今日は、「日本株に積み立て投資を始めたものの不安」という読者の声があることに対して、私の考え方をお伝えします。

荒れる日経平均

 日経平均株価が急落しました。私は、日本株は割安で、魅力的な投資対象と考えています。日経平均に連動するインデックスファンド(投資信託)に投資していけば、中長期で資産形成に貢献すると思います。

 ただし、日経平均の欠点は、値動きが荒いことです。円高や米景気減速、地政学リスクなどを嫌気して、何回も急落を繰り返しています。いいタイミングで買って、いいタイミングで売るのは至難の業です。

 日経平均と、S&P500(米国株の動きを示す代表的な株価指数)の動きを比較した、以下のグラフをご覧ください。

<日経平均と米国S&P500株価指数の動き比較:2012年末~2024年7月26日>

出所:2012年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 アベノミクスがスタートした2012年末からの12年間で日経平均もS&P500も約3.7倍となっており、どちらも大幅な上昇です。ただし、日経平均もS&P500も、一本調子で上昇が続いてきたわけではありません。何回も急落・急騰を繰り返しながら、上昇してきました。

 急落局面で、高値から安値までのドローダウン(下落率)は何パーセントくらいでしょうか。それが分かるようにグラフ中に書き込んだのが、以下です。

<日経平均の動き:2012年末~2024年7月26日>

出所:2012年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 過去12年のうちに、10%から30%くらいのドローダウンが11回ありました。平均すると年に1回くらい、この規模の急落が起こっていることになります。

 景気後退をともなう急落では、高値から安値までの下落率が30%程度に拡大します。2020年のコロナ・ショックでは、日経平均の下落率はマイナス31%となりました。

 2015年後半から2016年前半にかけての日経平均下落もマイナス28%で、30%近い下げです。この時は景気後退ぎりぎりまで景気が悪化してから持ち直した時です。定義次第では「短期景気後退」があったと言っても良い局面でした。

 景気後退を伴わないショック安も、たくさん起こっています。2013年5月は日本も世界も景気回復局面でしたが、日経平均は一時的に21%も急落しました。「バーナンキ・ショック」といわれる世界的な株安に巻き込まれたためです。

 当時、FRB(米連邦準備制度理事会)議長だったバーナンキ氏が「将来、米国の金融緩和縮小が必要になる」と発言したことで、世界的な株安が起こったために、「バーナンキ・ショック」と呼ばれました。

 このように後から振り返ると、過剰反応と思われるような急落も多々あります。冷静になって後から振り返ると「そんなに大きく下げる必要はなかったのに」と思われることが多いものですが、暴落の渦中にいる時は分かりません。「世界景気がこれから急激に悪化する前触れでないか」という見方が出てきて、不安が広がります。

 教訓として、短期的な株価変動に惑わされて右往左往することなく、長期的に淡々と積み立て投資を続けていくことが、長期の資産形成に寄与すると思います。