今回は、東証グロース市場の優良スター株として、時価総額が大きく、これから海外投資家が注目しそうな5銘柄を紹介します。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠で長期投資を検討していて、ゆっくり読む時間が無いお忙しい方は一番下にある銘柄一覧をご覧ください。お時間が取れる方はぜひロジックをお読みいただければと思います。

出遅れた日本株と米国「マグニフィセント7」の差

 2024年1月、日経平均株価は連日バブル後の高値を更新する強い相場展開となっています。「1990年2月以来の高値…」といわれても、ここ数年でNISAなどを通じて株式投資を始めた方々は「なんのこっちゃ?」でしょう。

 日本株は今、「失われた30年」を取り戻そうとしていますが、その起点となったのが「バブル崩壊」です。1980年代後半にバブルが発生し、1990年代前半で崩壊した経緯などは別の機会に語りますが、日本株はようやく30数年前の株価水準に戻りつつあります。

 史上最高値を更新し右肩上がりで成長している米国株や欧州株と比べると、日本株はいまだ過去のバブルの亡霊を追いかけている状況。「日本株が世界的に出遅れている」という意味は、お分かりいただけると思います。

 米国株市場では、パフォーマンス良好なメガテック株を「マグニフィセント7」といいます。直訳しますと「雄大な7銘柄」ですが、これは、黒澤明監督の「七人の侍」をリメイクした映画のタイトルです。

 マグニフィセント7は、GAFAMといわれていた、アルファベット(グーグル[GOOGLGOOG])、アップル(AAPL)メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック[META])アマゾン・ドット・コム(AMZN)マイクロソフト(MSFT)の5銘柄に、テスラ(TSLA)エヌビディア(NVDA)の2銘柄を足した7銘柄です。

 この7銘柄の2023年純利益の合計は3,000億ドルに達するといわれています。1ドル140円で計算すると42兆円です。売上高ではなく純利益の話ですので桁違いですよね。

 日本企業の過去最高純利益は、ソフトバンクグループ(9984)が、2021年3月期決算で出した4兆9,879億円です。この数字を7倍しても、マグニフィセント7には届きません。それだけ圧倒的な業績の差が、日本企業と海外企業には存在します。

「日本版マグニフィセント7」は誕生しないのか?

 日本株が世界的に出遅れている背景は、多々あると思いますが、一番の要因は「制度」的なものと思います。

 既得権益やしがらみにとらわれた岩盤規制、硬直化した法令など、イノベーションが生まれにくい現在の環境から考えると、「日本版マグニフィセント7」の誕生を期待するのは、なかなか難しいことであると考えます。

 もちろん、日本でもイノベーションが生まれるための土壌づくりは進んでいます。1990年代の「金融ビッグバン」によって株の売買手数料が一律ではなくなり、2000年代の「金融再生プログラム」と「郵政民営化」、2010年代の「世界初の暗号資産(当時は仮想通貨)の法制化」など、長い歴史のなか、段階を踏んで環境は改善されつつありますが、まだ道半ばといえます。

 少し米国の事例をご紹介します。米国のIPO(新規上場)はほとんどが機関投資家、つまりプロ投資家が保有したまま上場します。超富裕層が保有するケースもありますが、個人投資家が手にするのは上場後のセカンダリーマーケット(流通市場)がほとんどですので、有名企業のセカンダリーマーケットは盛り上がります。

 結果として日本のIPOのように「上場ゴール」となるケースが少ないのです。

 このように、制度上の違いによって、日本はマグニフィセント7が誕生しにくいのです。

東証の改革が、日本株の景色を変える?

 ただ、昨年は大きな動きが見られました。2023年3月に東京証券取引所が上場企業に要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」です。私は、この施策には日本株の景色を大きく変える力があると考えます。

 事実、東証の発表を受け、海外の投資家は4月から日本株を買い始めました。2024年1月、東証プライム市場の時価総額が大きい「TOPIXコア30銘柄」を中心とした上昇も海外投資家の買いとみられています。2024年、日経平均が史上最高値を更新する上で、こうした海外投資家の存在は欠かせないものとなっています。

2024年、「東証グロース市場の時価総額が大きい銘柄」に注目する理由

 長々と書いていますが、私は、2024年、海外投資家の目が新たに向かう対象に、東証グロース市場の時価総額が大きい銘柄が入るのではないかと考えています。

 その背景には、東証が「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の中で推し進める、グロース市場の機能活性化策があります。

 東証が2023年12月18日に発表した具体的な施策の中で、私が特に注目するのは「投資者への積極的な情報発信の促進」と「機関投資家への情報発信の支援」です。発表資料からは、「積極的なIRを行い、新たな投資家を呼び込む施策を東証もサポートする」と読み取れます。

