アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15
※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。
※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。
上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。
2月29日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。
なお、上場市場はパチスロ大手のユニバーサルエンターテインメント(6425)とパソコン製造・販売のMCJ(6670)がスタンダード、その他はプライム市場となっています。
日経平均は史上最高値を更新、値がさハイテク株が主導
日経平均株価(225種)は2月(1月31日終値~2月29日終値まで)、7.9%の上昇となりました。
日本銀行の内田真一副総裁が「マイナス金利解除でも緩和維持」と発言し、これをきっかけに上昇ピッチが速まる展開となりました。英アームの好決算発表を受けて、指数寄与度の高いソフトバンクグループ(9984)の株価が急伸したことも、大きな押し上げ要因となりました。
東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)などの大幅高も加わり、13日の日経平均株価の上昇幅は、2020年6月16日以来の1,000円超の水準となりました。また、米エヌビディアの想定以上の好決算発表も刺激材料となり、22日にはついに、1989年12月29日につけた史上最高値を更新し、初の3万9,000円台を突破しました。
日経平均株価が先月に続いて大幅な上昇となる中、ランキングTOP15銘柄の株価は高安まちまちの展開となりました。2月の株価上昇は、高配当利回り銘柄などのバリュー株よりも、半導体関連などのグロース株が主導した証左といえるでしょう。
パイオラックス(5988)、西松建設(1820)が10%以上の上昇となったほか、MCJ(6670)も大きく上昇。日本製鉄(5401)やJFEホールディングス(5411)など大手鉄鋼株も堅調な動きとなりました。パイオラックス、MCJは業績・配当予想の上方修正を発表、西松建設も業績上方修正が買い材料視されることとなりました。
半面、ユニバーサルエンターテインメント(6425)は10%超の急落となりました。2024年12月期の大幅減益見通し、ならびに、2023年12月期期末配当金の見送りが嫌気されました。パチンコ機製造大手SANKYO(6417)は業績予想を上方修正しましたが、買い一巡後は出尽くし感が強まる状況となっています。
ちなみに、SANKYOは2月末に1:5の株式分割を実施しています。貴金属リサイクル事業などを営むAREホールディングス(5857)は第3四半期の大幅減益決算がネガティブ視されて月初に大幅安となりましたが、29日には通期業績予想の下方修正も発表しています。
決算発表も手掛かりにランキングの変動多数
今回、新規にランクインしたのは、自動車向け金属部品などを製造するパイオラックス(5988)、ユニバーサルエンターテインメント(6425)、アステラス製薬(4503)、MCJ(6670)、セイノーホールディングス(9076)、INPEX(1605)の6銘柄で、除外されたのはPHCホールディングス(6523)、FPG(7148)、いすゞ自動車(7202)、SBIホールディングス(8473)、日本曹達(4041)、東ソー(4042)となっています。
決算発表が本格化したことで、ランキングの変動が大きくなっています。
パイオラックスは年間配当金を119円から128円に、MCJは34円から57円にそれぞれ引き上げると発表、配当利回り水準が高まることになりました。パイオラックスに関しては株価上昇で時価総額が基準に達したことも背景となります。
ユニバーサルエンターテインメントは株価急落で利回り水準が上昇しました。アステラス製薬、セイノーHD、INPEXなども株価下落で相対的に利回り水準が上昇しました。
一方、PHCHDはメリルリンチ日本証券が投資判断を売り推奨に格下げしたことで、コンセンサスレーティングが基準値未達となりました。FPGやSBIHDは株価が10%超の急伸となりランク外に。
FPGは第1四半期好決算が、SBIHDは株式市場の活況がそれぞれ上昇材料となりました。いすゞ自動車、日本曹達、東ソーなども相対的な株価上昇でランキングベスト15圏外となっています。
アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を上回っている銘柄としては、SANKYO(6417)、西松建設(1820)、大和工業(5444)、INPEX(1605)などが挙げられます。会社計画ベースでの配当利回りはSANKYOが4.68%、西松建設が3.81%、大和工業が3.59%、INPEXが3.78%となっています。
業績進捗(しんちょく)や配当性向から考えて、コンセンサス水準が各社ともに妥当とみられます。
一方、日本製鉄(5401)、セイノーHD(9076)はコンセンサス水準が会社計画を下回っています。会社計画は日本製鉄が4.31%、セイノーHDが4.72%となります。ともに第3四半期決算時に増配を発表しているため、こちらは会社計画が妥当といえるでしょう。
ユニバーサルエンターテインメント(6425)は会社側の配当計画が未定となっています。アナリストの配当予想は2023年12月期から40円増配となる80円となっていますが、今後の財務状況を勘案するとして、2023年12月期末配当は無配としたこともあり、80円配当にはやや不透明感が強いでしょう。
日銀政策修正で一時調整か、4月以降は悪材料出尽くしで反発も
史上最高値を更新した日経平均株価ですが、その後も一段高となり、4万円大台が一気に視野に入る状況となっています。2024年に入ってからの上昇ピッチの速さには過熱警戒感が強い中、4万円乗せに伴う達成感も今後は強まる可能性が高いとみられます。
日銀の金融政策決定会合が3月18~19日に開催されますが、足元の株高・円安を背景に、これまでの金融緩和政策が修正される公算も大きくなっていると考えます。為替相場の反転にもつながることで、いったんは新規投資に慎重な姿勢が必要とされる局面と判断します。
日銀の緩和政策修正が実際に行われること、2025年3月期の保守的なガイダンスが発表されることで、株式市場に悪材料出尽くし感が台頭するとみられる4月以降の相場に備えたいところです。
配当権利取りの動きも3月中旬には一巡するとみられることで、高配当利回り銘柄の物色も目先1カ月程度は沈静化するとみられます。とりわけ、今年は新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)初年度で配当権利取り妙味も高まったことから、権利落ち後の調整もやや大きくなると考えておくべきでしょう。
高配当利回り銘柄の中では目先、金融緩和政策修正でメリットを受ける銀行セクターなどに関心を絞りたいと考えます。