急騰・急落銘柄相次ぐ四半期決算発表
現在、3月決算企業の第一四半期(2012年4月~6月)の決算発表がピークを迎えています。四半期決算発表が義務化される以前はそれほどでもなかったのですが、現在は3カ月に1度の決算発表のシーズンを迎えるたびに、株価が激しく変動する個別銘柄が後を絶ちません。
そこで、今回は決算発表前後の個別銘柄への投資スタンスについて考えてみたいと思います。
決算発表前後の株価の動き4パターン
決算発表前後の個別銘柄の株価の動きを4パターンに分類すると次のようになります(なお、トレンドの判断は日足チャート+25日移動平均線で行うこととします)。
(1) 決算発表前:上昇トレンド → 決算発表後:上昇トレンド継続
(2) 決算発表前:下降トレンド → 決算発表後:下降トレンド継続
(3) 決算発表前:下降トレンド → 決算発表後:上昇トレンドへ転換
(4) 決算発表前:上昇トレンド → 決算発表後:下降トレンドへ転換
(1)は好決算を期待して決算発表前から株価が上昇し、期待通りの好決算を好感して決算発表後も株価が上昇するパターンです。本コラム執筆時点(8月4日:以下同じ)ではトリドール(3397)などがこれに該当します。(2)は決算がよくないことを織り込みつつ株価が下落し、実際に発表された決算内容が悪いことで改めて売り直されるパターンです。シャープ(6753)が該当します。
(3)と(4)は決算発表によって株価のトレンドが変わってしまうパターンです。(3)は「ポジティブサプライズ」とか「悪材料出尽くし」といわれる動きで、決算が市場予想に反して意外と良かった場合や、確かに決算内容は良くないもののすでに株価に織り込まれていたようなときに生じます。JVCケンウッド(6632)が該当します(少し微妙ですが)。逆に(4)は「ネガティブサプライズ」とか「好材料出尽くし」と呼ばれるもので、決算が期待されたほどは良くなかったり、確かに好決算であるものの株価に織り込み済みであったようなパターンです。サイバーエージェント(4751)が該当します。
上昇トレンドから一気に下降トレンドへ転落も
では、保有株について決算前後でどのような対処をすればよいでしょうか。
上記の(4)パターンのうち、(1)に該当する銘柄を決算前から保有していたとしても、上昇トレンドが継続しているわけですから問題ありません。また、(2)に該当する銘柄はもともと下降トレンドであったため、保有していないはずなのでこれも問題ないでしょう。
(3)は決算発表をきっかけとしてそれまで下降トレンドだったものが上昇トレンドに転換するケースなので、決算発表前に手を出すことはできず、おのずと決算発表後に新規買いを実行することになります。
(4)が最も扱いにくいパターンです。決算発表前は上昇トレンドだったのが、決算発表により株価が急落し、下降トレンドに転換してしまいます。十分な含み益がある場合はそのまま持ち続けるという選択肢もありますが、トレンドを最も重要視する筆者としては、一旦売却するなどし、その後は再びの上昇トレンド転換まで静観する作戦をとります。
決算発表後の新規買いがリスク回避の点からは有効
厄介なのは、決算発表を挟んで株価のトレンドが変わってしまうかどうかを事前に予測するのは難しいという点です。つまり、決算発表前に個別銘柄を保有している場合、決算発表後にどのような株価の動きになるかは分からないのです。
こうしたことから、決算発表前後の株価変動のリスクを考えると、筆者は決算発表直前の個別銘柄の新規買いはできるだけ避け、決算発表が終わってからトレンドを見極めたうえで新規買いするのがよいと思います。
確かに上記の(3)のケースのように、決算発表によって株価が急騰する銘柄もありますので、そうした銘柄をできるだけ安く買い仕込んでおきたいとお考えの方の気持ちもよく分かります。でも、その逆のパターン(決算発表により株価急落)も決して少なくないことを考えれば、やはり決算発表前に不必要にリスクをとることはおすすめできません。
それでも株価が上昇する前にできるだけ安く買いたいという方は、月次の売上高や受注状況を発表している銘柄から選択するのもひとつです。例えば月次売上が好調に推移しているにもかかわらず株価があまり大きく上昇していないものを買っておく、といった戦略です。3月決算の銘柄で4月、5月、6月の月次売上が好調なら、第一四半期決算も良い数字が出てくる可能性が極めて高いからです。
3カ月に1度の決算発表のたびに株価の乱高下が繰り返される今の日本株は、残念ながら安心して株を持ち続けることが難しくなってしまっています。
決算発表の済んだ銘柄で上昇トレンドにあるものを新規買いし、次の決算発表が行われる前に売却する、仮に決算発表前後で株を持ち越すとしても、決算後の株価変動に耐えうるように1つの銘柄に投資資金を集中させない、これが決算による株価変動リスクを抑えるための方策です。