日経平均、史上最高値迫る

 2月に入っても日経平均株価の勢いは止まりません。1989年12月につけた日経平均の史上最高値(終値ベース)3万8,915円87銭(取引時間ベースの史上最高値は3万8,957円44銭)まで、あと1,000円と少しのところまで迫っています。

 日本株が上昇している背景として、海外投資家の買いや新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)による個人投資家の買いなどが指摘されていますが、「日本株の出遅れ」も強く意識されていると思います。少し「出遅れ」の背景をご説明します。

 日経平均はまだ1989年12月末につけた史上最高値に到達していませんが、米国の主要株価指数であるダウ工業株30種平均やS&P500種指数、ドイツのDAX、フランスのCAC40などは史上最高値をすでに更新しています。

 2023年4-12月期決算の日本の上場企業の純利益合計額は過去最高水準となる見通しです。つまり「日本企業は純利益が過去最高水準なのに、1989年12月の日経平均をまだ超えられていない→つまり日本株は出遅れている」

 というロジックです。

1989年「バブル期の株高」から得た教訓とは

 1989年につけた日経平均はバブル景気の象徴的な存在で、企業業績および今後期待できる成長以上に買われていました。どれだけ買われ過ぎていたか分かりやすい数字があります。

 足元の東証プライム市場の平均PER(株価収益率※))は16倍台ですが、1989年末の東証1部(プライム市場の前身)の平均PERは60倍台をつけていました。今の水準と比べると明らかに割高といえます。今期業績および今後期待できる成長以上の「何か」が加算されていたようです。

※PER…株価収益率。株価を一株あたりの純利益で割った数値で、PERが低いと割安、高いと割高であることを意味します。成長性が高かったり株主還元に積極的であればPERは高くなります。業種によって平均PERは異なりますが、大型株の平均はおおよそ15~16倍程です。

 仮に、1989年のPER60倍水準まで日経平均が買われた場合、現在の日経平均の4倍ですので約14万円となります。さすがに「それは…?」という水準ですよね。投資家のほとんどが過熱感に気付かず、「まだまだ上がる!だって上がっているから」というムードに陥ってしまうのがバブルの怖いところです。

 企業業績および今後期待できる成長以上の水準まで株価が上昇するのは、非常に夢のある話ですが、そもそも実態が伴っていないので遅かれ早かれ株価は是正の動きを見せます。つまり急落です。

 結果として、売却できなかった投資家は「塩漬け」という状況に陥り、自分が購入した過去の水準を回復することを祈り続けるわけです。「損切り」は非常に難しいですがとても大事なポイントですので、改めてお話したいと思います。

 ちなみに、1980年代後半、日経平均は企業業績および今後期待できる成長を大幅に上回る水準まで買われ、1990年の年明けから一気に急落しました。年明けに3万8,000円台だった日経平均は、3カ月後の4月2日には2万8,000円台と1万円下落し、同年10月には2万円台まで下落しました。これが「バブル崩壊」です。

田代くんの気になる5銘柄はコレ!

 さぁ、バブルのお話が少し長くなってしまいましたが、今回注目したいのは、バブルとは真逆の銘柄です。長年、企業努力を積み重ねてきた銘柄5選をピックアップしました。足元の株高とバブル期の株高では実態が異なりますが、相場の先行きは分からないもの。今だからこそ、地に足の着いた企業にスポットを当ててみます。

 企業努力と一言で表現してもさまざまな観点がありますが、今回は、株主還元意識が高い企業として「15期以上連続で増配している銘柄」を選びました。NISAがスタートしたのは2014年からですが、それよりも前から配当を意識していたような銘柄を改めて評価したい、というのが真意です。

 配当を増やし続けている企業は、株主と真摯(しんし)に向き合いつつ、しっかりとした業績を残している企業といえます。

15期以上連続で増配している銘柄【選定条件】
・15期以上連続で増配している企業
・配当利回り2.0%以上
・今期増収増益予想

銘柄名 証券コード 株価
(円)
(2月14日終値)
予想配当
利回り
(2月14日終値)
ポイント
アルフレッサHD 2784 2,276 3.03% 19期連続で増配する医薬品卸の持ち株会社
花王 4452 5,528 2.74% 35期連続で増配する世界を代表するトイレタリーメーカー
三菱HCキャピタル 8593 1,018 3.63% 24期連続で増配する大手総合リース会社
沖縄セルラー 9436 3,540 2.82% 21期連続で増配する沖縄基盤の電話会社
サンドラッグ 9989 4,341 2.62% 21期連続で増配するドラッグストアチェーン

アルフレッサHD(2784)

 同社は医薬品卸を手掛ける持ち株会社で、19期連続で増配を続けており、2024年3月期も増配の方針です。

 2023年4月に実施された薬価の中間年改定によるマイナス影響はあったものの、新型コロナウイルス感染症治療薬などの需要拡大を取り込んだほか、売上総利益率の改善が奏功し、2023年4-12月期は増収増益で着地しています。

 2024年3月見通しは増収、営業利益と経常利益は増益見込みですが、純利益は前期比3%減少の249億円を見込んでいます。ただ、2023年4-12月期純利益は208億円で進捗(しんちょく)率は83%に達していることから、通期純利益は上振れも期待できる状況です。

花王(4452)

 世界を代表する大手消費財化学メーカーで、日本企業では最長となる35期連続で増配しており、2024年12月期も増配の方針です。

 習近平(シー・ジンピン)体制の統率強化の影響で懸念材料とみられていた中国事業は、紙おむつ生産を昨年8月で終了するなど事業の見直しを進めました。

 2023年12月期業績は減収減益での着地となりましたが、構造改革の推進や国内トイレタリー事業の拡大により、2024年12月期の業績は増収増益を見込んでいます。

三菱HCキャピタル(8593)

 主にリース・レンタル事業を手掛けているほか、環境関連サービスや不動産関連サービスなども展開している大手総合リース会社です。2024年2月1日に、三菱UFJリースが日立キャピタルと経営統合したことから、三菱HCキャピタルに社名が変更となりました。

 24期連続で増配しており、2024年3月期も増配の方針です。

 2023年4-12月期の純利益は、前年同期比53億円減益の805億円で着地しました。通期業績予想(純利益1,200億円)に対する進捗は67.2%ですが、海上コンテナや鉄道貨車などのリースを手掛けるロジスティクス事業が期初計画比で好調であることに加え、航空機リースなど航空事業の利益計上は下期偏重のため、期初計画比でも上振れの着地を見込んでいます。

 さらに、不動産ファイナンスや再生可能エネルギー発電事業などでも利益計上を見込み、通期業績予想は変更なしとしています。

沖縄セルラー(9436)

 社名の通り沖縄を基盤に電話事業などを手掛けています。21年連続で増配しており、2024年3月期も増配予想を打ち出しています。

 2023年4-12月期営業収益はKDDIグループの「auでんき」の売り上げが減少しているものの、ARPU(1契約当たりの月間平均収入)や端末販売の増加により増収、営業利益も増益となりました。

 決して派手さはないものの、堅実な業績を背景とした連続増配は注目に値する内容と考えます。

サンドラッグ(9989)

 ドラッグストアチェーン「サンドラッグ」を全国展開しており、21期連続で増配しており、2024年3月期も増配予想を打ち出しています。

 新型コロナウイルス感染症の位置付けが「5類感染症」に移行し、行動規制などの緩和によりインバウンド(訪日外国人)需要が緩やかに回復するとみて、昨年11月に2024年3月期業績見通しを上方修正しました。

 ドラッグストアはインバウンド需要を取り込みやすい業態のため、追い風の地合いは続くと想定されます。