今なお続く日本株の「二極化相場」

先週(11月12日~16日)の日本株は、衆議院解散総選挙後の安倍政権誕生への期待感や自民党安倍総裁の発言を好感し、大きく上昇しました。

前回のコラム執筆時(11月9日)では日本株は非常に弱い動きだったのですが、先週末(11月16日)には一転して日経平均株価やTOPIXの株価指数、個別銘柄とも強い動きとなり、日足チャートでみた上昇トレンドへ転換する銘柄が相次ぎました。

本コラムを毎週ご覧いただいている方の中には、先週は弱気だったのに今週は強気になったり、言っていることがころころ変わっているとお感じの方もいらっしゃるもしれません。その理由は、最近の日本株のトレンドが短期間に目まぐるしく変わってしまうからです。

筆者は個人投資家でもありますから、評論家のように「万年強気」とか「万年弱気」といった態度は一切とりません。筆者の基本的スタンスは上昇トレンドでは買い・保有、下降トレンドでは売り・非保有とすることに揺らぎはありません。コラムの内容と、お読みになった時点での相場環境が異なるような場合は、上記の基本的スタンスと照らし合わせてコラム内容を軌道修正していただければと思います。

さて、本コラムでも何度か書きましたが、今年の日本株の特徴を一言でいえば「二極化相場」でした。特に年後半は、強い銘柄はどこまでも強い、逆に弱い銘柄はとことん弱い、そのため銘柄選択がいつにも増して重要となった時期でした。

しかし、いつまでも永遠に買われ続けることもなく、いつまでも永遠に売られ続けることもないのが株というもの。今ボロボロに売り叩かれていて、誰もが「もうダメだ」と思っている銘柄であっても、いつかは大きく反発することが大いに期待できるのです。個人的には、先週(11/12~16)は、その兆候が少し見えてきたような気がしています。

そこで今回のコラムは、現状の日本株相場の再確認と、今後取るべき対策を考えていきたいと思います。

強い銘柄の特徴 「新興市場」「好業績」

まず、強い銘柄についてです。株価が上昇を続けている銘柄の特徴として、「新興市場銘柄」・「好業績」の2点が挙げられます。

以前のコラムでもお話ししましたが、今は年金支払いのため、公的年金が積立金を取り崩しており、それによる日本株への換金売りが続いている状況です。

しかし、公的年金が保有している日本株は大部分が東証1部上場の主力・大型株であるものと思われます。ジャスダックやマザーズといった新興市場に上場する銘柄はほとんど保有していないはずです。

また、新興市場に上場する銘柄は為替レートによる業績の変動を受けない「内需株」が多く、円高が進行する中着実に業績を伸ばしている銘柄も数多くあります。

そこで、円高に関係なく今後も好業績が期待され、かつ公的年金の売り圧力の少ない新興市場銘柄に投資資金が流れ込み、株高につながったものと思われます。

具体的には、スマホ向け広告が好調なインタースペース(2122)、ファンコミュニケーションズ(2461)、バリューコマース(2491)などのネット広告関連株や、パピレス(3641)、イーブックイニシアティブジャパン(3658)といった電子書籍関連銘柄など相当数の新興市場銘柄が該当します。

ただし、先週のように東証1部銘柄に資金が向かっているときには新興市場銘柄は軟調な動きになりやすい点は注意が必要です。

また、公的年金の換金売り圧力にさらされる東証1部銘柄でも、今後の好業績が期待されるものについては買い需要が上回り、株価が大きく上昇しています。その1つが過払金返還額の減少による業績急回復が期待されるサラ金・カード関連株で、具体的にはアコム(8572)、アイフル(8515)、オリエントコーポレーション(8585)などです。大証2部銘柄ですがJトラスト(8508)も同様に大きく上昇しています。

「業績不振」の「東証1部銘柄」は弱い

逆に、弱い銘柄の特徴としては、「東証1部上場銘柄」・「業績不振」の2点が挙げられます。

その筆頭格といえば、シャープ(6753)、ソニー(6758)、パナソニック(6752)といった電機株です。いずれも何十年ぶりという安値水準まで売り叩かれています。

