執筆:香川睦
15日の日経平均は、209円安の16,405円と続落しました。米国株式の変動が高まり、来週20-21日に日米で開催される金融政策イベントを控えて不透明感が強いなか、為替がやや円高ドル安で推移したことが日経平均の上値を押さえました。
日本時間の16日5:30時点で、ドル円は102.15円、CME日経平均先物(12月限)は16,390円で推移しています。15日の日経平均終値(16,405円)から計算される先物理論値16,275円(日経平均-130円(みなし配当金))と比較して115円高い水準となっています。
(1)調整局面を迎えた米国株式が重石
9月に入り日経平均株価の上値が重くなった要因として、米国株式が調整局面を迎えたことが挙げられます。図表1でみる通り、ダウ平均(ダウ工業株30種平均)は、来週20-21日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を控えた追加利上げ観測と長期金利の上昇、ヒラリー・クリントン民主党候補に浮上した健康不安説を発端とする大統領選挙を巡る不透明感、原油相場の下落などを嫌気して軟調な動きとなっています。9月9日付け本レポート「チャイナリスクとアメリカンアノマリー」で示した通り、米国市場の季節性(経験則)で、9月は株価変動率が高まりやすいとされています。ダウ平均は、7月と8月に史上最高値を更新してきた経緯もあり、ここにきての株価調整は想定内とも考えられます。
図表1:日経平均、ダウ平均、ドル円相場の推移

(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年9月15日)
特に、米大統領選挙で優勢を続けてきたクリントン候補に健康不安説が浮上し、トランプ共和党候補の当選確率が盛り返してきた状況が懸念されます。英国の独立系調査会社オクスフォード・エコノミクスは12日、「トランプ候補が大統領に当選した場合、2021年の米国のGDPは1兆ドル下振れする可能性がある」との試算を公表しました(13日、ロイター通信報道)。反資本主義や反グローバリズム(例:NAFTAからの離脱)を唱えるトランプ候補が優勢となる場合、市場が株安やドル安(円高)で反応するリスクがあり要警戒です。なお、9月入りして発表された主要経済指標(8月の雇用統計、自動車販売台数、ISM製造業景気指数、ISM非製造業景気指数、小売売上高など)が市場予想を下回ってきたことで、FF金利先物市場で試算される来週のFOMCでの追加利上げ確率は20%まで低下しています。
(2)日銀の追加緩和観測と長期金利の上昇
日本の国債市場では、二つの要因で長期金利(利回り)が上昇しています。一つは米国の追加利上げ観測を受けた米長期金利上昇に伴う影響。もう一つは、来週20-21日の金融政策決定会合を控えた日銀による追加緩和策を意識した動きです。各種報道によれば、日銀は予定されている総括的検証を公表した上で、マイナス金利の深掘り(例:-0.1%→-0.2%)を軸にした追加緩和策を検討していると言われています。ただ、1月29日に導入したマイナス金利政策が「利ざや縮小」を介し銀行業界の業績悪化懸念に繋がった経緯を踏まえ、マイナス圏で平坦化したイールドカーブ(利回り曲線)をスティープ化(長短金利を拡大)させる政策も実施するとの観測が出ています。こうした見方で、市場では短期債金利が低下する一方、長期金利は上昇傾向となっています(図表2)。日銀は、金融機関や年金の運用環境を改善させ、投資家の懸念を和らげる政策を導入することで副作用を緩和させ、デフレ脱却に向けたコミットメント(姿勢)を再確認すると考えられます。一方、政策変更が決定されなかった場合、ドル円と株式に失望売りが出るリスクには警戒が必要です。
図表2:日本国債の残存期間別利回り推移

(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年9月15日)
(3)日本市場の業況感は意外に底堅い
一方、日本市場の業績見通しは比較的底堅い展開が見込まれています。図表3の下段でみる通り、TOPIXベースのEPS(1株当り利益)は、2015年(実績)の低迷を経て、2016年は前年比9.0%増益、17年は同6.4%増益、18年は同8.5%増益と最高益更新が見込まれています(Bloomberg集計による市場予想平均)。実際、13日に財務省・内閣府が発表した7-9月期の法人企業景気予測調査によると、大企業の景況感を示す景況判断指数は3四半期ぶりにプラスに転じました。産業別では情報通信機械関連、自動車関連、電子部品(スマホ向けなど)などが上向きとなっています。8月に決定した事業規模28兆円超の経済対策による公共事業の受注増加が見込まれ、建設業も上向きつつあります。外部環境面では、中国で9月13日に発表された8月の鉱工業生産(前年同月比+6.3%)、小売売上高(同+10.6%)、固定資産投資(同+8.1%)のどれもが市場予想平均を上回る結果となりました。同国経済の構造問題が解決されたわけではありませんが、景気を巡る過度の悲観は緩和しつつあり、香港ハンセン指数は9月に年初来高値を更新しました。市場は、(過去の業績より)先行きの業績見通しを織り込もうとする特徴があります。業績見通し改善を想定したTOPIXの予想PER(株価収益率)は16年で13.3倍、17年で12.5倍、18年で11.5倍と割安感があります。9月の株価調整が米国市場の季節要因に連れ安する動きとみなし、「株価は業績」との格言に倣うなら、足元の押し目は中長期の投資機会になると考えられます。
図表3:日本株式(TOPIX)の業績動向(実績と予想)

(注)上記したTOPIXベースのEPS(1株当り利益)の実績と市場予想
(Bloomberg集計による市場予想平均)
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成
(2006年初~2016年9月15日)
まとめ(ポイント)
日本市場では、米国株式の調整局面入りの余波を受けて株価の上値が重くなっています。米国株は、主要市場指数が7-8月に最高値を更新してきただけに、株価は季節的にも下落しやすい時期に入ったと思われます。ただ、株価下落の要因となった米追加利上げと大統領選挙を巡る不透明感は早晩結果が出て織り込まれていくと考えられます。むしろ、米国株が10-12月期に回復基調を辿りやすい季節性に注目したいと思います(9月9日の本号「チャイナリスクとアメリカンアノマリー」を参照)。米国のファンダメンタルズ(緩やかな景気の拡大と低金利環境の持続)と日本の業績改善傾向に大きな変化がないと想定するなら、米国株の調整に連れた日本株の下落は、その後の戻り相場を視野に入れた押し目買い機会と考えられます。












































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