投資の誤解から抜け出すための5つの問いかけ

今回はクイズ形式で「なんとなく投資」について考えてみたいと思います。クイズのいいところは頭の柔軟体操に役立つところで、今まで自分が考えていなかったような視点や発想を考えるきっかけになることだと思います。

固定観念に縛られていたり、ひとつの考えだけを受け入れるのでは、なかなか投資の世界が広がりません。投資について学ぶときも柔軟な発想が重要です。
お金に関する発想転換が、自分の投資をぐっとラクにしてくれたり、すっきりしてくれることもあるでしょう。

クイズといっても、確かな正解があるわけではありません。むしろ、自分の答えを見つける参考にしてみてほしいと思います。

さて、前置きはこれくらいにして早速5つのクイズについて考えてみたいと思います。

Q1)投資というのはずるいことだと思っている

投資は不労所得であり、真面目に働いている人のお金をかすめ取るようなズルイことだと思っている人は、投資未経験者にも多いですし、投資経験者の中にもいます。特に「稼いではいるものの、ズルイことで儲けた気がして気が咎める」という人は投資経験者にもかなりいます(「ズルいことであっても儲ければいいのだ」と開き直っている人もいます)。

発想転換してみると、投資がズルイのではなく、ズルイ投資方法もある、というのが正しい理解だと思います。

もちろん法令に反するズルイ行いは、処罰されます。インサイダー情報にもとづく売買や見せ玉による市場の誘導などはその典型です。
しかし、法令が禁じていない投資方法による譲渡益についてなんでもズルイことと萎縮しているのは、投資機会の損失になるだけかもしれません。

私たちはズルイやり方はやめて、建設的な投資方法だけを選ぶこともできます。中長期で資本を提供する、つまり長期的に株主になるような投資手法は不労所得でもズルイことでもありません。

投資は100%ズルイこと、のように考えることは、思考を狭めています。それが自分の投資のあり方をも狭めているのかもしれません。

Q2)金融機関はリスクを負わず、顧客にのみ押しつけている

金融商品の多くは、金融機関はリスクを負わず顧客にリスクがあります。これについて、批判をする人は多いものです。

しかし、発想を変えてみると、そこが顧客にとってのリターンの源泉であり、収益の一部を金融機関にかすめ取られない約束とのトレードオフであったりします。

銀行預金にのみ親しんでいた人は、投資信託や株式の売買において、金融機関側がリスクを負わないことを不思議に思うかもしれませんが、預金は利息を保証される代わりに、超過収益が還元されることもありません(例えば住宅ローン金利と定期預金金利の差は銀行の儲けとなって、定期預金者には還元されない)。

さらに逆に考えてみると、証券会社は顧客の売買からしか、投資信託会社は投資信託の運用手数料でしか稼ぐことができません。市場の高騰があっても理由無くこれをかすめ取ることは許されないわけです。

リスクを押しつけられていると考えている限り、なんとなく投資のレベルからは脱却できません。むしろリスクの押しつけはリターンを減らされないための交換条件、と考えてみるといいでしょう。

Q3)投資で成功していない人の言葉は聞くに値しない

投資成功者の言葉を聞くことが、自分の投資の成功の近道であり、投資で一財をなしていないような人の言葉は信用に値しない、という意見があります。実際にそう信じている人もいます。

ビジネスについて学ぶとき、有名な経営者のセミナーを聞く方法がこれに当たるでしょう。しかし、大学でビジネスについてその考え方を学ぶこともできます。大学の教授が皆、経済的成功者であるとは限りませんが、学習がまったくムダということはありません。むしろ汎用的に基礎を固めるには学校教育のほうが役立ち、成功した経営者の言葉にはバイアスがかかっていることもあるはずです。

投資においても、成功者の言葉をそのままコピーして、必ずうまくいくとは限りません。それは同一の条件下で同一の投資を行うわけではないからです。そのとき、自分の現状に即したカスタマイズをする方法が必要になりますが、この場合は投資成功者の言葉以外の投資の基礎を学んでおかなければ実行できません。

日本には投資教育に熟練した講師はまだ多くないため、誰に学ぶかによって「成功者以外に学ぶ」ことの難しさはあります。しかし、投資成功者でない投資教育者を学習先としてどう組み入れていくかによって、自分のステップアップに大きな違いが出てくるはずです。

Q4)投資はなくしちゃいけないお金ではやらない

投資はなくしては困るお金でやらないこと、つまり余裕資金でのみやること、というアドバイスはよく聞きます。実際にそうしている人も多いことでしょう。

しかし、冷静に考えてみるとそんなルールに縛られる必要はあまりありません。なくしてはいけないお金で運用を行うこともあります。国の年金運用や企業年金運用などはまさにその例で、リスクをとりますがなくしては困るお金です。だからこそリスク管理を行いながら分散投資に努めます。

そもそも、なくしてはいけないお金で運用しましょうと金融機関にいわれて、はいそうですねと頷いた人は、自分がこれから投資する資金を全損しても文句は言わないと宣言しているようなものです。セールストークの口上に引っかかっています。

確定拠出年金の運用、老後資金準備などはリスクを取りつつ資産形成を目指しますが、無くしては困るお金です。もちろん全額を失うような投資はしません。どんなに大きくても年間30%のマイナスを超えないような投資手法を選択し、中長期的には高い収益を期待します。

正確にいえば、「取りうるリスクを超えてリスク資産を保有すべきではない」ということでしょう。資産の30%以上減らしたくないと考える人が、資産の40%を信用取引やFXに投じているような状態を避ければいいわけです。

Q5)投資は楽しみや喜びではない

ときどき、マジメな人がいて、「投資の目的は資産を成長させることであって、投資そのものによって楽しみや喜びの感情を得ることを目的としてはならない」という人がいます。確かに投資から得られるスリルを楽しんだり、快楽として投資をすることは、資産形成にそぐわないような気がします。

しかし、仕事をするときに「仕事の目的はお金を稼ぐことであって、仕事そのものを楽しんではいけない」という人はいません。むしろ仕事を楽しむことが、仕事の質を高めることにつながったりします。そもそも楽しくなければ仕事は続けられません。

投資も同様で、投資から得られる喜びを無視したり、見過ごすことのほうが投資のあり方を歪める懸念があります。つまり、社会とつながり、資産の騰落に一喜一憂することも投資の重要な一部分であるということです。

年金生活者で、生活には全く困らない資産があるが、生きたマーケットとぶつかりあうスリルが楽しくて株式投資を続けている人がいます。これはこれで投資のひとつのアプローチであろうと思います。

私たちは投資そのものを楽しんでいいと思いますし、投資から得られる資産の成長を喜べばいいのです。

投資はもっと自由でいい

自分が投資の常識だと思っていること、あるいは誰かに常識だと教わったことは、実はあなたの投資の世界を狭めている可能性があります。

「なんとなく」自分が型にはまってしまっているな、と思ったときは、ときどき考え直してみるといいでしょう。

投資はもっと自由でいいのです。