SNSでよく見かける「おはぎゃあ」投稿

「おはぎゃあ」という言葉、知らない人はまったく知らない、知っている人はよく知っている不思議な言葉です。

 主にSNSの投資系アカウントで用いられます。逆に、きちんとしたメディア(校正が入るような媒体)では、まず使われない言葉でしょう。

 意味は、朝起きて投資状況をチェックしてみたら、絶叫するほどの下落が起きており、大きな損失が生じていた、という意味合いです。つまり「おはよう」と「ぎゃあ」を組み合わせた略語というわけです。

 朝のSNSでは、自分の含み損をスクリーンショットして、画像付きの投稿をする「おはぎゃあ」が散見されます。

 最近では、直接フォローしていない人の投稿がサジェストされることもあるので、私の目にも「おはぎゃあ」が届きます。

何がそこまで驚くべきことなのか

「おはぎゃあ」は、特に米国株式市場が大きく下落したか、為替レートが大きく振れた場合の、朝の風物詩のようなものです(日中に動く国内株式市場では朝の絶叫とならないため)。

 そこでは、企業や国の金利政策への恨み言が連ねられていたり、資産の全損に近いダメージであると悲痛な声が書かれていたりすることもあります。

 この場合、まあ損失が大きくて叫んでいるのだろうということは分かりますが、そのポジション取りがおかしかったのではないかとも思います。例えば、一夜にして追証を求められる為替のポジションはそもそもおかしい設定でしょう。

 あるいは、何をそんなに驚くほどのことだろうか、という「おはぎゃあ」投稿もあります。2~3%くらいの下落で絶叫しているような投稿です。

 こちらはこちらで、投資経験の浅さが絶叫を招いていることが分かります。そのくらいの騰落はあり得るべきだということを理解できなかったのでしょうし、数日で回復する可能性もまだピンとこないがゆえに絶叫をSNSに投下しているのでしょう。

おはぎゃあ対策は2つ(3つあるが3つ目は除外)

 とはいえ、投資の値下がりが怖い、という個人投資家、特に初心者の悩みは分かります。あなたがもし、「おはぎゃあ」を卒業してステップアップしていきたいのであれば、取れる選択肢は3つほどあります。

対策1:投資金額を小さくする

 もっとも重要で効果的な対策は、投資金額を小さくすることです。100万円を初心者がいきなり投下し、5万円の含み損で絶叫しているとしたら、1日で5%の下落に心理的に耐えられなかったということです。

 我々はもうけの可能性のほうばかりを考えるので投資資金を多くしがちです。しかし市場の騰落率(特に下落時)は変えられませんから、個人として投資金額を調整すれば、金額としての衝撃を小さくできます。

 例えば投資金額が10万円であれば、5%の下落の金額ベースでのインパクトは5,000円にダウンし、絶叫せずにすみます。

 自分が下落時に絶叫しなくてすむような「投資金額」に設定することが「おはぎゃあ」回避の第一の対策です。

対策2:集中投資を避ける

 もうひとつは投資の集中です。為替は基本的に1つの値動きにのみ集中投資をしています(レバレッジもかけているのでリスクを極大化している)。だから、変動割合も大きくなり、絶叫を招きます。為替取引を避ければ朝のパニックはなくなります。

 個別株も好調時はすいすい値上がりするものの、しばしば一人負けのような下落が生じることもあります(業績好調であっても、短期的なポジション調整の下落はよくある)。

 翌朝の株価が気になって、起床時にはすぐログインするような人はその集中投資のポジションを調整するほうがいいでしょう。もう少し分散投資をするべきです。

 投資信託を買うだけで、投資銘柄数は大きく増えます。国内への株式投資と、海外への株式投資を組み合わせるか、オールカントリーで投資をするだけで値動きの荒さはマイルドになります。それでも恐怖がある人は対策1に戻って投資金額を調整してみてください。

対策3……は用いない

 3つ目の対策としては「宵越ししない」というものもあります。当日中に手じまいして投資資金をとにかく現金化してから寝ることにすれば「おはぎゃあ」が生じなくなります。

 特に短期投資家や為替取引をする人は、自分が寝ている間の値動きのリスクは取りたくないという考え方が強いようです。

 とはいえ、これを選択すると、中長期的な資産形成のために少額からの積み立てを継続するようなアプローチが取れなくなります。投資の売買負担も大きくなります。

 従って、基本的には「宵越ししない」の対策以外で対応したいところです。

毎朝、資産状況をチェックしなくてもいいくらいの投資スタンスで行こう

 結論として言えば、「おはぎゃあ」するということはリスクを取り過ぎということになります。短期的に値下がりしたとしても、「おはぎゃあ」しなくてもいいくらいの投資をすればいい、というだけの話です。

 ある程度、経験によって得られる耐性を身につけることは大切ですが、そのためには最初は少額で慣れていくしかありません。

 マーケットの動きをコントロールすることは個人に不可能でも、自分の投資方針をコントロールすることは個人が可能なことです。

 毎朝、資産状況のチェックをしなくてもいいくらいの投資スタンスが、個人にはちょうどいいと思います。

 あなたに家族がいたり、自分の好きなことのための時間を確保したかったり、仕事にも業務時間は集中して取り組めるようにしたかったりするならば、高すぎるリスクテイクは避けておくべきです。

 明日の朝、気持ちよく起きられるように、今日いくつかの注文を出して、自分の投資のあり方をちょっと修正してみてはいかがでしょうか。