「気に入った球しか振らない」バフェットの手元資金が再び過去最高を更新
「今日このテーブルに座っているわれわれの中で1,890億ドルの効果的な使い方を知っている人は誰もいないと思う。(米短期債の金利が)5.4%の現状では手を付けない。1%だったら話は別だが。FRBには内緒だよ。われわれは気に入った球しか振らないのだ」
4日、米ネブラスカ州オマハで開かれた米投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の年次株主総会で、「なぜ現金を使わないのか」という投資家からの質問に対してウォーレン・バフェットが答えたものである。
バークシャーの2024年1-3月(第1四半期)末時点の現金保有残高(現預金と米短期債の保有額を合計した額)は1,890億ドル(約29兆円)と前期(2023年第4四半期末は1,676億ドル)から13%増え、再び過去最高を更新した。
5月5日の日本経済新聞の記事「バフェット氏、高金利で鈍る株式投資 手元資金30兆円へ」によると、その額は米ウォルト・ディズニー(約2,080億ドル)や米マクドナルド(約1,950億ドル)の時価総額に相当する額だと言う。
バークシャー・ハサウェイの1,890億ドル(約29兆円)の手元現金残高とNYダウの推移
バークシャー・ハサウェイB株(日足)
さらにバフェットは「今四半期末には2,000億ドル程度になるだろうというのは、妥当な推測だと思う」と述べ、6月末には大台を超えるという見通しを語った。そして、「使いたいのはやまやまだが、リスクがほとんどなく、私たちに大きな利益をもたらしてくれると思わなければ、使うことはないだろう」と付け加えた。
バフェットは以前から目を見張るようなリターンを達成できる有意義な案件が不足していると述べていた。直近で米国の3カ月物短期債の利回りが約5.4%で推移する中、米短期債の保有を積み増している。短期債から得る金利収入は昨年の第3四半期以降、3四半期連続で保有株からの配当収入を上回っている。
バークシャー・ハサウェイの手元現金残高の内訳
加えて、保有する株式の売却も進めた。
前述の日本経済新聞の記事「バフェット氏、高金利で鈍る株式投資 手元資金30兆円へ」は、4日に開示された四半期報告書の情報を基に、アップル株(AAPL)の保有株数を13%程度、石油大手シェブロン株(CVX)を2%程度売却した他、米メディア大手パラマウント・グローバル株(PARA)については損失が出る状態で全て売却したことを伝えている。
バフェットは年次総会の中で、パラマウント・グローバル株を見切ったことについて、「100%私が決めたことで、全て売却しかなりの損失を出した」と語った。そして、この経験から、人々が自由な時間にどのような活動を優先させるかについてより深く考えるようになったと付け加えた。
バークシャーが持つ上場株式の保有割合(2023年12月末時点のフォーム13Fより)
一方、アップルについては、今回の売却にもかかわらず、バークシャーが長年にわたり保有するアメリカン・エキスプレス(AXP)とコカ・コーラ(KO)の2社よりも「さらに優れた」企業だと評価。バフェットのアップルの取得コストは40ドル未満だと思われるが、「アップルは年末まで最大の保有株であり続けるだろう」と述べた。
アップル(日足)
バークシャーの株式売買の推移
バフェットは、米国の株式譲渡益に対する税率が上昇する可能性があるため、今のうちに含み益の一部を実現益に変える方針だという。
バフェットがアップルを売却したことは米国株市場にはショッキングな出来事であろう。そこで登場するのが自社株買いである。5月3日、アップルは史上最大規模となる1,100億ドル(約17兆円)相当の自社株買い計画を発表した。