執筆:香川睦
25日の日経平均は前日比41円安の16,555円と小幅反落しました。26日(米国時間)にジャクソンホール会議で予定されているイエレンFRB議長による講演を前に様子見姿勢や見送り感が強いなか、為替も株式も狭いレンジでのもみあいとなりました。日銀のETF買入枠拡大による株価下支え期待が根強くなっていますが、日銀は昨日707億円のETFを買い入れたことを公表しました。
6日の日本時間5:30で、ドル円は100.56円、CME日経平均先物(9月限)は16,500円で推移しています。
(1)大型株の優勢と小型株の劣勢
米国では、低金利環境の下で景気が徐々に底堅さを増しており、主要株価指数は最高値圏で推移しています。年末までにFRB(米連邦準備制度理事会)が追加利上げを実施するとの見方がいまだ有力である一方、日銀は暫くマイナス金利と量的・質的金融緩和政策を続けていく見通しです。こうしたなか、ドル円の下落(円高)一巡を指摘する見方と日銀によるETF買入枠拡大による物色期待で、7月以降はグローバル企業や金融業種の比重が大きい TOPIX大型株指数(東証コア30種や東証大型70種)が優勢を鮮明にしています(図表1)。一方、今年上期(1-6月期)にパフォーマンスが比較的良好だった東証マザーズ指数、東証中型株・小型株指数が劣勢を余儀なくされていることには注意が必要です。
図表1:規模別株式指数のパフォーマンス比較(16年下期)

(注)TOPIX(東証)規模別指数の時価総額規模:東証コア30種>東証大型70種>東証中型株>東証小型株
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(16年7月初~8月25日)
(2)日本株のバリュエーションを国際比較してみる
TOPIX(東証)コア30種指数に象徴される大型株の優勢は、業績の安定を見込んだ上での割安感が見直されはじめたと言えそうです。図表2が示す「世界の主要市場指数別バリュエーション比較」でみる通り、TOPIXコア30種の来期予想PER(約11.4倍)、PBR(約1.09倍)、配当利回り(約2.7%)など各種バリュエーション指標は、底堅さが見込まれる業績見通し(今期も来期も増益予想=Bloomberg集計による市場予想平均)を想定すれば、国際比較でみた割安感が目立ってきます。下期(7-12月期)入りした市場では、今期だけでなく来期の業績見通しも材料視されていくと考えられます。外部環境の安定が続くとの想定に立てば、大型バリュー(割安)株見直しに注目していきたいと思います。
図表2:世界の主要市場指数別バリュエーション比較
| 国名 | 市場指数名 | 指数値 | 16年下期 騰落率 |
16年上期 騰落率 |
今期(予) 増減益率 | 来期(予) 増減益率 | 予想PER (今期/倍) | 予想PER (来期/倍) | PBR (倍) | 配当 利回り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | TOPIXコア30種 | 634 | 8.8% | -23.1% | 0.9% | 5.8% | 12.01 | 11.35 | 1.09 | 2.7% |
| 日本 | TOPIX(東証) | 1,304 | 4.7% | -19.5% | 9.0% | 6.8% | 13.33 | 12.48 | 1.15 | 2.2% |
| 日本 | 日経平均株価 | 16,556 | 6.3% | -18.2% | 9.6% | 9.5% | 16.83 | 15.38 | 1.58 | 2.0% |
| 日本 | 東証マザーズ指数 | 911 | -9.7% | 13.8% | 106.2% | 39.3% | 40.21 | 28.87 | 4.14 | 0.5% |
| 米国 | S&P 500種 | 2,175 | 3.6% | 2.7% | 7.6% | 13.2% | 18.52 | 16.36 | 2.87 | 2.1% |
| 米国 | NYダウ 工業株30種 | 18,481 | 3.1% | 2.9% | -2.5% | 14.1% | 17.45 | 15.30 | 3.17 | 2.5% |
| 米国 | ナスダック 総合指数 | 5,218 | 7.7% | -3.3% | 37.4% | 17.6% | 22.54 | 19.16 | 3.59 | 1.2% |
| 欧州 | ストックスヨーロッパ600 | 345 | 4.6% | -9.8% | 46.2% | 13.2% | 16.43 | 14.52 | 1.76 | 3.6% |
| 欧州 | ドイツ DAX指数 | 10,623 | 9.7% | -9.9% | 76.7% | 12.0% | 13.81 | 12.33 | 1.69 | 2.9% |
| 欧州 | フランス CAC40指数 | 4,435 | 4.7% | -8.6% | 54.7% | 9.9% | 14.71 | 13.39 | 1.39 | 3.8% |
| 欧州 | FTSE100指数 | 6,836 | 5.1% | 4.2% | 111.7% | 16.3% | 17.62 | 15.15 | 1.83 | 4.1% |
(注1)「16年下期騰落率」は16年7月以降の指数騰落率、「16年上期騰落率」は16年1月から6月までの騰落率
(注2)増減益率(予)や予想PERはBloomberg 集計による指数別の市場予想EPS(1株当り利益)にもとづく
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(16年8月25日時点)
(3)FRB議長のジャクソンホール発言はカタリストとなるか
上記した大型割安株の見直しが市場で進むにはカタリスト(きっかけ)が必要となります。日本株式市場では、米金利の上昇や為替市場におけるドル円の上昇(円安)が大型株の優勢を後押しする例が多くみられました。逆に、米金利の低下やドル円の下落(円高)は大型株の株価を押し下げたことがあります。その理由は、(1)米景況感の改善や円安が大型株に多く含まれるグローバル企業(自動車や総合商社)の収益改善を連想させ、(2)米ドル金利の上昇による内外の長短金利拡大(利ざや拡大)観測に繋がり、大型株に多く含まれる銀行業の収益改善期待に繋がったことが多かったからです。
為替市場は目先、26日(米国時間)のジャクソンホール会合(各国中央銀行首脳が集まる経済シンポジウム)で予定されているイエレンFRB議長による講演会発言に注目しています。ダラス連銀のカプラン総裁は今週初、「米経済は前進している。雇用の改善などが続けば追加利上げが適切」と述べ、米追加利上げが市場予想より早い可能性に言及しました。イエレン議長がジャクソンホール講演会で当面の金融政策方針に言及するか否かを材料視しそうです。年内のFOMC(米連邦公開市場委員会)は、9月20-21日、11月1日-2日、12月13日-14日の3回のみが予定されています。米大統領選挙(11月8日実施)を直後に控えた11月FOMCでは、政治的な配慮から金融政策の変更を実施しにくいと言われており、12月の追加利上げ説が有力となっています。とは言っても、12月に何らかの事態(海外リスク要因など)で利上げを見送ることとなれば、昨年末時点で「2016年は4回程度の利上げ」を見込んでいたFOMCが「実際は一度も追加利上げを決めることが出来なかった」との評価を受けることとなります。従って、9月2日に発表される米雇用統計(8月分)で米景気改善が鮮明となれば、市場は「早ければ9月FOMCでの追加利上げ」を織り込んでいく可能性があります。
今年の日経平均は、米FF金利先物市場で算出される「年末までの米利上げ確率」と高い相関性がみられたことが注目されています(図表3)。9月20-21日には日銀の金融政策決定会合が予定されていますが、目先は米追加利上げ観測の高まりと、これを受けた為替相場の動きが日経平均の行方に影響を与える可能性があり注目したいと考えています。
図表3:米国の年内利上げ確率と日経平均の推移(2006年初来)

(注)「米国の年内利上げ確率」=米FF金利先物市場をもとにBloombergが算出した市場予想平均(生起確率)
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(16年8月25日時点)









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