なぜ今、急に円高?

 3つの理由があると思います。

【1】政府日本銀行による為替介入(正式発表は無いが、実施されたのはほぼ確実)
【2】6月の米CPI(消費者物価指数)が市場の想定以上に鈍化
【3】7月に入った発表された米指標に景気鈍化を示すものが多い

【2】【3】によって、9月にも米利下げがあるとの期待が高まったタイミングで、為替介入があったため、急激な円高が進んだと考えられます。

ドル円為替レートの週次推移:2024年1月2日~7月12日

出所:楽天証券MSIIより作成

 急激な円高が進んだのは、日本時間で7月11日21時30分から、つまり米労働省が6月の米CPIを発表した直後からでした。6月の米CPIは、米国のインフレ鈍化を印象づけ、9月にもFRB(米連邦準備制度理事会)が利下げを始める期待を強めるものでした。

米国インフレ率(CPI総合指数・コア指数の前年比上昇率)推移:2020年1月~2024年6月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所作成

 総合インフレ率、つまりCPI総合指数の前年同月比上昇率は3%まで低下しました。さらに特筆すべきは、同指数が前月比マイナス0.1%と減少に転じたことです。インフレ収束が鮮明になってきたと解釈されます。

 この数値が出た直後、政府日銀による円買い介入があったのはほぼ確実です。介入効果と、6月CPIを受けた9月利下げ期待の高まりもあって、急激な円高が進みました。

 9月の米利下げ期待が高まった背景には、CPI以外の景気指標もあります。

米雇用統計:非農業部門の雇用者増加数(前月比)

出所:米労働省より楽天証券経済研究所作成

米雇用統計:完全失業率

出所:米労働省より楽天証券経済研究所作成

 非農業部門の雇用者は前月比で20.6万人増加しました。20万人以上増えていれば、米景気は好調と解釈されます。ただし、ひところに比べ雇用の勢いは低下していると解釈されます。6月の完全失業率は4.1%でした。まだ低い水準ですが、ひところに比べ、上昇しつつあります。総じて、雇用はまだ強いものの、勢いが低下している印象となりました。

ISM製造業・非製造業景況指数:2020年1月~2024年6月

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成