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AIJ投資顧問問題から個人の運用が学べること
山崎 俊輔
なんとなくから卒業!実践・資産形成術
誰にとっても重要で大切な「年金」と「老後資金準備」について、「漠然とした不安」から卒業しよう! これからの人生のマネープランを、主体的にかつ前向きに組み立てるためのヒントを、ファ…

AIJ投資顧問問題から個人の運用が学べること

2012/3/7
誰にとっても重要で大切な「年金」と「老後資金準備」について、「漠然とした不安」から卒業しよう! これからの人生のマネープランを、主体的にかつ前向きに組み立てるためのヒントを、ファイナンシャル・プランナーであり年金の専門家である山崎俊輔氏がやさしく解説していきます。
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約1,900億円を消失させたAIJ投資顧問問題

筆者の専門は企業年金と投資教育ですが、2月24日に発覚したAIJ投資顧問の問題は企業年金業界に大きな波紋を起こしています。今回はこのテーマをネタに取り上げてみたいと思います。

事件を簡単におさらいしておきます。独立系投資顧問会社であったAIJ投資顧問は企業年金から預かっていた約2,000億円のほとんどを欠損させておきながら、虚偽の報告を行っていました。
投資商品そのものは企業年金では今やポピュラーに利用されているヘッジファンド(株式指数の先物、オプションを利用した売買が中心)ですが、同社はITM証券に設定された私募投信(信託銀行は外国に設定)を購入させることで、本来投資顧問会社が年金資金を直接触れられないはずの仕組みを巧みに回避し、当初から運用の損失が生じていたものを顧客には粉飾し続けていたものと思われます。

今回、被害を被った企業年金のほとんどは業界団体等で作られる厚生年金基金という企業年金で、運用体制が十分でないところを突かれたと思われます。
また、偽りの好調な成績にもとづき高い成功報酬を得ていたほか、新規の顧客獲得も偽りの実績を提示し継続していたため、悪質さが明らかになっています。

今回のトラブルは、70兆円以上ある企業年金全体からすると、わずか0.3%程度に過ぎませんし、ほとんどの会社員の企業年金にはまったく影響がありません。
AIJに委託していたのは約100の企業年金とみられますが、その7割は委託割合が5~10%であり、これも運用へ与える影響はそれほど深刻ではないと思われます(過去の積立不足と累積した場合は給付減額があり得る)。
ただし、20~50%委託していたところが10数件あり、これらの企業年金では解散が懸念される状態です(それでも解散の影響が生じるのは10万人に満たないと考えられます)。

企業年金側の運用体制の不備、あるいは行政の監督責任が指摘されていますが、本質的には運用の実態を偽ったAIJの不正にあることは間違いありません。これは証券投資において許されざることです。徹底的な究明と厳罰が求められます。

個人がAIJ問題から参考にできる運用のヒントはあるか

さて、ここからが今回のコラムの本論です。AIJの問題から、個人が参考にできるヒントはあるでしょうか。いくつか考えてみました。

1 理解できない商品に手を出すべきではない

今回、AIJに投資をしていた企業年金の一部は十分な運用体制のない企業年金であり、そもそもヘッジファンドの仕組みについて理解をしていたか、という点でやや疑問が残ります。「絶対収益」という美辞麗句に引き寄せられた感もあります。
個人においても、収益を上げる仕組みが理解できない商品を無理をして買うべきではありません。自己責任の前提は、商品性の理解であるからです。

2 過度の信認は足をすくわれる恐れがある

今回、AIJに投資していた企業年金の多くが「信頼していたのに」「社長の人物に共感していた」等のコメントをしていますが、これは全く意味がないことです。過度の信認が投資判断を誤らせていた懸念もあります。
個人においても、特定の投資方法、ファンドマネージャー、投信会社等に過度の信認を置く例が見受けられます。AIJレベルの粉飾を疑うことは不要ですが、信認そのものが高収益を保証するわけではありません。むしろ信認が投資判断を歪めないよう注意が必要です。

3 集中投資のリスクに注意する必要がある

今回、AIJに投資をした企業年金においても、投資割合を5%に抑えていた企業年金はあくまで損失も5%に限定されますので、制度を存続できると思われます。逆に50%の集中投資をしてしまったところは、その投資判断を責められてもやむを得ない状態です。
個人においても、リスクの高い投資対象、特定の商品、個別銘柄などに過度の集中投資を行うことは運用全体のリスクを高めることに十分注意する必要があります。特に個別銘柄では不祥事の発覚が大きく資産価値を損なうこともあり、持ちすぎには注意が必要です。

4 損失を高いリスクで取り戻そうとしてはならない

今回、AIJに投資をした企業年金の多くは積立不足を抱えており、追加の掛金引き上げも難しいことから、期待リターンを上昇させるために過度にリスクを高めていたものと考えられます(ことによるとリスクは下がったと認識していた可能性もあります)。
個人においても、損失が生じたときに、さらに高いリスクをとって損失を取り戻そうとする傾向がありますが、素直に追加の拠出をして運用全体のリスクは高めないことを選択肢として検討するべきです。高いリスクテイクがさらなる損失拡大を生む可能性を考慮するべきです。

5 その他

過去の実績の好調さが将来の好成績を保証しないことは注意すべきでしょう。また、高い手数料を取るファンドが好成績を保証するわけではないことも留意しておくべきかもしれません。AIJの教訓とするには、そもそもの好調な実績表も粉飾であったため、例えとしては適当ではないかもしれませんが、付言したいと思います。

投資も「信頼」で成り立っている

ところで、上記のヒントに「怪しいファンドを見極める努力」をあえて入れませんでした。企業年金の運用担当者はそこまで検討するべき(あるいはコンサルティング会社等の意見を求めるべき)と考えますが、個人においては公募投信のすべてに信用調査まで行うことは困難と思われるからです。

投資の世界といえども「信頼」がビジネスの基盤です。証券会社や投信会社が数字をごまかしている可能性を前提にしていては、個人の投資は成り立ちません。
公募投信の基準価額、あるいは証券会社の運用報告書そのものについて、個人はひとまず信頼をしていいかと思います。

その上で、今回の企業年金の教訓を他山の石として、個人の運用では同じ轍を踏まないよう、役立ててほしいと思います。

AIJ問題から個人が学べることはあるか

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