怒涛(どとう)の一月相場が終わり、2月相場がスタートします。新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートしましたが、この日本株の流れに乗り遅れている人は多いのではないでしょうか。購入を検討していた銘柄が、あれよあれよ、と上昇してしまい、「下がってきたら買おう」と心に決めたものの、「下がらないので買えない」というパターンも多いかと思います。

 ご安心ください。こうした上昇にも「流れ」がありますし、対象とする銘柄の範囲を少しだけ広げると投資の世界は広がってきます。少しだけご説明しますのでお付き合いください。

1月、半導体株が上昇した理由

 まずは1月相場を振り返ってみましょう。

 1月第二週ごろから、自動制御機器などの開発を手掛けるキーエンス(6861)や日本を代表するテクノロジー会社のソニーグループ(6758)など東証プライム市場の時価総額が大きい銘柄が上昇しました。特にTOPIX (東証株価指数)​コア30銘柄※の上昇が目立ちました。

 また、世界的な半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン(8035)など半導体株も集中的に買われる相場展開となりました。

※TOPIXコア30銘柄…東京証券取引所のプライム市場全銘柄のうち、時価総額や流動性の特に高い30銘柄で構成されています。全ての銘柄が世界的な一流企業で、年に一回(10月)見直しが行われています。

 2024年1月31日時点では、上記のキーエンス、ソニーグループ、東京エレクトロンのほか、世界的なモーター企業のニデック(6594)、製薬最大手の武田薬品工業(4502)などが含まれます。

 半導体株が上昇した背景は、米国などの半導体メーカーの好調な決算見通しなども材料視されましたが、こうした銘柄が上昇した背景には、外国人投資家による買いがあると思われます。

 外国人投資家が日本株を一気に買った理由はさまざまですが、主に3つが挙げられます。

(1)世界的に日本株が出遅れていた
欧米主要指数は史上最高値を更新しているが、日本はまだ届かない

(2)アジアに投資するポジションのリバランスを行った
先行き不透明な中国株の割合を減らして日本株の割合を高めた

(3)東京証券取引所の「企業統治」強化を再評価
東証が「PBR(株価純資産倍率)改善取り組み企業」を公開したことや、2025年3月期からプライム市場上場1600社に決算情報などの英字開示を義務付けたことを評価した

 東京証券取引所が発表した1月第2週目(9~12日)の投資部門別売買動向では、海外投資家の現物は9,557億円の買い越し、先物も4,895億円の大幅買い越しとなりました。CTAといわれる商品先物系による先物売買が上昇の主体ではなく、現物の日本株を購入する、いわゆる「実需の買い」と思われる投資資金が東京市場に流入したと考えます。

 外国人投資家が日本株のポジションを積み上げる際、

  1. 日経225先物を購入する
  2. TOPIXコア30銘柄を購入する

 この2パターンが多いといわれています。もちろん、TOPIX先物を購入する外国人投資家もいるでしょうし、日経平均株価採用銘柄をまんべんなく購入するケースもあるでしょう。この1.と2.は2010年代以降の外国人投資家が日本株を購入した際の多いパターンでした。このパターンに合わせますと、今回は2.なのかもしれません。

今後の日本株の展開は?

 では、このままぐいぐい日経平均が上がっていくのでしょうか? 私は「No」だと考えています。1980年代のバブルであれば「実体のない上昇」なので日経平均など指数が上がっていくこともあったでしょう。

 ただ、今の日本株の上昇は、企業の業績、東京証券取引所の企業統治強化、NISAによる個人投資家の投資資金流入などのたまものです。決して「実体のない上昇」ではありませんので、日経平均など指数だけが上がっていくことはないと思っています。

 日経平均が短期的に上がった際、「足元上昇していた銘柄に利益確定の売りが出て、その売却代金が出遅れている銘柄に向かう」。この循環が続くと想定しています。

 どれだけの期間、続くのかは企業業績や外部環境を考慮する必要がありますので軽はずみには言えませんが、少なくとも2024年の企業業績も堅調である、という点はすでに予想されていますので、この1年はこの循環が続くと考えます。

これからNISAで買うなら、「出遅れ」中小型×高配当銘柄

 そして、外国人投資家が買う銘柄と個人投資家がNISAを通じて購入する銘柄はやや異なります。例えばNISAの成長投資枠には年間240万円という上限が存在しますので、空気圧制御機器メーカーのSMC(6273)キーエンス(6861)など「値がさ」といわれる購入代金が高い銘柄はNISAの成長投資枠では購入できません。

 絶対ではありませんが、こうした値がさ株やTOPIXコア30銘柄が上昇しているときは「外国人投資家の買い」が入っていると考えてもいいと思います。

 では、こうした銘柄に利益確定売りが入った後に物色される銘柄は、どのような銘柄でしょう。高配当銘柄のトヨタ自動車(7203)三菱商事(8058)は、TOPIXコア30銘柄に含まれていますので、既に外国人投資家の買いが入っています。

 また、グロース市場は東証の「企業統治」の強化がこれからスタートしますので、グロース市場全体が盛り上がるのはもう少し先でしょう。

 つまり外国人投資家の買いが入っていないプライム市場もしくはスタンダード市場の高配当銘柄がポイントになると考えます。NISA資金がまだ入っていないような時価総額が小さい銘柄、「出遅れている中小型高配当銘柄」をイメージしてはいかがでしょうか?

