景気回復が鮮明に! 今は金融相場から業績相場への移行期?

7月11日、日銀は金融政策決定会合を開き、景気判断を7カ月連続で上方修正するとともに、現状を「緩やかに回復しつつある」としました。「回復」という表現を用いたのは平成23年1月以来、2年半ぶりのことです。

アベノミクス批判に躍起な野党は「給料は全然上がっていない」と叫んでいますが、給料のアップは景気回復にかなり遅れてから実現するものですから足元で給料が上がらないのは当然です。各種景気指標をみれば、景気が回復傾向にあるのは明らかです。

昨年11月中旬から今年5月までの株価上昇は、日銀による金融緩和を背景とした、まさに金融相場といえるものでした。5月下旬~6月にかけて、大きめの調整局面がありましたが、これを金融相場から業績相場へ移行する際の中間反落とすれば、今の相場は景気回復・企業業績向上・株価上昇がそろい踏みとなる業績相場である可能性が高まっているといえます。

株式市場における4つのサイクルとは

ところで「金融相場」や「業績相場」とはどういうものなのでしょうか?

一般に、株式市場全体の大きな株価の流れとして、次のような(1)~(4)のサイクルを繰り返すものとされています。

(1) 金融相場

俗に「不景気の株高」と呼ばれるものです。足元の景気は良くないものの、金融緩和によりあふれたマネーが株式市場に向かい、株価が底打ちをして上昇に転じる相場です。

(2) 業績相場

金融緩和の効果が実体経済に波及してくると景気が回復し、企業業績も向上します。多くの人が景気回復を実感するとともに企業の好業績が株価上昇につながる、「好景気=株価上昇」となる分かりやすい相場です。

(3) 逆金融相場

景気が過熱を帯びてくると、金融当局は金融引き締めに入ります。この効果が出るまではしばらくタイムラグがあるため企業業績は堅調ですが、株価は金融引き締めを織り込みいち早く下落するので、好景気なのに株価が下がるという現象が起こります。株価は(2)~(3)の間でピークをつけます。

(4) 逆業績相場

金融引き締めの効果が表れ、実際に景気が悪化して企業業績も悪くなります。これに株価が素直に反応して「景気悪化=株価下落」となります。この後再び(1)のサイクルに戻ります。株価は(4)~(1)の間で底を打ちます。

最近は金融市場を取り巻く環境が複雑化していることもあり、上記のサイクルがきれいに表れないこともありますが、それぞれの特徴はぜひ覚えておきましょう。

上昇第2波に入っているとしても銘柄によって強さはまちまち

さて、6月13日の日経平均株価12,415円85銭を底として上昇第2波がスタートしていると仮定すれば(5月23日の高値を超えないと、上昇第2波であることが確定しません)、そしてこの上昇第2波が業績相場であるとしても、個別銘柄が同じように上昇するわけではありません。

実際、日経平均株価は7月19日には14,953円29銭まで上昇し、6月13日の安値12,415円85銭から2,537円44銭、率にして20.4%の戻りをみせましたが、個別銘柄に目を向けると、安値からの戻りが銘柄ごとにまちまちであることがよく分かります。強い銘柄は4~5月につけた高値を優に超えて年初来高値を更新している一方、弱い銘柄は下げ止まりこそしたもののその後は横ばいにとどまるのが精いっぱい、という状況です。

特に、5月までの上昇第1波で大きく上昇した銘柄の戻りは鈍いように感じます。

金融相場と業績相場では活躍する銘柄が異なる

一般に、金融相場と業績相場では活躍する銘柄が異なるといわれています。

上昇第1波で大きく上昇した銘柄として、不動産株、その他金融株などいわゆる「金利敏感株」があります。借入金が多く、金融緩和による低金利の持続が業績にプラスに働く業種です。

また、金融相場の特徴の1つとしていわゆる「理想買い」があり、足元の業績は良くなくとも、将来の業績に期待が持てるならば大きく買われます。バイオ関連株の急騰などはまさにその典型例といえるでしょう。

一方、今の相場が業績相場に入っているとすれば、いわゆる「景気敏感株」と呼ばれる銘柄が大きく上昇することになります。

景気敏感株とは、鉄鋼株、化学株、紙パルプ株などのいわゆる「素材セクター」に属する銘柄をいいます。景気敏感株は、景気に対する業績の感応度が高いため、ひとたび景気回復局面となると業績の変化率が大きく、それが株価の大きな上昇につながります。

また、工作機械株も、景気回復とともに設備投資のニーズが高まりますので株価は大きく上昇することがよくあります。

金融相場は「理想買い」でしたが、業績相場になると「現実買い」に変わっていきます。そのため、足元の業績に株価が素直に反応するようになると思われます。

4~5月の高値を突破している銘柄が「強い銘柄」

業績相場には上記のような特徴がありますが、今後の株価上昇が期待できる「強い銘柄」を探す最も手っ取り早い方法は、各個別銘柄の株価の動きをみることです。具体的には、「4~5月につけた高値と比べて現時点の株価がどの水準にあるか」をみます。

大まかに分けると、次の①~③の3つに分けることができます。

  1. すでに4~5月の高値を超えて上昇している銘柄
  2. まだ4~5月の高値を超えていないが、それに近いところまで上昇している銘柄
  3. 4~5月の高値よりかなり低い水準にとどまっている銘柄

このうち、今後の株価上昇に最も期待が持てるのは、①の銘柄です。この銘柄の中から、上昇第2波の相場で大化けする銘柄が出てくる可能性は高いと思います。

次に②の銘柄も、4~5月の高値を超えてくれば大いに期待が持てます。

③の銘柄は、単に出遅れているだけかもしれませんので株価の動きを引き続きウォッチしていくべきですが、上昇第1波の相場で株価が大きく上昇した銘柄については、上昇第2波では同じような上昇は期待しない方がよいでしょう。

年初来高値更新銘柄をチェックしておけば、4~5月の高値を超えたばかりの銘柄が分かります。これにより、どんな業種の銘柄が買われているのかを知ることができます。

足元の相場が上昇第2波の業績相場であるとすれば、業績相場の特徴をおさえつつ、個別銘柄の株価の動きに注意し、「強い銘柄」を追いかけていくことがよい投資成果につながるものと思います。