2024年の本格的なスタートとなった1月第2週(9日(火)~12日(金))の日本株は目を見張るような急上昇で幕を開けました。

 日経平均株価(225種)の12日(金)終値は、実に前週末比2,199円(6.6%)高となる3万5,577円となり、1990年2月以来、33年11カ月ぶりの高値まで上昇。

 1989年の年末につけた3万8,915円の史上最高値に、あと3,338円まで肉薄しました。

 急上昇の原動力は米国市場でハイテク株主体のナスダック総合指数が前週末比3.1%上昇したことを受けて、2023年も絶好調だった日本の半導体株が勢いよく続伸したこと。

 年初の為替相場も波乱のない展開で、東京外国為替市場では2024年の初取引だった4日(木)始値の1ドル=143円24銭から、12日(金)終値145円22銭まで、緩やかな円安が続いたことも自動車株など外需株にとって追い風でした。

 次世代ゲーム機の発売が期待される任天堂(7974)が前週末比12.5%高で上昇来高値を更新するなど、株価上昇に大量の資金流入が必要な値がさ株中心の上昇だったことから、外国人投資家が年初早々、大挙して日本株を買ってきたことが、株高の原動力になったと見て間違いないでしょう。

 一方、米国では物価指標が再上昇したこともあって金利が上昇。

 機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週末比1.84%の上昇にとどまるなど、米国株に比べて日本株の躍進ぶりが際立つ1週間でした。

 週末13日(土)には台湾総統選で親米派の民進党・頼清徳氏が新総統に選出されるなど、台湾を巡る米中の政治、軍事、経済的な対立後も続きそうです。

 今週は米国で景気関連の指標発表が相次ぐほか、米国企業の2023年10-12月期決算の発表も材料視されそうです。

 週明け15日(月)の東京株式市場の日経平均株価終値は前週末比324円高の3万5,901円でした。午後の取引時間中に一時3万6,000円台を付け、バブル期の1990年2月以来およそ33年11カ月ぶりの高値となりました。ただ、日経平均は今年に入って急騰してきただけに、利益確定売りによる急落にも注意したいところです。

 

先週:ファストリや値がさ半導体株が絶好調!緩やかな円安で外需株も堅調! 

 2024年1月4日(木)の大発会は下げたものの、日経平均は5日(金)から5連騰。

 10日(水)は前日比678円高、11日(木)は608円高、12日(金)は527円高と3日間で1,813円も急騰するなど、見事なスタートダッシュに成功しました。

 11日(木)に2023年9-11月の四半期営業利益が前年同期比25.3%増だったことを発表したファーストリテイリング(9983)は前週末比12.9%高と大幅上昇。

 半導体製造装置の国内最大手・東京エレクトロン(8035)も8.8%高で上場来高値を更新。

 この2銘柄のように日経平均に大きな影響を与える値がさ株やハイテク株の目覚ましい上昇が全体相場のけん引役になりました。

 値がさ株が上昇するには、資金量が豊富な外国人投資家による大規模な買いが欠かせません。

 東京証券取引所が発表した1月第1週(1月4日(木)~5日(金))の投資部門別売買状況では、外国人投資家が2週ぶりに現物株を1,405億円買い越し。

 先物取引では2,535億円の売り越しで、トータルではマイナスでした。

 しかし、先週(1月9日(火)~12日(金))は外国人投資家が大規模な買い越しに転じたことが、株価の急騰劇につながったと思われます。

 2023年12月の年末には1ドル=140円台まで円高が進みましたが、2024年に入ってからは米国の金利上昇もあって、11日(木)に一時1ドル=146円台をつけるなど、円安が進行。

 トヨタ自動車(7203)の12日(金)終値が2023年末の終値から9.5%高となるなど、円安が海外収益の拡大につながる自動車株など外需株も堅調でした。

 ただ、12日(金)は株価指数の先物取引やオプション取引を決済するための清算価格「SQ(特別清算指数)値」が決まる日でしたが、前場寄り付き直後に決まった日経平均のSQ値は3万6,025円まで上昇。

 その後、一度も現物の日経平均がその高値に届かない「幻のSQ」といわれる状況が発生しました。

「幻のSQ」は相場の上昇を阻む壁といわれることから、今週も一直線で上昇が続くかどうかはまだ分からない面もあります。

 特に半導体切断・研磨装置大手のディスコ(6146)が前週末比10.4%高するなど、半導体関連株の多くは業績に比べて株価があまりにも割高になっている銘柄も多いため、少し警戒が必要かもしれません。

