米利下げ時期めぐる市場観測は後ろ倒しに

 円安ドル高の要因は米国材料もあります。米国の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長らから市場の早期利下げ期待をけん制する発言が相次ぎました。足元の米経済指標や米企業の四半期決算も良かったことから米株は高値を更新し、ドルも上昇しました。

 ただ、2022年のCPI年次改定が大幅改定されたことから2023年の年次改定が注目されていましたが、小幅改定だったことや13日公表の1月CPIも上昇率が鈍化するとの予想だったことから、金利は上昇一服から低下気味となったため、1ドル=149円台で足踏みしていました。

 ところが、13日公表の米国1月CPIの上昇率が前月比0.3%、前年同月比3.1%と予想を上回ったため、米10年債利回りは急上昇し、3カ月ぶりの1ドル=150円台になりました。

 ただ、CPIは予想を上回りましたが、前年同月比で鈍化傾向(12月3.4%→1月3.1%)を示したことから、米国の利下げ期待は大きく後退していません。3月利下げ期待はすでに後退し、市場の5月利下げ確率は、CPI発表前は五分五分でしたが、CPI発表後は40%以下に低下しました。

 そして6月利下げ確率は50%を超えています。市場の利下げ時期の見方は3月→5月→6月と徐々に後倒しになってきています。

 パウエル議長は今年の利下げは適切だと述べています。市場の利下げ期待も維持されていますが、年初の年6回利下げ期待から年4回の利下げ期待へとなってきており、FRBの年3回の見通しに近づいてきています。

 市場は今回のCPIの動きをインフレ再燃とまではまだみていませんが、この先のCPIも上昇が続けば、利下げ時期はさらに後ろ倒しになることが予想され、場合によっては利下げ回数が減っていく可能性があります。

米インフレ鎮静化せず高金利続けば実体経済や株式相場に悪影響

 一方で、利下げ時期が後ろ倒しになればなるほど、金利高止まり期間が長くなり、その悪影響をより警戒する必要があります。

 1月末にみられた米国の地方銀行経営不安が再燃したように、金利高止まりによる時間差の悪影響が商業用不動産を抱える地域金融機関だけでなく、中小企業、個人の住宅ローンや自動車ローン、カードローンに及ぶのかどうか一層注視する必要があります。

 AI(人工知能)バブルで高値を更新している株式市場、その恩恵を受けている日本の株式市場もその動きに対して警戒モードが高まってくるかもしれません。

 ドル相場は3カ月ぶりに1ドル=150円を超えてきましたが、日本当局の円安けん制が強まるとともに為替介入への警戒感が高まることが予想されます。日本政府の為替政策の実務を取り仕切る神田真人財務官が14日朝、記者団の取材に最近の円安の動きがかなり急速だとの認識を示した上で「必要があれば最も適切な対応を取る」と述べました。

 また、米金利高止まりの長期化から、これまでの150円超の世界とは違う動きになるかもしれません。一段の円安が進むのか、介入警戒と高金利長期化の影響を警戒し、150円に乗せても足踏みするのかどうか注目したいと思います。