10年3月中間期に実質5%増益、今後の売り上げ伸び率の低下とコスト増を予想

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
00551 裕元工業(集団)(ユーユエン・インダストリアル) 23.7 HKD
(06/17現在)
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裕元工業の2010年3月中間決算は、純利益が前年同期比3.2%減の2億1100万米ドルだった。特殊要因を除くコア利益は同4.9%増の2億1000万米ドルと、BOCIの予想範囲内。株式56%を保有する小売子会社、宝勝国際(03813)の貢献を除外した場合、裕元工業のフットウエア製造部門の売上高は0.5%の小幅の落ち込みを示した。販売量が4.7%伸びる半面、平均販売価格の低下が響いたが、09年10-12月期の10.4%減収から、10年1-3月期には10.9%の増収に転じた。また、3月中間決算の粗利益率はほぼ前年同期並みの25.5%で、営業利益率は0.7%の低下となる10.1%。持ち分会社の利益貢献が約1000万米ドルから3100万米ドルに増加したことで、純利益率は前年同期並みの9.9%だった。同社経営陣は前年同期と同様、1株当たり0.34HKドルの中間配当を実施する方針を明らかにしている。

BOCIは業況サイクルの上昇がほぼ一段落したとの見方を示し、同社の収益環境がこの先、相対的に厳しさを増すとみている。3月中間期には前年同期実績の低さが同社全体の増収につながったが、10年4-6月月期以降は前年実績が上向く運び。その一方で、市場競争の激化や顧客の低価格志向を背景に、平均販売価格は引き続き軟調に推移しているという。BOCIはさらに、信用不安を受けた欧州経済の不透明感に言及し、同社の売り上げ伸び率が減速する可能性を指摘している。

また、同社にとっては中国国内での大幅な人件費高騰も利益圧迫要因の一つ。市場関係者の間では、この先、賃金上昇率が年15-20%に達するとの見方がコンセンサスとなりつつある。BOCIによると、裕元工業の製造部門の人件費は売上高の14%相当。賃上げ率が10%に達するごとに利益率は1.5%低下し、純利益は約15%縮小する見通しという。一方、10%の賃上げによるコスト増は工場出荷価格のわずか1.5%の引き上げで吸収できるとみられるが、BOCIは世界経済を取り巻く不透明感から、取引先に対する生産コスト増大分の全面的な転嫁は難しいとの見方だ。

BOCIは中間決算発表を受け、同社の10年9月期の予想EPSをほぼ現行水準に据え置く半面、今後のコスト増を考慮し、11年9月期と12年9月期の粗利益率に関する想定値をそれぞれ24%から23.7%に、24%から23.4%に下方修正した。同社株価は中国国内での相次ぐ賃上げストなどを嫌気した売りで先週反落したが、BOCIは同社の生産ラインが中国(地域構成比50%)、ベトナム(26%)、インドネシア(24%)に分散していることに触れ、ある程度柔軟に生産の再配置を行うことが可能と指摘。中国の賃金上昇による影響は、現状ではさほど深刻ではないとの認識を示した。ただ一方で、業況サイクルの後退が同社株価の上値を圧迫する可能性に言及。目標株価を引き下げるとともに、同社株価の先行きに対するこれまでの強気の見方を、中立的な見方に修正した。