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量的金融緩和

2015/2/12
1月22日、欧州中央銀行(ECB)は、量的金融緩和の導入を決定しました。
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1月22日、欧州中央銀行(ECB)は、量的金融緩和の導入を決定しました。

量的金融緩和は、Quantitative easing、略してQEと呼ばれている金融政策です。中央銀行は、通常、金利の上げ下げによって景気や物価の安定を図ろうとしますが、2008年のリーマンショック後、日米欧の中央銀行は金利をどんどん下げた結果、実質ゼロ金利となったため、これ以上利下げができなくなりました。この結果、新たな政策手段として金利操作から市中に流す資金供給量の調整に変更しました。大量のマネーを市場に供給することによって金融を緩和することから「量的金融緩和」と呼ばれています。

日米欧の量的金融緩和

FRBは、リーマンショック後2008年から3回にわたって量的緩和を実施しましたが、好調な景気を背景に雇用も増え、失業率も下がり、いち早く量的緩和第3弾を2014年10月に終了しました。

一方、日銀は、第二次安倍政権が発足し、黒田総裁が就任した後の2013年4月から、従来の量的緩和とは異次元の大量購入である「量的・質的金融緩和」を実施しました。更に、2014年、FRBが終了した同じ10月に追加の量的緩和を決定しました。マーケットでは、予想外の追加緩和だったため、円安と株高に非常に反応しました。

そしてECBは、やるぞやるぞと言いながら、ドイツの反対もあってなかなか実現しなかったのですが、ドラギ総裁は外堀を埋めながら、ついに2015年早々に導入を決定しました。しかも、市場が予想していた規模よりも大規模でした。この結果、要因としてはかなり織り込まれていたため、導入前までにユーロはかなり売り込まれていましたが、更にユーロ、ユーロ円は売り込まれ、株は上昇しました。

下表に日米欧の量的緩和の規模や導入時期をまとめています。

  日銀 FRB
米連邦準備理事会
ECB
欧州中央銀行
当面の
政策目標・時期
物価上昇率2%の達成
2015~2016年度
ゼロ金利から利上げへ
2015年半ば
デフレを回避
2%に近い物価上昇率の目標達成が見通せるまで
ゼロ金利
導入時期
1999/2導入後、
解除→復活→解除を繰り返し、2008/12
以降、実質ゼロ金利に
2008/12
実質ゼロ金利政策を導入
2008/7利上げ以降
段階的に利下げ
2014/6
マイナス金利導入
量的緩和
導入時期
2001年(量的緩和)
当座預金残高を目標
2010年(包括緩和)
2013/4
量的・質的緩和

「現金+日銀当座預金の残高」の合計であるマネタリーベースを目標
2013/10 追加緩和
2009/3~2010/3
量的緩和第1弾(QE1)
2010/11~2011/6
量的緩和第2弾(QE2)
2012/9~2014/10
量的緩和第3弾(QE3)
→終了
2014/12
物価上昇率マイナス
2015/1
量的緩和導入
少なくとも2016/9迄
資産購入額 長期国債を
月8~12兆円
国債と住宅ローン担保証券を月850億ドル(QE3
約10兆円)
国債など月600億ユーロ(約8兆円)。16/9までの総額は約1.1兆ユーロ(約146兆円)

量的金融緩和の効果と副作用

量的金融緩和は、中央銀行が金融機関から国債などを大量に買い取り、その代金として金融機関に資金を供給する政策です。金融機関はその代金を企業への貸し出しや個人への住宅ローンなどに回し、また国債購入によって長期金利が低下することから経済を活性化させ、デフレを脱却させる効果が期待されています。日本の場合、確かに異次元の量的緩和によって、株高と円安が生じ、物価は上がりましたが、消費増税の影響や世界景気の低迷もあって、本格的な景気回復には至っていません。しかも、物価も下がり始めています。その結果、円安だけが残り、電機、ガス料金の高止まりという家計を圧迫する副作用の影響が出ています。また、量的緩和によって生じた円安は、他国にとっては、競争力が落ちて自国の富が奪われる近隣窮乏化政策とも呼ばれている副作用が生じます。

