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経済政策のポリシーミックス

2014/10/1
為替の変動要因の中で、経済政策のポリシーミックス( Policy mix )という考え方があります。 これは、金融政策と財政政策を組み合わせた政策手段を使って政策目標を達成していく政策方法です。
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為替の変動要因の中で、経済政策のポリシーミックス(Policy mix )という考え方があります。 これは、金融政策と財政政策を組み合わせた政策手段を使って政策目標を達成していく政策方法です。金融政策と財政政策以外に通貨政策を組み合わせるという考え方がありますが、G7や先進国では、為替相場は自由変動相場が前提ですので政策手段として表立っては使っていません。通貨安政策は「近隣窮乏化政策」ともいわれ、自国を通貨安にして他国の富(所得)を奪う政策として歓迎されていません。新興国でも目立ちすぎると米国やIMF、あるいは貿易取引の多い関係国から批判が出てきます。

しかしながら、金融政策と財政政策の結果として、通貨が高くなったり安くなったりすることはあります。例えば、アベノミクスでは超金融緩和によって円安になりました。通貨安誘導が目的ではないとの説明を繰り返しましたが、現実には円安に動いています。このように、金融政策と財政政策の組み合わせによって通貨の方向も決まってくるため、その組み合わせを理解しておくことは、各国の政策意図を理解し、相場を予想する上でも非常に役に立ちます。

 

日米欧経済政策のポリシーミックス

下表では日米欧の過去と現在のポリシーミックスの組み合わせの推移を示しています。ケース1からケース4までのポリシーミックスの組み合わせの中で、政権(①などの番号で表示)がどのような政策を取ったか、通貨がどちらの方向に動くかを示しています。

ケース 財政政策 金融政策 通貨政策 目的 日米欧経済政策
米国 日本 欧州
1 緊縮 引締め (通貨高) 景気過熱回避
インフレ抑制


2 緊縮 緩和 通貨安 財政・経常赤字削減、
景気回復


3 緩和 引締め 通貨高 経常黒字削減 - -
4 緩和 緩和 (通貨安) 景気失速回避
デフレ脱却


⑪⑫

※①∼⑱は以下のイベントが発生順序です。

米国

①クリントン政権第1期
(1993年~96年)
財政均衡への足場作り。貿易不均衡是正問題
②クリントン政権第1期
(1997年~00年)
インフレなき景気拡大、金融市場から資本流入促進
③ブッシュ政権第1期
(2001年~04年)
景気減速に対応し、低金利と財政緩和(軍費増大と減税)でハードランディング回避。
④ブッシュ政権第2期
(2005年~)
2004年から金融引締めへ、減税恒久化と財政削減を政策目標にしているため歳出削減は必至
⑤ブッシュ政権第2期後期
(2007年8月~)
サブプライム問題の影響で信用市場タイトになり、クレジットクランチを回避し景気減速を未然に防止するため連続利下げと減税で対応
⑥オバマ政権(2009年~)
(2014年1月~ )
QE3で更に緩和、債務上限問題で財政制約
QE3縮小へ、但し、金融緩和は継続

日本

⑦橋本政権前期
(1995年~97年)
財政改革で赤字削減優先、景気長期低迷から緩和維持
⑧橋本政権後期、小渕政権、
森政権(1998年~00年)
財政赤字削減を先送り、政策転換で景気刺激、デフレ回避
⑨小泉政権(2001年~) 構造改革で財政赤字圧縮。デフレ圧力を通貨安で回避(巨額介入を実施)
⑩小泉政権後期(2006年~)
安倍、福田政権
景気回復、物価上昇局面に入り、量的緩和解除
ゼロ金利解除政策(金融引締め政策)に移行
⑪麻生政権(2008年~)
鳩山、菅、野田政権
サブプライム問題後、金融緩和と財政刺激
財政再建議論(一時ケース2のような状態に)
⑫第二次安倍政権
(2012年12月~)
超金融緩和と財政刺激でデフレ脱却、消費税増税

欧州

⑬2000年 通貨安・原油高によるインフレを回避
⑭2001年~ 減税と金融緩和を実行し、景気減速回避
⑮2005年~ 景気回復局面に入り、金融引締めに移行
⑯2008年~ サブプライム問題を受け、利下げと財政刺激
⑰2011年4月~ 物価上昇を受け利上げ、債務問題から財政赤字削減
⑱2011年11月~
2014年6月~
景気後退、物価低下を受け利下げ、財政緊縮継続
ECBはマイナス金利を導入

政治要因

為替相場を動かす要因として政治要因と経済要因があると説明しました。

経済要因としては、財政政策、金融政策などの経済政策や、経済成長率、消費動向、雇用、物価、貿易収支などの景気動向を説明してきましたが、これからは政治要因のお話です。

政治要因が発生した場合、経済要因や市場テーマ、ドルの需給で動いていた相場の流れを一瞬にして吹き飛ばすことがあるため、要注意です。地政学リスクが高まった時によく見られます。また、このような短期的な突発的な動きだけではなく、1985年のプラザ合意の時のように大きな流れを長期的に変えてしまうということもあります。政治要因としては、

