株式投資において大失敗を回避するためには「損切りの実行」が何よりも重要であることはすでにお話ししたとおりです。
しかし、個人投資家と話をすると、「損切りの重要性は頭では分かっていても、いざとなると実行できない」という人が多いことに気づかされます。

こうした「頭では分かっていても損切りが実行できない」個人投資家に有効なのが多くのネット証券で取り扱っている「逆指値注文」です。
この「逆指値注文」を使えば、あらかじめ指定した損切り価格に株価がヒットした時点で、問答無用で自動的に損切りの売却を実行してくれます。

でも、逆指値注文を使うと実際に損切りが実行されてしまうので抵抗がある、そもそも損切り自体をしたくない、という個人投資家が実は大部分のようです。
繰り返しになりますが、筆者は「損切りの実行」なくして株式投資における大失敗の回避はあり得ないことを身をもって実感しています。それでもどうしても損切りしたくない、という個人投資家の声に応えて、どうすれば損切りしなくてもできるだけ大失敗を避けることができるか、考えてみました。

1.下落途中の株を買わない

これは、第1回のコラムで述べた、株式投資で失敗を避けるための重要な2つのルールのうちの1つです(もう1つは損切りの実行であることは言うまでもありません)。
いくら好業績が期待できても、いくら高値から株価が大きく下がってお買い得に思えても、株価が下降トレンド真っ最中の株を買うという行為は、火中の栗を拾いに行くようなものです。塩漬け株が発生する可能性が非常に高いと言ってよいでしょう。
任天堂(7936・大証)の株価チャートをご覧ください。


(大証7974:任天堂 月足チャート)

今や誰もが認める優良企業で、業績も好調です。しかし株価は、2007年11月に73,200円の高値をつけた後、低迷を続けています。2009年10月には21,630円の安値をつけました。高値から70%以上の下落です。
「あの業績絶好調の任天堂株が高値から半分になった。お買い得だ。」と思って、株価が下落途中にもかかわらず2008年10月に36,600円で買ったとしたら、わずか1年で買値の40%もの含み損を抱える結果になってしまうのです。

2.根拠なく適当に買わない

損切りができるのであれば、直感的に「上がりそうだな」と思った株をなんとなく買ってみることも問題ありません。なぜなら、その株の株価が下がったら損切りすればよいだけの話だからです。
しかし、損切りできないのなら話は別です。上がるか下がるか分からない中途半端な株価位置で買うのではなく、上昇トレンドの初期など上がる可能性が高い局面で買うようにしましょう。

3.大きく上昇した銘柄を買わない

株価は右肩上がりになだらかに上昇を続けていくものではないことは皆さんお分かりでしょう。株価は仮に長期的には右肩上がりに上昇していくにせよ、時には上にも下にも行き過ぎることがよくあります。1.で示した任天堂も、高値をつける直前の2年間で株価は約6倍にまで上昇したのです。株価チャートをみると、非常に急激な上昇をみせたことがお分かりいただけるでしょう。
株価が大きく上昇している、ということは株価が上に行き過ぎている可能性があります。そうなれば行き過ぎた株価はいずれ修正されるもの。高値掴みは最も塩漬け株が発生しやすい投資行動の1つです。損切りできないのなら、大きく上昇した銘柄を高値で買うのは避けましょう。

4.業績で銘柄を選ばない

株価は将来の業績を織り込んで動きます。しかしながら、将来は誰にも分らないもの。将来の業績予想と実態とが大きく異なるケースも頻繁にみられます。
「業績で銘柄を選ぶ」とは、まさに好業績が期待できる銘柄に投資することを意味しますが、好業績の期待がはげ落ち、実際は業績が良くないことが市場関係者の知るところとなれば、もともと好業績期待で株価が高かった分、下落も激しいものになります。あっという間に株価が2分の1、3分の1になってしまうケースも珍しくありません。損切りができれば、下落の初期段階で逃げれることができますが、損切りができなければ、多額の含み損をかかえてしまうことになりかねません。
株価は業績に必ずしも連動するとは限りません。損切りができないのならば、業績だけでなく株価の動きや株価位置に気を配り、塩漬けになる可能性ができるだけ低いタイミングで買うようにすべきです。

5.売られすぎの局面で買う

損切りしないことによる最大の弊害は、「塩漬け株」を作ってしまうことにあります。塩漬け株を作らない、仮に作ってしまうにしても含み損をより小さくするには、「できるだけ安く買う」ことを心がける必要があります。
株式市場は上にも下にも行き過ぎると先ほども申し上げましたが、1年に1回は「明らかに売られすぎ」という局面があるものです。半ばパニックになって皆が投げ売りする場面こそが安く買う最大のチャンスです。
その後の反発局面でしっかりと利食い売りをするのであれば、この戦略の成功性は高いといえます。
売られすぎかどうかを判断するには、25日移動平均線からのマイナス乖離率(日経平均株価であればマイナス10%が目処)、信用評価損益率(マイナス20%以下が目処)、25日騰落レシオ(60%が目処)などを用います。
ただ、売られすぎの局面はめったにありませんし、買いのタイミングもかなりシビアになりますので、常日頃から上記の指標や株価のチェックは怠らないようにしなければなりません。
また、2008年10月の株価暴落局面など、「売られすぎ」の状態からさらに大きく下落することもあり得ます。この方法は過去の実績からみて成功の可能性はかなり高いと思われますが、100%万全なものではありません。買うなら下落終了直後の反発に転じたタイミングで買うようにしましょう。

株式投資に限らず、儲けの基本は「安く買って高く売る」ことです。損切りをどうしてもしたくない、もしくはできない方は、できるだけ安く買うことを心がけ、持ち株が多額の含み損を抱えることのないようにしてください。