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G20の資本流出規制
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G20の資本流出規制

2016/3/16
前回、日本の家計部門の個人金融資産の内訳について欧米各国と比較しながらお話しました。年初からの株の下落によって日本の個人金融資産は多少なりとも影響を受けるが、欧米と比べると株式の資産構成比率が小さい安全志向のため、影響は欧米より小さいという点について触れました。
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2月26、27日に上海でG20の国際会議が開催されました。G20とは、"Group of Twenty"の略で、「20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議」が正式名称です。G20とは、G7(日本・米国・イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・カナダ)の先進7か国にEU(欧州連合)、ロシア、新興国11か国(中国・インド・ブラジル・メキシコ・南アフリカ・オーストラリア・韓国・インドネシア・サウジアラビア・トルコ・アルゼンチン)が参加する会議のことです。2008年のリーマン・ショック以降、新興国経済が力をつけてきたことから注目されるようになりました。G20のGDPを合計すると、世界のGDPの80%以上を占め、貿易総額は世界の80%となります。また参加国の総人口は世界の3分の2ほどになるため、世界経済を左右する非常に重要な会議ということがわかります。

マーケットは、G7やG20の会議の動向や声明文、その前後に発せられる要人の発言に注目しています。昨年夏場の上海株の急落以降続く世界的な株安によって、中国などの新興国から大量の資金が流出し、新興国の通貨安、債券安、株安、その結果による格下げなどによって金融市場の動揺がいまだ収まっていません。そのため今回のG20では、資本の規制がかかるのかどうかという点に注目していました。

国際金融協会(IIF)によると、2015年に新興国から流出した資金は7350億ドル(約84兆円)で過去最高の金額であり、その9割が中国から流出したとのことです。資金流出は、債券売り、株売り、そして通貨売りと新興国金融市場を揺さぶります。また、通貨安が進むと輸入物価が上昇し、インフレに苦しみ経済成長がさらに困難になってきます。この負の連鎖を止めるには、資金流出の規制が必要となります。具体的には、資金を持ち出す金額に制限をかけるとか、持ち出す資金に課税するとかの方法があります。IMF(国際通貨基金)も、このような状態を危惧し、G20開催前の24日に「資本の流出入の管理を含めて政策手段を検証する」と提言しました。しかし、資本流出規制は両刃の剣で、規制が強すぎると投資家は新興国への投資に慎重になり、新興国経済の成長を妨げ、世界経済全体の成長を妨げるリスクとなります。

しかし、結局、G20で発表されたのは、各国の具体的な規制策は出ず、「G20に作業部会を設置し、資本流出規制についての指針づくりを進める」という内容でした。現時点で、新興国に対して何らかの資本流出規制をかけ、一時的にマーケットを安定させるという具体的な話までには至りませんでした。2日間の会議ですぐに決められるという内容ではないため、指針の作業部会を設置するという決定は一歩前進ですが、マーケットの不安心理を取り除くということにはなりませんでした。

このようなG20の結果を受けて、週明けの29日(月)の為替市場はどのような反応だったでしょうか。マーケットの期待が高すぎると、結果との落差から失望売りとなりますが、今回は事前にあまり期待していなかったこともあり、週明けの東京市場が始まってもあまり大きな動きにはなりませんでした。しかし、東京市場の午後になると、日本株は大きく下落し、ドル円は円高に動きました。背景は、その日の人民元の基準値を中国当局が「元安」に設定したことです。G20で通貨安競争を回避する方針を確認した直後の「元安誘導」に対し、G20開催国、議長国であった中国当局に対する不信感が広がり、株は大きく下落しました。注目の上海株は、前週末比一時4%超も下落しました。結局、G20の取り決め内容は無駄だったとマーケットは理解しました。

日本の新興国投信

G20で注目された新興国に対する投資資金の動きは、日本の場合はどのような動きだったでしょうか。個人が投資しやすい投信の動きから見ていきたいと思います。

まず、投信の中の外貨建て資産のこの10年の推移を見てみますと、リーマンショック前年の2007年が36.9兆円と最高額でした。しかし、2008年のリーマンショックで40%急減し、22.3兆円となりました。その後増えますが、2011年の欧州債務危機で再び22兆円台の残高となりました。その後2014年には30.6兆円まで回復しましたが、2015年には減少していることがわかります。

日本の公募投信外貨建て純資産推移(兆円)

2006年 27.7
2007年 36.9 9.2
2008年 22.3 ▲14.6
2009年 28.6 6.3
2010年 27.2 ▲ 1.4
2011年 22.9 ▲ 4.3
2012年 24.2 1.4
2013年 26.2 2.0
2014年 30.6 4.4
2015年 29.1 ▲ 1.5

この中で、残高の大きい米国とユーロ圏、人気のオーストラリア、新興国のブラジル、インド、中国、南アフリカの純資産額の推移がどのようになっているか直近の動きで見てみます。2014年末と2015年末、そして2016年1月末の純資産残高推移を見ます。

外貨建て純資産国別推移(億円)

  2014年末 2015年末 前年比 2016年
1月末
前月比
米国 16兆5764 17兆1193 +5429 16兆4522 ▲6671
ユーロ圏 2兆4376 2兆3720 ▲656 2兆3696 ▲24
オーストラリア 3兆5746 3兆309 ▲5437 2兆9607 ▲702
ブラジル 1兆191 5807 ▲4384 5439 ▲368
インド 3199 4557 ▲1358 4333 ▲224
中国 480 400 ▲80 300 ▲100
南アフリカ 1088 736 ▲352 691 ▲45
トルコ 1377 815 ▲562 782 ▲33

2015年後半からの世界的な株安で、2015年末残高は、2014年末と比べると米国以外は軒並み減少となりました。米国は、利上げするほど経済が好調で、まだ金利も高かったため人気があったようです。しかし、2016年の年初からの株安で、米国も含め減少となりました。ブラジル、オーストラリアをはじめとした新興国は減少が続いているようです。このような残高推移を頭に入れておくことは、相場シナリオを考えていく上で参考になります。今後、この残高が現在の金融環境を受けて減少傾向になるのか、あるいは、現在の株価やドル円水準を買い場と見る投資家が増え、残高が増えていくのかどうかが注目です。

これらの数字は日本投資信託協会のホームページから知ることが出来ます。詳細なデータが毎月発表されますので、外貨建て投信の売買動向、新興国への投信動向などを調べることが出来ます。外貨建て投信の購入は、円を売って外貨を買うことから「円安要因」であり(ヘッジ付きの場合はニュートラル要因)、投信の解約は、外貨を売って円に換えることから「円高要因」となります。単純な図式で言えば、投信残高が増える国の通貨は「買い」で、減る国の通貨は「売り」ということになります(ヘッジ付きの外貨建て投信はニュートラル要因となります)。投信の細かいデータは毎月発表されます。日本の個人の外貨投資に対する動向がわかりますので役に立ちます。投信に関する記事は新聞などにもよく取り上げられますので、これらの記事やニュースもチェックしておくと参考になります。

また、財務省が週間で対外証券投資の売買高を発表しています。2月14-20日の週間ベースでは、2兆3276億円と大幅な買越額となりました。買越額とは、外債や外株を売る金額よりも買う金額の方が大きかったという金額のことです。ドル円の要因としては円安要因ということになります。この買越額は2005年以降で最大となりました。マイナス金利から海外の金利に関心が高まり、また、株や為替を割安とみる水準感から外債・外株投資が増えたようです。この「対外証券投資」の数字は投信も含めた数字で速報性があり、記事もよく掲載されますので参考になります。

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