公開買付けが実施されると株価はどうなるか?

前回、前々回コラムにて公募・売出しにかかるIR資料の見方や活用法を紹介しましたが、今回は公募・売出しと並んで重要かつ頻度も高い「公開買付け」について、IR資料の活用法や注意点を考えていきたいと思います。

公開買付け(「TOB(ティーオービー)」とも呼びます)とは、買付け者が上場企業の株式を大量に取得しようとする場合に用いる手続きです。

公開買付けでは、買付け者が買付価格を明示します。また、その買付価格は、対象銘柄によって大きく異なるものの、おおむね直近の株価より3割程度高い価格となる傾向にあるようです。

そのため、公開買付けの実施が発表されると、株価は買付価格にさや寄せされるように急騰し、その後は買付け期間終了まで買付価格近辺で株価が張りついたままとなります。

したがって、持ち株やこれから買おうとしている銘柄につき、株価チャート(日足チャートが望ましい)から、株価が突然大きく上昇し、その後横ばいで推移している動きが確認できれば、企業のHP(ホームページ)などで公開買付けの対象の有無を確認し、内容を把握しましょう。

公開買付けのIR資料をみてみよう

PGMホールディングス 日足チャート

プロミス 日足チャート

PGMホールディングス(2466)やプロミス(8574)の株価チャートをご覧ください。まさに上記のような値動きになっていますね。そこで、各社のHPよりIR資料を見てみると、確かに公開買付けが実施されていることがわかります。

PGMホールディングスは10月26日付で「株式会社平和による当社株券等に対する公開買付けに関する賛同意見表明のお知らせ」のIR資料を発表しています。

同様にプロミスは9月30付で「三井住友銀行による当社株式等に対する公開買付けに関する賛同意見表明のお知らせ」を発表しています(下記資料(1)参照)。

資料(1):プロミス(8574)IR資料(現在は掲載を終了しております)

ただし、PGMホールディングスやプロミスは株式を「買われる」立場であるため、詳しくはPGMホールディングス株式の買い付け者である平和(6412)、プロミス株式の買い付け者である三井住友銀行の親会社三井住友フィナンシャルグループ(8316)のHPに掲載されているIR資料を見る必要があります。

資料(2):平和(6412)IR資料(現在は掲載を終了しております)

資料(3):三井住友フィナンシャルグループ(8316)IR資料(現在は掲載を終了しております)

資料(2)の12ページをみると、平和が10月27日から11月28日までの間、1株につき52,000円でPGMホールディングス株式の買付けを行うことが分かります。

また、資料(3)の16ページには、三井住友銀行が10月18日から11月30日までの間、1株780円でプロミス株式の買付けを行うと記されています。

IR資料から公開買付け後の上場廃止の有無を読み取る

持ち株もしくは投資しようとしている株式に公開買付けが実施されることになった場合、まずIR資料から、買付者が対象企業の完全子会社化を目指すものかどうかを読み取ってください。これにより投資戦略が変わってくるからです。

資料(2)の1ページ、「1.買付け等の目的(1)本公開買付けの概要」の1~3行目および11~12行目の記述より、平和はPGMホールディングスを子会社化するために公開買付けを行うが完全子会社化する意図はなく、10ページ「(6)上場廃止となる見込み及びその事由」に記載のとおり、PGMホールディングス株式の上場は維持される見込みであることが読み取れます。

一方、資料(3)の1ページ冒頭文13~16行目の記述から、三井住友フィナンシャルグループはプロミスを完全子会社化する目的で公開買付けを行うとしています。そのため、14ページ「(4)上場廃止となる見込み及びその事由」に記載の通り、プロミス株式は上場廃止となる見通しが示されています。

次回は、買おうとしている株や持ち株につき公開買付けが実施される場合の投資戦略や注意点につきご説明します。