松岡さんのケース

イメージ重視で大企業へ投資。でも怖くなり…

 松岡さんは、住宅ローン控除がなくなる年に一括返済するため用意していた定期預金のお金を取り崩して投資することにしました。投資初心者だという自覚があったので、まずは誰もが知っている企業なら安心だと思い、その中で特に株価が大きく下がっている銘柄を探しました。ただ、せっかく投資するならと配当金も多くもらえる方が損しなくて済む。そう考えて厳選した1銘柄は日本株で配当が5%以上出ているものでした。

 株式購入後、コロナ・ショックで下がった株価はさらに下落。はじめは5%程度の損失なら、配当が入ってくるから大丈夫と、気にしないようにしていた松岡さんですが、10%を超える損失になったとき、不安が募りました。新型コロナウイルスの影響はまだまだ終わらず、経済ももっと悪くなるという情報を聞いて株式を売却することにしました。

「これは失敗したかな。投資は損切りが大切だと聞いたし、仕切り直しだな」

 自分の見通しが甘かったと思いつつも、これからもっと経済が悪くなるなら日経平均株価はもっと下がるはずだと、日経平均が下がると利益が出るダブルインバース(*2)を購入しました。新型コロナウイルスの問題が落ち着くまでは株価が下がり続けると想定していましたが、逆に日経平均は反発。経済情勢は悪くなる話ばかりなのに、わけが分からず損失はふくらむばかり。

*2ダブルインバース:日経平均株価やTOPIXなどの株価指数に対して、逆方向へ2倍の大きさで動く指数です。日経平均株価が1%上昇すると、日経平均ダブルインバースは2%下落します。反対に、日経平均株価が1%下落すると、2%上昇します。

 結局、松岡さんは相場の下落でも上昇でも大きな損失を出してしまい、わずか2カ月で3年分の貯金をなくしてしまいました。住宅ローンを返済するための資金が半分近くになってしまい、後悔する結果になりました。