今日の為替ウォーキング
今日の一言
前進をしない人は、後退をしているのだ – ゲーテ
Can the Can
円のキャリートレードは、黒田日銀がアベノミクスのもとで金利を著しく低下させて、円を金利の無い通貨に変えてしまって以来、増殖を続け最盛期にはその残高は約1兆ドル規模にまで膨れ上がった。
新型コロナの世界流行でFRB(米連邦準備制度理事会)が緊急利下げに踏み切った時に米国との金利差は一時的に縮小した(日銀は利下げしなかった)が、2021年以降のFRBの利上げサイクルに転じたことで再び拡大に転じた。2024年前半も日米金利差は縮小することなく、 ドル/円が38年ぶりとなる161円台まで円安が進むなかで、円キャリートレードに対する需要は続いた。しかし、積み上げられたポジションの大きさは、同時にキャリートレードを解消するときのリスクの大きさでもある。
キャリートレードは為替が安定してボラティリティ(値動き)が小さいことが重要な要素である。キャリートレーダーは金利差の変化に敏感だが、金利差の絶対水準よりも、その変化(拡大か縮小か)に対して強く反応する傾向がある。
1998年10月に、米ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破綻をきっかけとしてキャリートレードが急激に解消された時は、ドル/円は一日で10円の円高に振れ、さらにその後4日間で20円近く円高が進んだ。今回の場合は、金融システムに重大な問題が発生したわけではなく、株式市場も短期間で回復したため、大幅な円高につながることは避けられたようだ。
最近の資料によると投機筋は、円クロスを含む円ショートポジションの80%をすでに手仕舞いし、ドル/円のロングポジションも1/3まで縮小した模様だ。ポジション解消に伴う急激な円高リスクは低下したようだ。
FRB利下げサイクルにおけるキャリートレードの平均収益率は、平常時の半分程度に低下するというデータがある。FRBと日銀の金融政策の方向を考えるなら、キャリートレードが以前のような人気を取り戻すのは、しばらく先のことになるだろう。