日経平均、上昇エネルギー弱まる?
新年度入りの東京株式市場は方向感に乏しい展開が続いています。3月下旬から、日経平均株価は上昇、下落を交互に繰り返しています。
少々気になる点としては、これまで一貫して右肩上がりだった25日移動平均線が今年初めて下向きとなり、日経平均がその水準を下回ったことです。5日移動平均線も25日移動平均線を下回っていますので、これは「おやおや」と思ってしまう状況です。
3月12日の直近安値である3万8,271円38銭より上を推移していますので、さほど心配はしていませんが、プライム市場の売買代金も4兆円ほどと、1~3月の5~6兆円と比較すると減少しています。短期的には上昇のエネルギーが弱まった可能性はあります。
週足では、切り上がる13週移動平均線より上を推移していますので、まだまだ中期的には強いトレンドが継続していると考えますが、短期的には調整局面入りしてもおかしくはない状況にあります。
2月決算銘柄の発表がこれから本格化を迎えますが、圧倒的に数が多い3月決算銘柄の発表まではあと1カ月はあります。
日銀の為替介入はある?日本株の下落を待ちたい投資家心理
また、為替が1ドル=151円90銭台まで円安ドル高が進行していることで、政府・日本銀行による円買い介入(為替市場で円を買って、ドルを売ることで行き過ぎた円安ドル高を政府が是正させること)がいつ入ってもおかしくない状況にあります。
実際、2022年9月22日と10月21日、24日の合計3回、政府・日銀による為替介入が入った際、ドルは短期的に5円ほど円高ドル安に振れました。さすがにこれだけ為替が短期的に動くと、東京株式市場では輸出関連銘柄を中心にネガティブな反応を示す銘柄が多くなることが容易に想像できます。
投資家心理としては、「どうせ買うんだったら、為替介入が入って日本株も下落した局面で買いたい」と思うのが当然です。つまり東京株式市場は、政府・日銀による為替介入という「重し」があることで、積極的な買いが手控えられてしまっているわけです。
では、こうした局面はどうしたらいいのでしょう。一つの選択肢として「待つ」のも相場です。投資の有名な格言に「休むも相場」とありますので、「休む」つまり「待つ」という選択肢は正解の一つだと思います。
内需系銘柄を「買って待つ」も選択肢
一方、「そうは言っても何か投資先はないのか?」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。そういった方には、為替に左右される銘柄が多いプライム市場ではなく、内需系が多いスタンダード市場の銘柄を「買って待つ」という選択肢をご紹介したいと思います。
まず東京証券取引所のHPにある各市場のコンセプトをご紹介します。
プライム市場 | 多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、 より高いガバナンス水準を備え、 投資者との建設的な対話を中心に据えて 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場 |
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スタンダード市場 | 公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、 上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場 |
グロース市場 | 高い成長可能性を実現するための事業計画及び その進捗の適時・適切な開示が行われ 一定の市場評価が得られる一方、 事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場 |
出所:日本取引所グループHP |
スタンダード市場に注目するのは、東証が掲げる「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に伴う開示を行っている企業がまだ22%(2月末時点、348社)しかないためです。
プライム市場は既に59%の企業が取り組んでいますが、スタンダード市場はまだまだこれからといった状況です。つまり、プライム市場のように、今後、「ROE(自己資本利益率)8%、PBR(株価純資産倍率)1.0倍」対策に乗り出す企業がスタンダード市場でも多く出てくる可能性があるわけです。
流動性や時価総額、英文開示、アナリストレポートの有無などの観点で、プライム市場と同様、外国人投資家が買いに来る地合いまでは想像しにくいところですが、変化が期待できるという点で、スタンダード市場はぜひ押さえておきたい市場と考えます。
田代くんの気になる5銘柄はコレ!海外投資家の買いはこれから?日本の中小型株5選
今回の5銘柄のコンセプトは下記の3つです。
・スタンダード市場で時価総額1,000億円以上
・外国法人持株比率が10%未満
・前期まで3期連続で増収増益
・「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(2024年2月29日時点)」に関する企業一覧に該当なし
銘柄名 | 証券コード | 株価(円) (4月10日終値) |
ポイント |
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東映アニメーション | 4816 | 2,802 | 「ドラゴンボール」「ONE PIECE」などグローバルなIPホルダー |
三谷セキサン | 5273 | 6,240 | 2025年3月期はTSMC案件の出荷増も寄与する見通し |
三菱ロジスネクスト | 7105 | 1,724 | 3月発表の中期経営計画ではROE20%を目標に掲げる |
帝国ホテル | 9708 | 986 | 国内有数の高級ホテルでインバウンド期待が根強い |
関西フードマーケット | 9919 | 1,789 | 各スーパーの既存店売上高は好調を維持 |
東映アニメーション(4816)
日本アニメのIP(知的財産)を所有する事業者として、非常に有名な企業です。同社の中核を担う「ドラゴンボール」「ONE PIECE」の新作アニメは、グローバルでファンを増やしています。海外向け配信権や上映権販売、版権収入の増加で、足元の業績は好調に推移しています。
2025年3月期は、映画「THE FIRST SLAM DUNK」や、新作アニメ「ドラゴンボール DAIMA」の国内外への配信権販売の増加が想定されます。また、アニメ25周年を迎える「ONE PIECE」や、新作アニメ放送開始による「ドラゴンボール」の版権販売が好調に推移しそうです。2026年3月期は、「ONE PIECE」の新作映画公開も予定されています。
三谷セキサン(5273)
福井県を基盤とした建物の基礎工事用杭(パイル)などを手掛けています。地盤の弱い軟弱地盤でも基盤工事ができる技術を持っています。2025年3月期に関しては、半導体世界最大手の台湾TSMC関連の受注で、パイルの出荷が拡大する見通しです。
2024年3月期は、営業利益、経常利益は前年同期比10%ほどの増益が見込まれています。株価も昨年末からじりじりと上昇しており、2021年12月15日の高値8,310円を意識した展開となっています。
三菱ロジスネクスト(7105)
京都を基盤にフォークリフト事業を展開しています。2月29日時点では、ROEなどの開示を行っていませんでしたが、3月22日に中期経営計画を発表し、2026年目標でROE20%以上を掲げました。
この発表に対する株価の動向は限定的ですが、昨年1月安値をボトムとした右肩上がりの展開は継続しています。年初来高値は3月の1,929円ですが、「中期経営計画」を見直す動きは入ると想定します。
帝国ホテル(9708)
日本を代表する老舗ホテルで、「帝国ホテル 東京」は今年から建て替え工事を行っており、2036年に完成予定です。2022年に中長期経営計画2036を策定しましたが、「帝国ホテル 東京」の建て替えがメインの計画内容で、ROEや株主還元に関する計画は記載されていません。今後、開示される可能性はありますので注目しています。
国内有数の高級ホテルの位置付けですが、インバウンド関連銘柄の一角として株式市場では理解されていますので、今後の訪日外国人の増加という追い風も期待できます。
関西フードマーケット(9919)
関西基盤のエイチ・ツー・オー リテイリング参加の食品スーパー「阪急オアシス」「イズミヤ」などを運営しています。2024年3月期の経常利益は、前年同期比52.2%増と大幅な増益を見込んでおり、阪急オアシス、イズミヤ、関西スーパーマーケットいずれも2023年4月以降の既存店売上高は前年同期比でプラスを維持しています。
株価はじりじりとした上昇が続いており、2021年9月8日の戻り高値2,213円を意識した展開となっています。派手さはない業態ではありますが、堅調な業績を背景に今後の「企業統治の強化」策の発表に期待したいところです。