プロでも「予想」は当たらない

一昔前は、プロが発信する情報を個人投資家が知ることは困難でした。でも現在は個人投資家であっても、今後の株式市場の見通しや個別銘柄に関するレポートを容易に入手することができるようになりました。インターネットの投資情報サイトをみれば、プロのおススメ銘柄や株価予想についてのコメントをいくらでも見つけることができます。

しかし筆者が今まで見てきた限りでは、こうしたプロの「推奨銘柄」や「株価予想」は当たりません。そもそも同じ銘柄であってもプロの間で「売りだ」「いや、買いだ」と見解が真っ二つに分かれたり、向こう半年の日本株の見通しがバラバラであるという事実こそが、いかに将来を予想することが難しいかを端的に表しているといえます。

最近ヤフーファイナンスで「株価予想」というコーナーが設けられました。プロがその日に株価が上がる銘柄、下がる銘柄を予想しているのですがが、これをみると、良くて勝率5割強、中には3割ほどしか当たっていない人もいます。「当たり」「はずれ」の判定基準に多少違和感はあるものの、その日に株価が上がるか下がるかは五分五分であり、プロだからと言ってその確率を大きく高めることはできないのです。

プロであっても将来を正しく予想することはできない、私たち個人投資家は、まずはこの現実としっかりと向き合う必要があります。

「長期目線」の推奨銘柄には要注意

プロが推奨する銘柄の中には、「長期的にみて有望」とされるケースもあります。つまり、半年、1年といった期間では株価が下がってしまうこともあるかもしれないが、5年、10年というスパンで考えれば株価の上昇が大いに期待できる、というものです。

こうした「長期的な有望銘柄」の株価の推移をみると、推奨後半年や1年で株価が30%とか50%も下がってしまうケースがありました。銘柄を推奨した当の本人は、「長期目線だからこの程度の短期的な株価下振れは仕方ない」と釈明するのですが、もし5年後、10年後に株価がさらに下がってしまったらどうするのでしょうか。穿った見方をすれば、「長期的にみて有望」というのは推奨後株価が下がったときに言い逃れできるようにしておくためと思えてしまいます。

バブル崩壊後20年も下降トレンドが続いているにもかかわらず、「長期的に日本株は上昇する」と10年以上叫び続けているプロの方もいますが、この発言を信じた多くの個人投資家が多額の含み損に苦しんでいることもまた事実です。

こうした「長期目線」という甘い誘惑に引っ掛からないようにするためには、「長期的に有望」という言葉を信じて持ち続けるのではなく、そもそも株価のトレンドが下降トレンドならいくら長期的に有望でも買わない、そして買った後も損切りのルールを決めて実行することが重要です。

プロの「おススメ銘柄」や「株価予想」とはこう付き合う

とはいえ、プロが発信する情報には有意義なものも含まれているのも事実です。例えばプロの作成するレポートの中には私たち個人投資家が知らなかった個別銘柄や業界についての様々な知識・情報が詰まっていることも少なくありません。

そこで、プロの「おススメ銘柄」や「株価予想」は次のように活用するとよいでしょう。

プロの推奨銘柄のうち気になったものはリストアップしておく

将来株価が上がりそうな銘柄を発掘するのもプロの仕事の1つです。時には私たちが知らなかった「お宝銘柄候補」を教えてくれるかもしれません。とはいえ鵜呑みは禁物です。推奨銘柄につき自身でも会社四季報や企業ホームページなどで情報収集し、確かにこの銘柄は良さそうだ、と思えばそれをリストアップしておきます。

リストアップした銘柄の株価を定期的にチェックし、株価のトレンドに従い売買する

プロが推奨し、さらに自身で情報収集した結果株価が上昇しそうだ、と強く感じた銘柄であっても飛びついて買うのは禁物です。いくら好業績・割安な銘柄でも株価は上がる時期と下がる時期があります。

したがって、リストアップした銘柄については株価チャートをチェックしてください。下降トレンドなら買いは見送り、その後上昇トレンドに転換したら買うようにします。

一方、すでに長期間上昇トレンドが続いており、株価もすでに大きく上昇してしまっている場合は、上昇トレンドであるのは間違いないので目をつぶって飛び乗ってしまうか、それとも押し目を待つか、あるいはその銘柄はあきらめて他の銘柄を探すか、自身で決める必要があります。

「株価予想」や「目標株価」の類は気にしなくてOK

株価が将来いくらになるかは誰にもわかりません。なぜなら株価は業績ではなく需給(需要と供給のバランス)で決まるからです。将来の需給が正確に読めなければ株価予想は無意味です。需給次第で、いくら好業績だったり、割安であっても株価が全く上がらないこともありますし、逆に株価が割高に思えてもどこまでも上がり続けるときもあります。

株価予想や目標株価は買った株の売り時の目安として使われることが多いですが、株価がどこまで上がるかは分からないのですから、あまり気にしなくても大丈夫です。売却は上昇トレンドが終わったとき、あるいは自身で満足のいく利益が得られた時点で実行すればよいと思います。目標株価にこだわっていると、逆に売り時を誤ることになりかねません。

「プロ」よりも「投資家」のアドバイスに耳を傾けるべき

銘柄推奨や株価予想を行っているプロの中には、コンプライアンス上の問題もあり、実際に自分自身のお金を株式投資に回していない人も多くいるものと思われます。

もしプロの推奨銘柄や株価予想が外れたとしても、当の本人の懐は痛みません。でもプロの予想を信じて売買をした個人投資家は、実際に損失を被ってしまうのです。

筆者は個人投資家でもありますから警鐘を鳴らしておきたいのですが、予想が外れても懐が痛まない、責任も取ってくれないプロの予想を鵜呑みにするよりも、株式投資で利益をあげるためのファンダメンタルやテクニカルの知識やテクニックの習得などに個人投資家は労力を費やすべきです。

その意味では実際に身銭を切って投資している「投資家」からのアドバイスにこそ耳を傾ける必要があると思います。

筆者から皆さんへお伝えしたいのは、「予想」の類は過信せず、今後の好業績が期待できる銘柄や割安な銘柄を上昇トレンドで買い、下降トレンド転換で売る、というようなルール作りとその実行こそが株式投資での成功につながるということです。もちろんこれは筆者が実践していることでもあります。