 一方、米国では、5日(金)発表の12月雇用統計で12月の非農業部門新規雇用者数が前月比21.6万人増、平均時給が前月比0.4%増といずれも予想を上回りました。

 また11日(木)発表の12月CPI(消費者物価指数)は前年同月比3.4%の上昇と11月の3.1%増から伸びが再加速。

 翌12日(金)発表の12月PPI(卸売物価指数)は前月比0.1%の下落と予想を下回ったものの、総じて景気・雇用指標が堅調で物価の高止まりが続きました。

 そのため、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が2024年3月にも利下げを開始するという楽観論が後退。

 S&P500が2022年1月に付けた終値ベースの最高値4,796.56ポイントを目前に、なかなか上抜けられない理由になりました。

 12日(金)からは米国企業の2023年10-12月期決算の発表もスタート。

 銀行最大手のJPモルガン・チェース(JPM)は2023年1年間の純利益が過去最高となったものの、材料出尽くしで株価は前日比0.73%安で終わりました。

 日本株では、多くの半導体関連株が属する精密機器、電気機器、機械セクターが業種別上昇率ランキングの上位に入るなど、ハイテク株優勢の相場展開でした。

 11日(木)には、紅海で航行するタンカー船への攻撃を行うイエメンの反政府勢力フーシ派の拠点に米国・英国の両軍が空爆を仕掛け、地政学的リスクが台頭。

 ただ、中東情勢が緊迫化したことで原油価格が再上昇し、世界中に原油・天然ガスの権益を持つINPEX(1605)が12日(金)に前日比2.7%高となるなど、資源株の株価も上昇に転じています。

今週:米小売売上高や米銀決算が順当なら続伸!?東証のPBR改革に期待!

 今週は15日(月)の米国市場が祝日で休場となるため、おだやかな出だしになりそうです。

 今週発表される経済指標では、16日(火)の米国ニューヨーク連邦準備銀行1月製造業景気指数、17日(水)の米国12月小売売上高、18日(木)の米国12月住宅着工件数、19日(金)のミシガン大学の1月消費者態度指数の速報値などが注目されそうです。

 また、2023年10-12月期の米国企業の決算では、16日(火)のモルガン・スタンレー(MS)ゴールドマン・サックス(GS)など、米国の金融機関の決算発表が相次ぎます。

 高金利が長期化したことで、米国では金融機関が抱える不良債権比率が増加しているといわれています。

 そのため、2024年に見込まれる利下げが業績にとって逆風となる米国金融機関の決算発表に対して、投資家がどんな反応をするかが注目されます。

 国内では、東京証券取引所が15日(月)、資本収益性や市場評価の改善に向けた対応を開示している企業リストを公表する予定です。

 東証は昨年3月末に、プライム市場とスタンダード市場に上場する企業約3,300社に対して、資本コストや株価を意識した経営を要請しました。

 この要請を受けてPBR(株価純資産倍率:1株あたりの純資産に対して株価が何倍かを示す)が会社の解散価値とされる1倍を割れ込む企業など多くが増配や自社株買いなど株価を上げるための株主還元策を積極化したことが、2023年4月以降、日本株が大きく上昇した原動力になりました。

 今後は毎月更新されるPBR改善対策を開示した企業リストに掲載された企業や、そのリストに掲載されるために新たな株主還元策の導入を発表した企業に対する買いが見込めるでしょう。

「PBR改革2.0」ともいわれる東証の株価対策は、日本株上昇の力強い下支え役になりそうです。

 そういう意味で、先週の日本株急騰は、外国人投資家が「2024年は東証の市場改革もあって、日本株が大きく上昇する年」と位置づけ、本格的に資金を流入させる前兆ととらえることもできます。

 実際、日経平均採用銘柄の今期の予想利益を元にしたPER(株価収益率:株価が1株当たり純利益の何倍まで買われているかを示した指標)は12日(金)時点で15.63倍。

 PERが20倍を超えているS&P500などに比べてかなり割安です。

 そのため、トヨタ自動車やソニーグループ(6758)など、外国人投資家が好む、時価総額の大きな大型株を買うのが、外国人投資家の大規模買いに乗じた投資戦略としては有望そうです。

 むろん、米国の経済指標が悪化して景気後退に陥ったり、高金利政策のせいで銀行などが破たんして金融不安が起こったり、中東情勢や台湾を巡る米中の対立が激化して地政学的リスクが台頭するなど、不測の事態が生じた場合は株価の急落もあるので注意が必要でしょう。