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【事例研究】江守グループホールディングス・突然の債務超過転落発表!②
足立 武志
知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識
株式投資がうまくいかない、という個人投資家の皆様へ。実践をベースにした「すぐに役立つ真の基礎知識」は、お客様の株式投資戦略に新たなヒントを提供。負けない、失敗しないためにはどのよ…

【事例研究】江守グループホールディングス・突然の債務超過転落発表!②

2015/4/2
今回は、前回に引き続き、突然の債務超過転落を発表した江守グループホールディングス(9963)の事例研究です。
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営業CFのマイナスが続いている原因を探る

今回は、前回に引き続き、突然の債務超過転落を発表した江守グループホールディングス(9963)の事例研究です。

前回は、営業活動によるキャッシュ・フロー(以下「営業CF」)が5年間も続けてマイナスである事実が発見されたことまでご説明しました。

まず、キャッシュ・フロー計算書をみることで、その原因を探っていきましょう。

決算短信に掲載されているキャッシュ・フロー計算書をみると、営業CFの内訳が確認できます。これによると、毎年の営業CFがマイナスになっている理由は、売上債権が増加しているためであることが分かります(例えば平成26年3月期はマイナス15,828百万円、平成25年3月期はマイナス6,243百万円)。

そこで次に貸借対照表の売上債権(=「受取手形及び売掛金」)の金額を確認してみると、次のように確かに売上債権の金額が年々増加しています。

  • 平成22年3月期:18,269百万円
  • 平成23年3月期:24,834百万円
  • 平成24年3月期:33,738百万円
  • 平成25年3月期:43,282百万円
  • 平成26年3月期:68,370百万円

前回のコラムにて示したとおり、売上高も年々増加しています。売上が増えれば、それに伴って売上債権も増えていくのは自然なことです。

でも、売上の増加割合よりも売上債権の増加割合の方が高ければ、売上はあがっていても売掛金の回収が滞っているのではないかという疑問が沸いてきます。

「売上債権回転期間」の推移をみてみる

そこで、「売上債権回転期間」という分析指標を使って、各年の推移を見ていくことにします。

売上債権回転期間は、受取手形や売掛金といった売上債権が回収されるまで、どのくらいの期間がかかっているかをみるものです。

売上債権回転期間は、以下の数式で計算することができます。

  • 売上債権回転期間=売上債権÷(売上高÷12カ月)

決算短信に記載されている売上高と売上債権(=「受取手形及び売掛金」)の数値を用いて、毎年の売上債権回転期間を計算すると、下記のとおりとなります。

  • 平成22年3月期:18,269÷(65,917÷12)=3.33カ月
  • 平成23年3月期:24,834÷(95,337÷12)=3.13カ月
  • 平成24年3月期:33,738÷(116,700÷12)=3.47カ月
  • 平成25年3月期:43,282÷(144,675÷12)=3.59カ月
  • 平成26年3月期:68,370÷(219,187÷12)=3.74カ月

これから読み取れるのは、売上債権回転期間は年々長期化の傾向にあるということです。つまり、回収できない売上債権の増加による不良債権化が進んでいる可能性が高いことが分かります。

仮に、平成26年3月期の売上債権回転期間が平成22年3月期と同じとすれば、あるべき売上債権は60,824百万円です。実際の売上債権はそれより約7,500百万円も多いですから、この分だけ売上債権が不良債権化している可能性があると判断できます。

上記の分析から判断できることとは

上記の結果から導かれる事実は以下のとおりです。

  • 毎期営業黒字であるにもかかわらず、営業CFがマイナスの状態が5期続いている
  • その理由は売上債権(受取手形及び売掛金)が毎期大きく増加しているためである
  • 売上債権回転期間は長期化の傾向にある

これらの事実、特に売上債権回転期間が長くなっている傾向からみれば、上で説明した通り75億円程度の売上債権の不良債権化による損失発生の可能性は推測できます。しかし、今回の会社発表のような、462億円もの損失計上までは予測できません。

もう少し細部まで決算書の内容を分析すれば、多額の不良債権発生の兆候がより明らかになるかも知れません。でも、多くの個人投資家が深い会計知識や大きな手間をかけずにできる分析となると、本コラムで説明した程度のものだと思います。

それでも、営業CFがマイナスの状態が継続していること、売上債権回転期間が長期化していることから、将来多額の損失が生じる可能性を考慮して、無理に投資対象とする必要はないという判断を下すことは十分に可能です。そうすれば、江守グループホールディングスへの投資を避けられたでしょうし、仮に保有していたとしても、3月16日の発表より前に早期に売却することで、損失を小さく抑えることができたのではないでしょうか。

中国進出企業に同様のリスクはないのか?

ところで、江守グループホールディングスが3月16日に発表した資料をみると、今回の巨額貸倒損失計上の理由の1つとして、「中国においては経済の減速傾向が続く中、中国子会社の主要得意先の所属する特定の業界(金属資源等)が金融引き締めの影響を受け、得意先の資金繰りの悪化が見られました。」という記述があります(出典:江守グループホールディングスHP 平成27年3月16日「貸倒引当金繰入額(特別損失)の計上に関するお知らせ」)。

この記述を素直に読むと、中国では経済の減速により景気が悪化しているのではないかという疑念が生じます。

とすれば、江守グループホールディングスにとどまらず、中国に大きく肩入れしている他の企業についても、同様に売上債権の回収不能による巨額の損失が生じる恐れがあるのではないかと個人的には感じてしまいます。

これについては個々人で判断するほかありませんが、筆者であれば、中国での取引の比率が高いような企業については、同様のリスクが存在する可能性があると推測し、投資対象から外すか、投資するにしても少ない額にとどめようと思います。

無用なリスクを回避するためには「疑わしきは投資せず」という姿勢も重要

今回ご説明した分析手法は決算短信のみでできる簡単・単純なものですが、何かしら問題を抱えているか可能性の有無を判定する方法としては意外と効果を発揮してくれます。

特に黒字決算にもかかわらず営業CFのマイナスが続くようなケースは、今回の江守グループホールディングスのような回収不能となった売上債権の存在だけでなく、粉飾決算の兆候(売上の架空計上など)についてもある程度推測することができます。

もちろん、分析の結果、回収不能の売上債権の存在や粉飾決算の可能性が高いと判断できても、実際は何らそのような問題は生じていないこともあります。

決算書を用いた分析には自ずと限界もあります。全てのケースで明確に不良債権の存在や粉飾決算を見抜くことはできません。でも、分析の結果何かしら引っかかる点がある銘柄については無理に投資せず、投資対象から外すようにすれば無用なリスクを回避することができるのではないでしょうか。いうなれば、「疑わしきは投資せず」という姿勢です。

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