エヌビディア決算を受けた時間外の株価は下落で反応
そんな中、「株価上昇の起爆剤になれるか」として注目されていたのが、米半導体大手エヌビディアの決算です。20日(水)に発表された決算(2024年8月-10月期)の内容を見ると、売上高が前年同期比で94%増加し、純利益の額も約2倍となりました。四半期ベースで過去最高を更新したほか、市場予想も上回るなど、数字だけで見ればかなり強い結果でした。
ただし、この決算を受けたエヌビディア株は、20日(水)の時間外取引で下落という初期反応を示し、一時、同日終値比5%安まで下落する場面があり、この流れを引き継いだ21日(木)の日経平均も下落する展開になりました。
決算発表を通過したことによる出尽くし感や、決算内容が市場の期待に応えたものの、予想を裏切るほどの強さを示せなかったことなどによる売りが出たものと思われます。
先ほども述べたように、今回のエヌビディアの売上高増減率(前年同期比)は94%でしたが、1年前の200%超えをピークに、以降は低下傾向にあるほか、次の四半期(2024年11月~2025年1月)の売上高見通し(375億ドル)も、市場予想(370億ドル)とあまり変わっておらず、成長の勢いという面では減退傾向にあると言えます。
もっとも、他の企業や業種と比べれば、まだ十分に高い成長をしていることは事実ですので、決算を材料にこのままエヌビディア株が下落し続けるとは考えにくいですが、かつてのように相場全体をけん引する力を失いつつあるのかもしれません。
相場のけん引役の減少と懸念材料の増加
こうしたエヌビディア決算だけでなく、いわゆる「トランプトレード」が一服しつつあるなど、最近の株式市場では、相場の柱となるようなけん引役が乏しくなる一方、むしろ懸念材料の方が増えてきているように思われます。
例えば、次期トランプ政権のネガティブな側面(財政悪化やインフレ再燃、そしてそれに伴う金利の高止まり)を警戒する動きをはじめ、中国経済の低迷や、地政学的な不安(ウクライナ、中東地域)の高まり、そして金融市場では株高と金利高の同時進行といった不安定さも気掛かりです。
とりわけ、米国株市場は、S&P500の長期PER(株価収益率)(CAPEレシオ)が35倍を超えていて、かなり割高な状況となっています。ここから先の株高は「割高感との勝負」になるだけに、相場のけん引役の不在は今後の株価の上値が重たくなるだけでなく、ちょっとした悪材料をきっかけに大きく調整する可能性も出てきます。
とはいえ、足元の好材料と懸念材料とのバランスからすれば、株式市場はもっと下落しても良さそうなのですが、実際にはまだ相場が崩れる気配を見せていません。
先ほどまで見てきたチャートでも下値の堅さが確認できましたが、この背景には、「まだ株価が上昇するかもしれない」という期待が残っているためと考えることができそうです。
そこで、相場の期待や不安といったムードから捉えた相場のトレンドについて考えて行きます。
相場のムードから見た株価のトレンド位置
<図5>相場のムードから捉えたトレンドの動きとポイント
上の図5は、その相場のムードから捉えたトレンドの動きとポイントになりますが、現在の相場が位置しているのは、(5)の「FOMO(買い遅れる恐れ)」、もしくは(7)の「強気の罠(強気の勘違い)」のどちらかであると思われます。ちなみにFOMOとは「Fear Of Missing Out」の頭文字をとったものです。
FOMOは上昇トレンドの終盤、強気の罠は下落トレンド入りの初期の段階で表れやすい相場のムードになりますが、ここで思い出されるのは、「もうはまだなり」と、「まだはもうなり」という相場格言です。
「もうそろそろ天井かと思ったら、まだ上昇基調が続いてしまった」というのが前者のFOMOを指し、「まだまだ上昇基調が続くと思っていたら、もう上昇相場が終わっていた」というのが後者の強気の罠に該当します。
従って、足元の相場は「まだまだ上昇する」という見方と、「そろそろ天井をつける」という見方がせめぎ合っている状況と言えます。ただ、いずれにしても、この先にあるのは株価の調整局面の可能性が高いということです。
もっとも、相場のタイミング的には、「米大統領選挙後の株は上昇しやすい」というアノマリー(経験則)や、クリスマス商戦への期待、年末ラリーといった具合に、株高になりやすい相場地合いではあります。
しかしながら、今年については、「例年とは違う展開になるかもしれない」ことを念頭に置き、これまで続いてきた「強気相場の終焉(しゅうえん)」を想定しながら取引に臨んだ方が良いかもしれません。