2014年の運用結果を振り返るとき「運用部分」だけを見てはいけない
2014年度末、つまり今年の3月末を越えて、あなたの資産運用状況はどうだったでしょうか。機関投資家の多くは年度末でパフォーマンスの一区切りをつけるため、3月末の株価と為替が気になります。
個人投資家は年度末の成績で一喜一憂する必要はないため無理な益出しをしなくてすむことが大きな強みです。しかし、これは年度末に現状把握しなくてもいい、という意味ではありません。むしろ、年度末くらいは自分の運用状況を振り返ってみるべきです。
このとき、「運用部分」の成績だけをみて大喜びしている人がいますが、これは自分の財産全体を見ていません。ことわざに木を見て森を見ず、と言いますが、まさにその例えのいうとおりです。
私たちのお金は、全額が投資されているわけではありません。その一部、多くの人は高い割合を預貯金や現金が占めているはずです。この「現預金」も含めて全体の運用状況を振り返ってみる必要があります。
今回は簡単な表で、あなたの「全体での運用利回り」を考えてみます。
「預貯金」と「運用部分」のトータルリターンを考えたい
現預金を保有することは、期待リターンは低くとどまるものの資産全体のリスクを抑える効果があります。株価が下がって預金先の銀行の株価が下がったり、保有株がどんなに含み損を抱えたとしても、預金金利に影響を与えることはありません。
今年のような状況でトータルリターンを考えたときは確かに「もっと投資をしておけばよかった」と考えてしまいがちですが、リーマンショックのようなイベントがまた世界を席巻したときには、リスクを抑える陰の立役者になるわけです。(同様に、国債を一定割合保有しておくことは、株価下落時の資産全体での下落リスク抑制になります)
私たちは「預貯金:投資部分」の比率をなんとなく意識しているはずです。「ほとんどすべて投資する」という人もいれば「おおむね半々くらい」という人もいるでしょう。しかし、この投資比率決定が、資産全体のリターンに大きく影響してきます。
2014年度運用利回りの概算表
下に掲載の表は、投資比率による2014年度のトータルリターンの概算表です。自分の保有する全資産に占める投資比率と安全資産の比率(当然ながら合計すると100になる)が分かれば、2014年度の運用利回りが分かる仕組みになっています。
安全資産については直近の預貯金金利を勘案して0.02%、投資部分の運用利回りについては、企業年金運用や公的年金運用の推計値を参考に12%としています。
仮に、投資割合が30%であれば2014年度の「資産全体での運用利回りは3.61%」ということになります。投資割合が80%と高めであった場合は、9.60%も増えていることになります。
国の年金運用や企業年金運用より、個人の運用はリスクを取る傾向があります。2014年度については株式保有比率が高い人のパフォーマンスは12%を上回る人も多いでしょう。
2014年度のTOPIXの上昇率は30.69%ですから、これを用いた表も作っておきましたので確認してみてください。この場合は、リスク資産のすべてを株式に投資した(あるいは外貨建て資産を含めて投資した)場合の概算になります。
こちらは先ほどの表よりかなり利回りが高くなっています。自分の運用状況に近い表を使って「全体としてどれくらい増えたのか」をイメージしてみてください。
ただし、リスクのとりすぎにはご注意
さて、資産全体の運用利回りを振り返ってみると、たいていの人が「もっと投資しておけばよかった」と感じます。結果を振り返ってみればそう考えるのが当然のマーケットが2014年度でした。
しかし、それは振り返れば言えたことであって、昨年の4月にここまで伸びる相場に確信を持つことは難しかったはずです(予想はできても、あくまで予想です)。
リーマンショックのような強烈な下落相場がやってくることを私たちは否定してはいけませんし、そのときに自分の資産がどれほど損失を被るかもイメージしておきたいものです。
3つめの表は「リーマンなみの下落相場がきた場合の運用利回り」を示しています。2008年度、企業年金運用の平均は-17.8%でした。これは企業年金運用の歴史始まって依頼の最悪の数値でしたが、あなたの投資部分が同様の損失を被った場合、資産全体でどれほどのダメージがあるかみています。
先ほどの2つの表では、投資比率を高めるほどいいことが起きる結果となりましたが、この表については投資比率が高いほどキツいダメージがくる結果となります。
資産の半分を投資していたとしても、約9%もマイナスになるわけですから、仮に1000万円あれば90万円の価値が吹き飛ぶことになります。
自分の投資比率をどのくらいに置くべきか悩んだときは「いいとき」と「悪いとき」の両方をみて、考える習慣をつけることが「なんとなく投資」から抜け出す近道です。
特に上昇相場が3年も4年も続くとは限らないため、2015年度については「下げ」も意識した資産配分を考えてみるといいでしょう。
資産全体の2014年度運用利回りを考えてみる
【表1】分散投資した標準的利回りを確保した場合
投資比率 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 | 60 | 70 | 80 | 90 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
安全資産比率 | 90 | 80 | 70 | 60 | 50 | 40 | 30 | 20 | 10 |
全体の利回り | 1.22% | 2.42% | 3.61% | 4.81% | 6.01% | 7.21% | 8.41% | 9.60% | 10.80% |
---|
【表2】日本株の上昇に相当する利回りを確保した場合
投資比率 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 | 60 | 70 | 80 | 90 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
安全資産比率 | 90 | 80 | 70 | 60 | 50 | 40 | 30 | 20 | 10 |
全体の利回り | 3.09% | 6.15% | 9.22% | 12.29% | 15.36% | 18.42% | 21.49% | 24.56% | 27.62% |
---|
【表3】リーマンショックなみの下落相場の場合
投資比率 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 | 60 | 70 | 80 | 90 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
安全資産比率 | 90 | 80 | 70 | 60 | 50 | 40 | 30 | 20 | 10 |
全体の利回り | -1.76% | -3.54% | -5.33% | -7.11% | -8.89% | -10.67% | -12.45% | -14.24% | -16.02% |
---|