ドル/円は日銀要因しばらく封印、焦点は12月の日米の金融政策会合!?

 FOMCの金利見通しでは、2024年末金利見通しは6月の5.1%から4.4%に大きく下方修正されました。9月利下げ後の政策金利(4.75~5.00%)から、年内の残り2回(11、12月)のFOMCで0.50%利下げする見通しということになります。0.25%刻みだと、11、12月にそれぞれ0.25%の利下げです。そして2025年末は3.4%(2024年末から1%利下げ)、2026年末は2.9%(2025年末から0.50%の利下げ)の見通しとなっています。

 しかし、市場には2024年末までの利下げは0.50%ではなく、0.75%の期待がくすぶっています。CME(シカゴ先物取引所)のフェドウオッチでは12月までに0.75%の利下げ期待が最も高く48%となっています。市場は年内にもう1回の0.50%の利下げがあるかもしれないと期待していることになります。そのことがドル円の上値を重たくしているのかもしれません。

 FOMC後、タカ派のウォラーFRB理事も「ディスインフレの進展が一段と確認できた場合や、労働市場が予想外に悪化した場合再度0.50%の利下げの可能性もある」と発言しています。

 パウエル議長は物価よりも雇用の下振れリスクを警戒していることから、今後の相場は雇用指標によって敏感に反応することが予想されます。雇用指標が悪ければ大幅利下げの期待が高まってドル安となり、改善していれば大幅利下げ期待が後退し、ドル高になることが予想されます。

 物価再燃を警戒する意見もFRB内にはあります。タカ派のボウマン理事は0.25%利下げを主張して今回の0.50%利下げに反対しました。理事の反対は19年ぶりとのことです。

 今回の0.50%利下げは全会一致ではありませんでした。FOMCの金利見通し(ドットチャート)も、FRB内では意見が分かれていることを物語っています。19人のメンバーの内、2024年末4.4%見通しは9人ですが、4.6%見通しも9人います。4.6%見通しということは、年内残り2回のFOMCで0.25%の利下げ1回ということになります。

 このようにFRB内で意見が分かれる状況のため、物価や雇用のデータ次第ではFRBの政策スタンスが容易に変わる可能性があり、相場の波乱要因になりそうです。まだ市場の方が利下げ方向に前のめりしている状況のため、物価上昇や雇用改善を示す指標が出た場合には、年内利下げ幅が後退し、ドル高円安につながるというシナリオにも留意しておく必要があります。

 また、日銀は追加利上げに慎重なため、10月利上げ期待はかなり後退しています。そして12月に利上げをするかどうかは、米国景気次第ということになりそうです。

 もちろん、日本の物価が再燃し上昇し始めれば、追加利上げ期待が高まりますが、原油が下がり、円安が修正されている現状では大きな物価変動はなさそうです。従って、今後のドル/円は、日銀要因はしばらく封印され、米国要因によって動くことが予想されます。

 11月のFOMCは6~7日に開催されます。5日の米大統領選挙直後に利下げをするのかどうか、市場の思惑は相当混乱しそうです。FRBは11月を避け、12月に0.50%の利下げをするシナリオも想定されます。

  そして、日銀が米国経済がそれほど後退しないことを見極めた上で、12月に利上げすることも考えられます。12月の日米それぞれの金融政策決定会合でいずれも政策変更をした場合には、ドル/円は再度1ドル=140円割れを目指すかもしれません。