田代くんの気になる5銘柄はコレ!

 そこで、今回は、プライム市場の銘柄で知名度はまだ低く、安定した高配当を出し続けている企業を5社ご紹介します。スタンダード市場は次の機会にご紹介します。

出遅れ中小型×高配当銘柄【選定条件】
・時価総額が300億円以上700億円以下
・直近5年間で減配をしていない
・直近5年間で配当予想の下方修正を行っていない
・直近5年間で1株利益が配当を下回ってない

※今期予想配当は含めていません。

銘柄名 証券コード 株価(円)
(2月1日
終値)
予想配当
利回り
ポイント
大倉工業 4221 2,917 3.77% 2023年12月期の各利益予想を上方修正
IDホールディングス 4709 1,649 3.03% DX関連ビジネスの広がりが追い風に
日精エー・エス・
ビー機械
6284 4,250 2.82% プラスチック容器の販売が好調
プロネクサス 7893 1,312 2.74% 東証による上場企業の情報開示義務付けが追い風に
ステップ 9795 2,017 3.67% 2023年9月期に配当性向を引き上げ、大幅増配
※予想配当利回りは今期配当予想と2月1日終値で計算。

大倉工業(4221)

 各種ポリエチレン製品やポリプロピレン製品の製造販売などを手掛ける香川県の会社です。自動車関連フィルムのほか、トレイ食料品フィルムのエコラップなどを製造しているので、実は身近な会社です。

 このほど、2023年12月期業績予想の修正を発表。売上高は合成樹脂事業の販売減により前回予想を下回る見通し。各利益は大型液晶パネル向け光学フィルムの受注増などが奏功し、前回予想を上回る見通し。業績が好調に推移していることから、2023年12月期の配当は前回予想から15円増配し、年110円の方針。

【直近5年間の年間配当】

2018年12月期 2019年12月期 2020年12月期 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期予想
55円 55円 60円 85円 85円 110円

IDホールディングス(4709)

 独立系のSIer(エスアイヤー、システム開発において全ての工程を請け負う受託開発企業のこと)です。大手ITベンダーとの協業による積極的な営業活動の推進と、クラウドやサイバーセキュリティなどの先端技術を活用したDX(デジタル・トランスフォーメーション)関連ビジネスの広がりにより取引が拡大しています。

 2023年1~6月期は増収増益と好調に推移しています。

2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期予想
40円 50円 50円 40円(60円) 45円(67.5円) 50円(75円)
※2021年7月1日、1株を1.5株に株式分割を実施した。()内は株式分割前に換算した実質の配当金額

日精エー・エス・ビー機械(6284)

 ペットボトルをはじめとするプラスチック容器成形機のトップメーカーです。2023年9月期売上高はプラスチック容器の販売が好調で前期比14.9%増と堅調に推移しましたが、為替差損などが影響して経常利益、純利益は減益での着地となりました。2024年9月期の売上高、各利益は増収増益を見込んでいます。

2019年9月期 2020年9月期 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期予想
60円 60円 100円 100円 120円 120円

プロネクサス(7893)

 上場企業の開示情報などの支援を行っています。東証が、プライム市場上場1,600社に決算情報などの英字開示を義務付けると発表したことから、同社にはポジティブなニュースと捉えられて大幅高となりました。同社の業績にどれだけ寄与するかはまだ分かりませんが、今後の同社の説明会資料などには注目です。

2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期予想
30円 30円 33円 35円 36円 36円

ステップ(9795)

 神奈川県を地盤に学習塾を展開しています。2023年10月~2024年3月期の各利益は設備や人材への投資費用増加により減益の見通し。2024年9月期売上高、各利益は増収増益を見込んでいます。

 2023年9月期から配当性向※の目安を50%に引き上げたことで大幅な増配となりました。

2019年9月期 2020年9月期 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期予想
38円 40円 45円 46円 72円 74円

※配当性向…当期純利益から配当に回した割合です。この数値に企業の配当に対する姿勢が見えてきます。一般的に成長企業(グロース企業)は配当性向を低く、成熟企業(時価総額が大きい企業や安定成長企業)は高く設定する傾向があります。