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セールストークとして使われる年金破綻論の注意点
山崎 俊輔
なんとなくから卒業!実践・資産形成術
誰にとっても重要で大切な「年金」と「老後資金準備」について、「漠然とした不安」から卒業しよう! これからの人生のマネープランを、主体的にかつ前向きに組み立てるためのヒントを、ファ…

セールストークとして使われる年金破綻論の注意点

2015/2/3
なんとなく資産形成をしようと考えたとき、気になるテーマのひとつは「老後」です。老後資産形成は教育資金や住宅購入資金に比べ金額的にも高額になりますし、計画的な準備が必要です。
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なんとなく資産形成をしようと考えたとき、気になるテーマのひとつは「老後」です。老後資産形成は教育資金や住宅購入資金に比べ金額的にも高額になりますし、計画的な準備が必要です。

しかし、気をつけなければいけないのは「年金破綻論を述べるセールストーク」にひっかかって、間違った資産形成をしてしまうことです。

なんとなく聞いていると相づちを打つまま、だまされてしまいかねません。今回少し考えてみましょう。

年金破綻論と金融セールスは組み合わせの相性がいい

年金破綻論は週刊誌やテレビなどメディアの格好のネタです。ネットでもしょっちゅうトピックスが上位に上がります。たいていの解説は間違いだったりするのですが、情報というのは興味や関心に訴えることが重要なのでそれはそれで国民の関心事ということかもしれません。少なくとも年金制度の安定性に無関心であるよりは批判的であるようがベターです。

しかし、この年金破綻論を金融セールスに使い始めるとなかなか危ういことになってきます。

先日とあるFX系ブログをみていたところ、すでに公的年金は破綻しているので、FXのスキルを学んで資産形成を、という記事があり、商材リンクが貼ってあって「こんなところでも年金破綻論か」と驚きました。あるいは不動産投資(マンションオーナー等)の広告、投資信託のセールス、個人年金保険のセールス等においても、過剰なまでに年金制度を否定し、それをもって自社の金融商品の必要性をPRするものが目立ちます。

普通の人は「何かミスリードをさせられているのでは?」と感じていると思いますが、こうしたセールスは大きく2つの点で注意すべきです。

注意1)老後資産形成の目標金額を高められてしまう

公的年金が仮に一円ももらえないのであれば、おそらく老後に必要な資産は1億円近くなります。

ゆとりある老後生活費は生命保険文化センター「生活保障に関する調査(平成25年度)によれば月額35.4万円だそうです。これに65歳女性の平均余命24.0年をかけると、1億195万円となります。まさに「老後は1億円」です。

こうした数字を鵜呑みにして、さらに公的年金を無視して老後のための資産形成を行えば、当然ながら高い目標金額になります。そのため、「高い投資元本拠出」か「高い定期拠出額」を求められますし、「高い運用利回り」を必要とせざるをえません。

公的年金がもらえないと前提を置くことで、金融セールスの相手方はビジネスチャンスは拡大してトークしていることに気を配る必要があります。

たとえば、現実に年金生活をしている夫婦の家計は月額27.2万円(総務省「家計調査年報(平成25年)」)ですから、これに24.0年をかければ7,834万円と大きく下がります。国が夫婦のモデルとしている年金水準月額22.7万円を24.0年もらえば6,538万円となり、実際の必要額は約1,300万円までダウンします。

国の年金水準について15%ほど下がる見込みを立てることは適当な判断ですが、それでも5,557万円はもらえるわけで、準備額は2,300万円で十分、ということになります。

しかも一般的な会社であれば500~1,000万円程度の退職金や企業年金がありますし、上場企業であれば2,000万円水準ということも珍しくありません。

1億円必要といわれて焦ってしまえば、セールストークにそのまま勧誘されてしまうリスクも高まり、高額の金融商品を契約してしまったりします。しかし1億円というような目標設定はまったく不要であるわけです。

注意2)必要以上のリスクを取らせられてしまう

次に注意したいのは、「1億円」という巨額の目標を実現させるために、過度に高いリターンを求めてくるケースです。高いリターンを取るためには高いリスクを負うことも必要になります。

先ほどの例でいえば、FXの商材そのものはそれほどの金額でなくとも、FXで個人が取るリスクは相当なものです。25倍で投資すれば、マイナス4%の下落で資産は全損します(その前にロスカット水準を設定し強制決済されることが多いが)。普通の個人投資家が老後資産形成を考えるなら避けてもいい選択肢ですが、公的年金不安をあおることでチャレンジしなければならないような気がしてきます(あるいは商材を買わなければならない気がしてきます)。それが売り手の狙いのひとつです。

不動産投資や現物株の売買、投資信託などはFXほどのリスクはないとはいえ、公的年金不安を購入の動機に結びつけることができます。冷静に考えると家賃収入だけで老後の生活費にはなり得ない(それくらいの資産を保有することは一般個人にはほとんど不可能)のですが、ばっさり年金ゼロをあおるちらしはしばしばみかけます。ほとんどローンで設定する不動産オーナーはあまりオススメできません。

年金破綻論に引きずられると、リスクを取り過ぎる恐れがあり、十分注意する必要があります。

リスクをとった資産形成は必要だが、過剰なセールストークにはご注意を

ここで勘違いしてほしくないのは、公的年金があればリスクを取る資産形成が不要と指摘しているわけではないことです。

むしろ、公的年金をベースにおきつつも、公的年金だけでは獲得できないゆとりや豊かさ、安心を得るための資産を確保するためには、やはりリスク資産運用が必要だと思います。

しかし、そのために必要な利回りは年率4~5%程度で十分ですし(リスク資産と安全資産のトータルで。国の年金運用程度の資産配分で十分)、むしろそれくらいの期待リターンを取るためのリスクテイクを超えると老後資産形成としてはリスク過剰になる恐れがあると思います。

もともと、「セールストークを聞いて、老後資産形成を真剣に考えた」という発想が間違いです。「老後資産形成を真剣に考え、いろんな金融商品をリサーチする」という順番にすればいいのです。そうすればあやしい話に焦ってひっかかる恐れも激減するでしょう。

まともな金融商品でリスクを取って資産形成をがんばっている人にとって、過剰な年金破綻論はノイズでしかありません。「なんとなく」セールストークに引きずられないようにしてください。

年金破綻論をあわせた金融商品セールスに注意

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