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著者の愛宕伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
2023年10~12月期実質GDP0.1%減の正しい見方と、それでも日銀がマイナス金利解除に踏み切る理由

 わが国の2023年10~12月期実質GDP(国内総生産)がインフレを背景に2四半期連続のマイナス成長となり、日本銀行の植田和男総裁が昨年5月の講演で述べていた、物価安定の目標の達成を「待つことのコスト」が顕在化しつつあります。

 とはいえ、景気が急に失速している感じもありません。いったい今回のGDPをどう評価すればいいのか。日銀のマイナス金利政策解除への影響と合わせ、分かりやすく整理します。

2023年10~12月期の実質GDPは前期比▲0.1%と2四半期連続のマイナス成長

 内閣府が15日発表した2023年10~12月期の実質GDPは、前期比▲0.1%(年率換算で前期比▲0.4%)と、7~9月期の同▲0.8%(同▲3.3%)に続き、2四半期連続のマイナス成長になりました。名目GDPは前期比0.3%(年率換算で前期比1.2%)とプラス成長でしたが、インフレが実質GDPを押し下げた格好です(インフレ率を示すGDPデフレーターは前期比0.4%上昇しています)。

 日銀の植田総裁は昨年5月に行った講演で、物価安定の目標の達成を「待つことのコスト」は大きくないと述べましたが、その「待つことのコスト」が顕在化しつつあるようにうかがわれます。この点については後ほど詳しく述べますが、その一方で、日本の実質GDPを見る場合、0.1%程度の前期比マイナスで一喜一憂すべきでないことも事実です。

 今回のGDP統計の中身を見る前に、まず日本の実質GDPを「前期比」で見る際の最大の留意点から述べておきたいと思います。これを理解しておかなければ、「またマイナス成長だ!」と、必要以上に大騒ぎすることになりかねません。必要なのはまず「己を知ること」です。