前回のコラムの最後に、「まだ株価が大きく上昇していない銘柄を先回りして買うことをお勧めします」と書きました。これを読んだ読者の方の中には、「ではそうした銘柄をどのようにして見つけるのか」と疑問に思った方も多かったと思います。

そこで今回は、筆者が実践している「先回り買い」の方法についてご紹介したいと思います。

基本は上昇トレンドにある銘柄から

筆者は、「先回り買い」を実践する際も、上昇トレンドにある銘柄から選ぶようにしています。なぜなら、下降トレンドにある銘柄から選択すると、先回り買いが失敗した場合株価が下落する可能性が高いからです。なお、トレンドの判定は日足チャートと25日移動平均線で行います。

例えば、1月17日に突然急上昇した三井住友建設(1821)ですが、この銘柄は急騰以前にすでに「株価が25日移動平均線の上にある」+「25日移動平均線が上昇している」状態であり、上昇トレンド入りしていました。

三井住友建設(1821)の日足チャート

さらに、西松建設(1820)や鉄建(1815)など、他の建設株がすでに大きく上昇していたことから、やがてはその動きが建設株全般に波及する可能性が高いことも予想できました。

このことから、三井住友建設を1月16日以前に先回り買いすることは十分に可能だったといえます。

上昇トレンドにない銘柄はあきらめる

では、1月13日に突如ストップ高をみせた宮越ホールディングス(6620)はどうでしょうか?

日足チャートと25日移動平均線の関係をみると、ストップ高の前日の1月12日時点では、株価が25日移動平均線の下にあり、25日移動平均線が下降していましたから、下降トレンドにありました。

宮越ホールディングス(6620)の日足チャート

こうした銘柄が突如急上昇したならば、仕方ないとあきらめましょう。やはり先回り買いするならば、今後上昇する可能性の高い上昇トレンドにある銘柄から選ぶのが失敗は少ないはずです。

ただし、上昇トレンド入りしていなくても、直近安値を割り込んだら損切り、というルールを守れるならばとりあえず買ってしまう、という戦略もあります。宮越ホールディングス株であれば1月10日の安値を割ったら損切り、というルールです。今のように日替わりでストップ高銘柄が続出する地合いであれば、損切りさえしっかりできればリスクは少ないでしょう。

先行銘柄の同業他社から銘柄を選択するのがポイント

先回り買いのもう1つのポイントは、上の三井住友建設のところでも少し触れましたが「先行銘柄の同業種・関連業種から選ぶ」という点です。

前回のコラムで取り上げた日本橋梁(5912)は今回の個別株物色の中心的存在といえ、1月5日のストップ高から本格上昇を演じました。この動きをみて、翌1月6日に日本橋梁株を買ってもよいのですが、やはりストップ高の翌日に買うのはリスクが相当高い行為です(日本橋梁の場合はそれでも成功しましたがこれは結果論です)。

そこで、同業他社に注目するのです。証券コードが先行銘柄と近い銘柄を探せば、同業他社は見つかります。すると、駒井ハルテック(5915)や高田機工(5923)、川岸工業(5921)などが、1月5日に日本橋梁と同様値上がりしていますが、日本橋梁ほど大きく上がっていないことが分かります。そこで、これらの銘柄を翌1月6日に買うのです。

それぞれ、1月6日の寄り付きに買って、1月20日の寄り付きに売ったとすると、以下のように2週間で30%~50%の利益を得ることができました。

駒井ハルテック 216円買い → 320円売り
高田機工 192円買い → 309円売り
川岸工業 202円買い → 270円売り

先行銘柄・中心銘柄の株価の動きに注意

注意したいのは、先行銘柄、中心銘柄が下落に転じれば、連れ高した同業他社の株価も大きく下がってしまうことが多いという点です。

1月20日の寄り付き直後に日本橋梁株が売り気配から急落すると、上記の駒井ハルテック、高田機工、川岸工業も寄り付き値から値を下げました。

確かに、日本橋梁株は1月5日以降驚異的な上昇を見せ、いつ反落してもおかしくない状況にありました。そして、駒井ハルテック株や高田機工株も1月19日に遅ればせながら大幅高を演じました。そのため、駒井ハルテック株や高田機工株、川岸工業株を保有している場合は日本橋梁株がさすがにそろそろ下がりそうだ、と警戒し、持ち株の半分程度は利食いするタイミングにあったといえます。

このように、先行銘柄や中心銘柄の値動きを常に追いつつ、特に短期間で急騰した銘柄については適度な利食い売りを行うことが肝要です。

短期急騰は長期上昇の入り口である可能性も

ただし、短期間に急騰した銘柄であっても、持ち株のすべてを利食い売りするのも勿体ないといえます。首尾よく安いところで買えた銘柄ならばなおのことです。

例えば建設株にはここ最近大きく上昇したものが目立ちますが、過去10年の月足チャートでみると、過去10年間の高値からははるかに低い水準で、まだ底値から少し立ち上がったばかりという状態であることが分かります。

短期的な急騰は、もちろんその後の急落で一相場終わってしまうものもありますが、特に建設株のように長期間低迷している銘柄であれば、長期的な上昇の立ち上がりに過ぎない可能性もあるのです。

短期急騰の場合は、一部はしっかりと利食い売りするとともに、残りは長期的な上昇を期待して持ち続けるのがよいのではないでしょうか。