 昨年、東証が行った「企業統治(コーポレートガバナンス)強化」の一環を、今後東証グロース市場を対象にも実施していく、と読み取れる内容ですので、東証グロース市場に海外投資家などの新しい投資資金が入る可能性があります。もちろん東証が音頭を取ってさまざまな施策を進めることが前提となっています。

 上場して間もない企業に、こうした資金が流入することによって、長期的な成長を楽しむことができるでしょう。マグニフィセント7も、若い企業が多く名を連ねています。

 各企業の創業年を若い順に並べると、2004年メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、2003年テスラ、1998年アルファベット(グーグル)の前身であるグーグル、1993年アマゾン・ドット・コムとエヌビディア、1976年アップル、1975年マイクロソフト。創業50年を経過している企業はゼロです。

 米国はしっかりとした業績を積み上げる老舗企業も多くありますが、こうした若い企業がイノベーションの先駆者として生まれる土壌もできあがっているのです。その分、競争や淘汰(とうた)、新陳代謝も早く、見事な競争社会が企業の成長を促しています。

 東証が進める企業統治強化の一環は、企業の長期的な成長の一端を担う施策であると考えます。2024年に始まった新NISAは非課税で運用できる期間が無期限になり、長期投資が可能。成長投資枠でこうした銘柄に投資し、今後の企業成長に期待するのは、面白い戦略といえるでしょう。

田代くんの気になる5銘柄はコレ!

 そこで、今回は、東証グロース市場で時価総額が大きく、これから海外投資家が注目しそうな5銘柄を選びました。

【選定条件】
・「東証グロースCore指数20」に採用されている
・最新の有価証券報告書にて、海外投資家の割合が約10%以下

銘柄名 証券コード

株価(円)
(1月17日終値)

海外投資家率
(最新有価証券報告書、外国法人と外国個人を合算)
ポイント
セーフィー 4375 704 7.96% 建設、物流業界が直面する2024年問題の解決を担う
カバー 5253 2,570 5.96% 2023年VTuberランキングでは同社所属のVTuberが1位
アドベンチャー 6030 5,090 10.52% 海外旅行関連は円高メリット銘柄
サンウェルズ 9229 2,251 9.90% パーキンソン病専門施設「PDハウス」を拡大中
ispace 9348 1,136 6.25% 国策の宇宙事業で月に挑む

東証グロース市場Core指数は、東証グロース市場に上場する日本企業のうち、上場時価総額、流動性を考慮して選定する20銘柄により構成される指数です。市場の実態をより的確に反映するため、構成銘柄の定期入替を毎年1回(10月)に行っています。2023年12月14日に東証グロース市場で時価総額トップだったビジョナル(4194)が東証プライム市場に移行したことから、現在は19銘柄で構成されています。

セーフィー(4375)

 クラウド録画型映像プラットフォーム「Safie(セーフィー)」の開発・運営および関連サービスの提供を行っています。建設業界や物流業界では、時間外労働の上限規制でドライバー不足が懸念される「2024年問題」が今年4月に迫っています。

 同社のプラットフォームサービスは、映像を活用した遠隔業務で現場への移動時間やコストを削減するデジタルトランスフォーメーション(DX)を促すもので、需要拡大が見込まれます。

カバー(5253)

 VTuber事務所「ホロライブプロダクション」の運営や、メタバースなどバーチャル領域のビジネスを展開しています。ライセンス事業やグッズ販売などが好調に推移しているほか、2023年で最も「投げ銭」を集めたVTuberランキング(韓国企業発表)では、同社事務所所属の「博衣こより」さんがトップとなりました。

アドベンチャー(6030)

 格安航空券予約サイト「スカイチケット」を運営しています。為替市場で円安が進行したことから、海外旅行に行く日本人の伸び悩みが業績の下押し要因でしたが、円安一服を受けて、足元で見直す動きが強まっています。2024年は日米金利差縮小の思惑から円高ドル安が進むとの声が多いことから、円高メリット銘柄の一角として注目します。

サンウェルズ(9229)

 パーキンソン病専門施設「PDハウス」をはじめとした事業を展開。医療・介護を中心とした社会課題の解決を目指しています。

 2023年9月20日に公表した2023年4-9月期決算は、売上高、各利益全て上方修正。同時に発表した中期経営計画では、2026年3月期のPDハウスの定員数を2,860名から3,150名に、施設数を53施設から58施設にそれぞれ上方修正しました。2030年3月期までに定員数7,000名・施設数140施設を計画するなど事業拡大を見込んでいます。

ispace(9348)

 宇宙事業を手掛けており、経済産業省が行った「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)」の枠組みにおいて、最大120億円が交付されることが決まりました。同社の宇宙事業は決して「夢」で終わるものではなく、その実現に向けて国が支援していることから注目します。