投資

以上から、筆者は現時点ではグロース株を中心に投資しています。そして今のところは、その戦略が十分功を奏しています。

ただし、グロース株投資はリスクも高い点にはくれぐれも注意してください。例えば、決算発表時の来期業績予想で増収増益がストップしたり、増収増益には変わりないものの増益率が下がってしまうという発表がなされると、成長の鈍化が嫌気されて株価が大きく売られてしまうことがあります。

グロース株の最大のリスクは、成長が鈍化したと市場参加者が判断したとき、株価についていた高成長というプレミアムが剥がれ落ち、株価が大きく下落してしまうことです。

したがって、これからグロース株に新規投資するのであれば、決算発表後の株価の乱高下が収まった後にするのが良いのではないかと個人的には感じます。

また、増収増益基調にもかかわらずPERがそれほど高くない(10倍~15倍程度)銘柄もあります。決算前であれば業績の悪化が懸念されて低PERにとどまっている危険性もありますが、好決算を発表したにもかかわらず低PERが解消されないのであれば、新規投資を検討する価値はあると思います。