これまでに投資信託で損する理由である「高値掴みになりやすいテーマ型投信」「相場任せのフル投資ルール」について解説しました。今回はどのような投信を選ぶべきか、相場に負けない投資信託を見極めるポイントを解説します。
結論から申し上げると、投資で損をしないための一つの方法としては「絶対収益型投信」を選ぶことです。絶対収益型投信とは市場の動きに関係なく利益を出すことを目指す投資信託です。仮に今日から日経平均が半値になるような暴落局面でも利益を上げられる「戦略」を持った投資信託です。絶対収益型投信の「戦略」といっても様々な戦略があります。
例えばファンドマネージャーが「明日から相場が下がる」と思えば、保有している株を現金化して相場下落に備えるファンドがあります。中身の半分を現金化していれば株価の下落も半分ですみます。そして相場が下がりきったところで、現金化していた資金で株を買いなおせばいいのです。
その他に相場下落で儲かる「空売り」を取り入れることで相場下落時でも利益を出す投信がありますし、裁定取引という「2つの資産の価格差」を収益に結び付ける戦略もあります。他にもたくさんの戦略がありますが、どの戦略も相場が上昇していても、下落していても利益を出すことが理論上可能です。
ではなぜ絶対収益型投信は日本であまり注目されていないのでしょうか。
筆者は大きく分けて2つの理由があると考えています。1つ目は金融機関の販売体制、2つ目はアベノミクスによる相場の急騰です。
日本で人気の投信は「毎月の分配金がたくさん出る投信」なのです。毎月分配型投信の問題点の説明は他のコラムに譲りますが、金融機関としてもお客様が毎月分配を求めるからそれを販売している、というのが状況です。ですから相場下落に備える絶対収益型投信をお客様に提案するよりも、このファンドならいくら分配金が出ますよ、という提案になりがちです。
2つ目は、7年に渡る異例の世界各国の金融緩和策により「投資すれば何でも儲かる」という状態が続いたため、投資家は過度なリスクテイクをする傾向が強まっているからだと考えます。絶対収益型投信は安定性を求めるため「守りながら運用」します。ですからアベノミクスのような右肩上がりの相場ではフル投資の投信の方が運用成績はよくなります。
しかし2015年夏から中央銀行による緩和相場に限界が指摘されるようになったことや、米国が利上げ(=金融引き締め)に転じたことにより、これまでのようなリスクテイクが通用しない相場が到来していると考えています。ですから、これからは絶対収益型投信が改めて評価されるようになると思っています。
絶対収益型投信はどのように見つけることが出来るのでしょうか。
一つの方法は、相場下落時に運用パフォーマンスの良い投信をピックアップし、目論見書や月次レポートを確認して、投資の内容を精査する事です。相場下落時にも対応して利益を上げることのできる「戦略」があるかを精査するのです。
ご自身で運用戦略の精査が難しいという事でしたら、専門家に尋ねるのがいいでしょう。
しかし永続的に完璧な戦略というものは無いものです。ですから絶対収益型投信でも1種類だけでなく、複数保有したほうが良いでしょう。複数の戦略を同時に保有することにより、更に安定性や再現性が増すと考えられます。