連続増配企業とはどんな企業か

前回のコラムでお伝えしたように、配当金(インカムゲイン)を重視した投資は、長期投資を指向する方や、損切りがどうしても苦手だ、という投資家の方に向いている手法です。しかし、いくら配当金を重視して株式投資をしたとしても、株価が下落するリスクや配当金が減額されるリスクはどうしてもついてまわります。こうしたリスクの低減が期待できるのが、「連続増配企業」への投資です。「連続増配企業」とは、毎年配当金の額を増額させている企業のことをいいます。

連続増配企業は株主利益を重視してくれている

毎年配当金を増やしている企業は、業績が好調である証です。業績が振るわなかったり、業績が景気動向や為替レートなどに左右され不安定な企業では、配当金の額を維持するのが精いっぱいで、連続増配などとてもできません。

また、連続増配企業は株主への利益還元を重視してくれている企業ともいえます。一方で業績が伸びていても配当金を全然増額してくれない企業も少なくありません。株主への利益還元よりも内部留保や将来に向けた投資を優先したいとする立派な企業戦略ではありますが、配当金という面で考えればどうしても魅力は低下してしまいます。

そして、配当金を毎年増加させているというのは、今後の業績への経営者の自信の表れととらえることもできます。

アメリカ企業のホームページをみると、「株主に対してこれだけの還元を行い、かつそれに見合うだけの業績をあげ続けています。だから安心してわが社に投資してください。」といった、経営者から株主や投資家への自信あふれるメッセージがよくみられます。

株主重視の考えがアメリカほど浸透していない日本ではホームページにそこまで書いてある企業はほとんど見受けられませんが、連続増配という事実こそが「株主の方を向いて経営しています」という経営者からの強力なメッセージなのです。

連続増配企業は内需系が多い

連続増配を続けている企業を以下にリストアップしてみましょう。

  • 花王(4452):22期連続
  • ミニストップ(9946):19期連続
  • ホクト(1379):17期連続
  • リコーリース(8566):17期連続
  • SPK(7466):14期連続
  • 小林製薬(4967):13期連続
  • 三菱UFJリース(8593):13期連続

これをみると、内需系の企業がほとんどであることが分かります。内需系の企業は世界経済の影響を受けづらく、為替の変動による業績への影響も小さく済みます。そのため、たとえリーマン・ショックのような危機があってもそれを乗り越えて増配を続ける優良企業も決して少なくありません。投資家にとって非常に頼もしい存在です。

配当利回りからみた連続増配企業の有利性

では連続増配企業への投資がなぜ有利なのか、配当利回りの観点から考えてみましょう。

現在の株価2,000円、1株当たり配当金50円のA社があります。現時点でのA社の配当利回りは50円÷2,000円=2.5%です。A社は今までの配当金の傾向や今後の業績予想から、毎年3円ずつの増配が見込まれるとします。

10年後、A社の1株当たり配当金は80円になります。もし株価が現在と同じ2,000円のままだとしたら、配当利回りは80円÷2,000=4%に上昇し、株価の割安感が非常に強まります。配当金が毎年増え続けているのに株価が全く上昇しないというのも考えにくいので、10年後の配当利回りが現在と同じ水準になるとすれば、株価は80円÷2.5%=3,200円まで上昇する計算です。もちろん、その間配当金を受け取ることもできます。

連続増配企業はインカムゲインである配当金自体が毎年増えていくだけでなく、株価の上昇によるキャピタルゲインも期待できるのです。毎年の増配額にもよりますが、連続増配企業の株価は上昇しやすく、大きな下落はしにくいのが特徴です。

さらに配当利回りからみた投資元本の回収期間の短縮も期待できます。株価2,000円、1株当たり配当金50円の状況で買ったときは、投資元本の回収に40年かかる計算でしたが、配当金が増額されれば、投資元本の回収期間も短くなっていきます。投資元本の回収期間が短い方が有利な投資であることは言うまでもありません。

複数の企業への資金分散でさらなるリスク軽減を

もちろん連続増配企業も永遠に業績を伸ばし続け、配当が増え続けるわけではありません。でも配当金を重視して投資するなら、連続増配企業に投資した方がそうでない企業に投資するよりも安定した配当利回りを得られることができると思います。あとは突然の業績下方修正や減配リスクを軽減するために、できれば10社以上に資金を分散させておくのがよいでしょう。

日本の株式市場が低迷し、連続増配企業の配当利回りですら3%を超えている今は、連続増配企業を安値圏で買うことのできる好のチャンスなのかもしれませんね。その上で、今後日本株が急落するようなことがあれば、追加で買い仕込めるように資金を温存しておけばさらに万全かもしれません。