  • 国内政局動向

    例えば日本の場合、衆議院選挙、衆参W選挙など政局が大きく変わる時は相場が動く時があります。2012年12月の第二次安倍政権発足によって大きく円安に動きました。これは安倍政権への期待だけではなく、そこに金融政策を絡ませたことによって(アベノミクス)相場が大きく動きました。但し、経験的には、この時以外に日本の政局や選挙で相場が動いたという記憶はあまりありません。

  • 各国政局動向

    最も注目は4年に一度の米国大統領選挙。民主党が勝てばドル安、共和党が勝てばドル高とよくいわれますが、経験的にはその時の相場の長期的センチメントに左右されるとの印象です。また大統領選挙の2年後に行われる中間選挙(連邦議員選挙)この選挙によって与党の勢力図が変わる時があるため相場が動くきっかけになります。今年2014年は11月4日に中間選挙が行われます。オバマ大統領の支持率が低下していることに加え、ウクライナ問題やパレスチナ問題での優柔不断なオバマ大統領の態度は更に支持率を低下させ、中間選挙には不利に働くことが予想されます。オバマ大統領の残り2年間はレームダック(Lame duck政治的影響力の低下)が強まることが予想されます。各国の選挙、政権交代も相場に影響を与える場合が時々あります。新興国の場合ほどその影響は大きいようです。選挙によってその国の政権が変わる時、新政権の経済政策がプラスに働くとの期待が高まれば、その国の通貨が買われ、マイナスに働くと見れば売られます。

  • 国際政治動向

    戦争、テロ、地政学リスク(中東問題、朝鮮半島、ウクライナ問題)の高まりによって相場が最も突発的に動くため、事前の予想は出来ません。突発した時に戦局やリスクが拡大するのかどうかに注目します。現在、イスラエルの侵攻、ウクライナ上空のマレーシア機墜落と複合的に地政学リスクが高まっているため、当分、緊張が続く可能性があります。戦争やリスクを嫌うマネーは委縮し、安全資産である国債や円に向かう動きは継続する可能性があります。

  • 各国通貨政策、各国金融政策、各国貿易政策

    これらの問題は経済政策であると同時に政治要因となる時があるので背景に注目する必要があります。1987年10月19日のブラックマンデー(NY株式市場の史上最大の大暴落)の背景のひとつに米国とドイツの確執が挙げられています。ドイツは自国の経済情勢を優先し、米国の反対を押し切って利上げをしました。利上げをしたことよりも世界協調体制が崩れたということの方が市場心理を悪化させました。確かにそのニュースを聞いた時には「エッ!」という驚きをもったことを覚えています。

  • 国際通貨体制

    今年は、戦後の通貨体制であるブレトンウッズ協定が発足して70年になります(1944年7月22日)。その後、1971年のニクソンショック(ニクソン大統領がドル紙幣と金との兌換一時停止を宣言→ブレトンウッズ体制の終結)、1985年のプラザ合意(G5、米、英、西独、仏、日本の5ヵ国がドルの減価に合意。その後数年かけてドルは大幅に減価。ドル円260円→120円に)

    このように政治意志によって10年、20年単位で枠組みが大きく変わる時があります。ニュースとしては急に発表されるケースとなりますが、予兆はあります。ただ、タイミングや過激な政策変更か軽微な変更かは予測できません。プラザ合意はドル価値半減という過激な変更でしたが、当初は、合意発表後も何が起こっているか、市場にはすぐには理解できませんでした。200円を割れてからはじめて、これはもう二度と200円には戻らないのではないか、どこまで円高に行くかわからない、という恐怖心が市場に漂いました。

    現在、外貨準備の多様化や決済通貨の多様化が進んでいます。先日、BRICS開発銀行の発足が決定されました。新興5カ国(BRICS=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に加え、後日、トルコやメキシコ、インドネシア、ナイジェリアなどほかの新興国が参加する予定になっているようです。欧米主導のIMF・世銀体制とは別の体制が発足したことになります。危機時には参加各国で資金の融通が行われる基金を作るとのことですが、その基金ではドルやユーロの位置は大きく後退し、人民元が主導的通貨になるかもしれません。

    また、先日、フランスのパリバ銀行が米国の経済制裁対象国と違法取引をしたとの理由で約9000億円の罰金を命じられ、かつ1年間のドル決済業務禁止を言い渡されました。これは貿易業務を主とするパリバ銀行にとっては大きな痛手ですが、その間ユーロ決済を増やしていくことに繋がり、1年後には元には戻さないかもしれません。米国にとってはドル離れを助長する判決だったかもしれません。

    このように、現在でも大きな枠組みが変わる予兆現象が見られますが、これがどのような枠組み変更になるのか、数年先に起こるのか、10年先に起こるのかなどはわかりません。しかし、単発的にはドル売りのニュースとなります。逆も然りです。新興国の経済が急減速し、株式市場や通貨が大きく売られた時は、枠組み変更はかなり遠い将来との思惑からドル買いに働くことになります。ところが、あまりにも大きなテーマのため、その時の市場の感応度によってはドル売りもドル買いも相場は大きく動かないかもしれません。それでもこのような見方、考え方は常に頭の中に置いておいても損はありません。

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