他の副作用もあります。景気実体が伴わなくても、潤沢な資金によって株や不動産の資産バブルが生じ易くなります。また、中央銀行が国債を買い続けると、財政ファイナンスととられ、国は借金を減らす努力をせず、借金が膨らむ恐れがあると財政不安を生じさせる可能性があります。そうなると、株安、債券安(金利上昇)、通貨安のトリプル安によって市場が大混乱することになります。

欧州の場合も同じような効果が期待されています。しかし、既に金利がかなり低下しており、ユーロ安も進んでいるため、その効果はあまり期待できないのではないかという見方もあります。また、国債の購入はECBへの出資比率に応じて購入するため、ドイツが18.0%と高く、次いでフランスの14.1%と続きますが、南欧などは出資比率が低いため、国債購入による金利低下の恩恵は小さくなることが予想されます。ユーロ圏は19ヵ国の寄合所帯のため、日米とは違う悩みがあるようです。

量的金融緩和 (Quantitative easing、略してQE)

効果  ⇒ 長期金利低下、景気回復、デフレ脱却、株価上昇、通貨安

副作用 ⇒ 資産バブル、財政不安、通貨安による近隣窮乏化、市場の混乱

金融政策の違いは、通貨の動きの違いに

日米欧の金融政策の方向性が違うということは、為替相場を予測する上で非常に重要な点です。現在、日欧は金融緩和を強める一方、米国は既に量的緩和を終了し、金利を引き上げる時期を探っている状況です。この金融政策の方向性の違いは、為替の方向性の違いに出てきます。

中央銀行が供給する通貨の量であるマネタリーベースの増加額が、相対的に大きい通貨は下落しやすく、株価の上昇率も相対的に高くなる傾向があるとの見方です。その結果、ドルは買われ、円やユーロは売られやすくなります。また、日本と欧州の通貨力学では、日銀は昨年10月に追加緩和を決定しましたが、今回のECBの決定は日銀を上回る速度と量でマネーを供給する政策です。このため、現在ECBよりも日銀が上回っているマネタリーベースの差が縮まる方向にあることから、ユーロの方が売られやすく、欧州株の方が優位になる可能性があります。

まずは、基本としてこの通貨の方向性(ドル>円>ユーロ)を頭にいれておきましょう。
しかし、方向性に微妙な変化が出てくれば、通貨の動きにも微妙な変化が出てくるため注意が必要です。例えば、

  • 米国景気が低迷した場合、利上げ時期が後倒しになるとの見方が広がれば、ドルは売られやすくなる。
  • 米国の利上げ観測から株が下落した場合、下落スピードや下落幅が予想外の大きさになると、米景気に悪影響を与えるとの見方から利上げ時期後倒し観測が高まり、ドルは売られやすくなる。
  • 日本では、物価が低下傾向にあり、日銀黒田総裁も原油価格が下落したため、デフレ脱却に向けた物価目標の達成が遅れる可能性を認めている。このため市場では、年内前半に追加緩和があるとの見方が広まり、円売りに傾きやすい。しかし、日銀を取り巻く内外の環境によっては、第3弾の量的緩和は後倒しになる、あるいは困難であるとの見方が広がれば、これまでの反動で円が買われやすくなる。
  • 欧州では、量的緩和が始まったばかりであるが、実際の国債購入実施段階でスムーズに実行されなかった場合、例えば反対論が燻っているドイツで実行の遅効性が見られた場合、ユーロは買われやすくなる。

これら金融政策の微妙な変化の違いは、毎回の金融政策決定会合、理事会やその議事録、あるいは記者会見や金融当局者の講演会などで察知することが出来ます。また、経済指標からその変化の可能性を予測することもできます。基本の動きを頭にいれながら、相場予想のシミュレーションを繰り返し、アンテナを伸ばして、その変化の兆しを捉えることが重要となります。

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