これまでのあらすじ
信一郎と理香は小学生と0歳児の子どもを持つ夫婦。第二子の長女誕生と、長男の中学進学問題で、教育費の負担が気になり始めた。毎週金曜夜にマネー会議をすることになった二人。教育費はもちろん、自分たちの老後のことが気になり始めた二人は…。
勤務先の福利厚生を確かめてみた
次の金曜のマネー会議を待てず、ランチタイムに信一郎は理香にメッセージを送った。
信一郎が勤務する会社の人事総務に問い合わせたところ、顔見知りの総務の男性が「お?」という顔で対応してくれたのだ。
「最近、この問い合わせ多いんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。2024年にNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が制度拡充したのを機会に、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)や企業型DCにも注目が集まってるらしいですね」
個人でiDeCoはされていませんね? と念を押され、信一郎はうなずいた。すでに個人でiDeCoを始めている人は、iDeCoと企業型DCを併用するか、今までのiDeCoを企業型DCに移換するかが選べるらしい。それによって手続きや必要な書類が異なるとのことで、信一郎は「iDeCo自体初めてで、いったんは企業型DCだけでいくつもりである」ことを伝えた。
「今までも、何度も社内の共有会で案内してたんですけどね。なかなか利用者が増えなくて…」
人事総務担当者は、そうこぼしながら必要な書類をまとめ、今後の流れを説明してくれた。書類に記入して提出すれば、後は人事総務が手続きをまとめてやってくれるらしい。
「人事総務ができるのは口座開設して引き落とし処理までなので、投資する商品は自分で選んで運用してくださいね。ちょっと手続きに時間がかかりますが、口座の開設準備が整ったら連絡します」
「お願いします!」
企業型DCの手数料は、基本的に福利厚生の一環として企業が負担してくれる点も大きい。昨夜の工藤との会話で、そういったメリットを聞いた後であるため、信一郎は安心して加入の手続きを進めることにした。
「…そうなると、NISAでの投資額は減らしたほうがいいのかな…」
iDeCoや企業型DCは、60歳をすぎないと現金化できないというデメリットがある、と昨夜、工藤は教えてくれた。
老後の備えとしては万全だが、健が中学に合格できた場合に備えて、簡単に現金化できるNISAとの比率も考えておかなければならない。この点については次の金曜の「マネー会議」で理香とすり合わせよう。そしてなにより、めんどくさがりの理香を説得して、iDeCo口座の開設を勧めよう、と信一郎は仕事に戻った。
「iDeCoとNISA、どっちを優先する?<5-5>夫婦、老後を考える」