確かに業績不振の銘柄の株価は大きく下がってしまうのはやむを得ないところですが、何十年ぶりの水準までたたき売られてしまうというのは、筆者個人的な感覚としてはさすがに売られすぎなのではないかと感じます。

それ以外にも、そこそこの黒字を確保しているにも関わらず株価が大きく下げ続けている銘柄(富士フイルムホールディングス(4901)やイビデン(4062)など)もあり、これらは公的年金による換金売りも強く影響しているのではないかと思います。

そんな中、一筋の光明もみえつつあります。株価がボロボロに売られた銘柄のうち、例えばNEC(6701)は7月に株価2桁の96円まで売りたたかれましたが、その後は順調に上昇し、10月31日には155円をつけました。安値からは50%超の上昇です。日本板硝子(5202)やマツダ(7261)なども、それぞれ53円(8月)、85円(7月)まで下落した後は株価が下げ止まり、反転上昇の兆しが見て取れます。さらに先週は、これまで長らく下げ続けていた銘柄の中に大きく反発するものが目立ちました。シャープのように日足チャートで上昇トレンド入りを果たしたものも数多く出現しています。これは非常に注目すべき動きです。

「弱い銘柄」の上昇トレンド転換直後は格好の買いタイミングに

以上が「強い銘柄」と「弱い銘柄」の特徴ですが、これを踏まえて今後の戦略を考えてみたいと思います。

まず、強い銘柄については、できるだけ押し目買いを心がけることが重要です。強い銘柄はすでにかなり株価が上昇していますから、高値掴みのリスクもそれなりに生じています。そこで、押し目買いにより、できるだけ安く買うことを心がけるとともに、上昇トレンドが終了したら速やかに降りることが必要です。上昇途中の飛び乗り買いも悪くはないのですが、高値掴みによる損失をできるだけ抑えるため、損切りルールを決めた上で実行するようにしてください。

弱い銘柄については、いくら株価が安くなっても、上昇トレンドに転換するまでは新規買いは見送ります。しかし、上昇トレンドに転換したら、速やかに新規買いをすべきと考えます。下げ続けていた銘柄が上昇トレンドに転換した直後は、安値圏で買い仕込める格好のいいタイミングと考えられます。

ただし、長い間下げ続けていた銘柄が安定的な上昇トレンドに達するまでにはそれなりに時間もかかるものです。上昇トレンドになったと思ったらすぐ失速して再び下降トレンド入り…という動きを繰り返すことも珍しくありません。上昇トレンド転換直後に新規買いしたのにすぐに下降トレンド転換で損切り、という状態が続くとストレスもたまりますが、さらなる株価下落による損失拡大リスクを避けつつ、底値圏で新規買いするためにはどうしても仕方がないことです。本格的な株価上昇局面になれば全て報われますので、それまで辛抱しましょう。

今は中低位株が徹底的に売りたたかれた2002年秋に近い状況か?

筆者は、個人的には株価が大きく下落した銘柄への上昇トレンド転換直後の投資こそ、大きな利益をあげるための近道だと考えています。ちなみに、先週末(11/16)時点では、日足チャートで上昇トレンドに転じた銘柄が数多く見受けられます。そうした銘柄に対しては、筆者なら直近安値や25日移動平均線割れを損切り価格に設定した上で買って出る局面と思います。

2002年の秋に、多くの中低位株がこれでもか、というほど売りたたかれました。でも、それらの銘柄はその後大きく上昇し、株価が10倍以上になったものも数多くありました。

今は2002年の秋に近い状況なのだと筆者は感じています。サラ金・カード関連株も完膚なきまでに売りたたかれましたがここへきて反転上昇の動きが見て取れます。これら銘柄が先導役となり、この動きが電機株はじめ、信じられない安値まで売り込まれた銘柄の反騰へつながることを筆者は大いに期待しています。