※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の足立 武志が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「投資初心者に絶対知ってもらいたい!新NISAの『不都合な真実』」
愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ
2024年最初のコラムになります。本年も今までと同様、個人投資家の方が株式投資、資産運用で成功するために必要な、実践的な知識・情報をお伝えしてまいりますのでよろしくお願いいたします。
2024年になり、いよいよ新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートしました。筆者の周りのIFAの方や保険営業マンに聞いても、新規口座開設の勢いがものすごいと口をそろえて言っており、まさに新NISAをきっかけに投資を始めるという方も多いと思います。
しかし新NISAといえども投資は投資。投資にリスクはつきものですし、そんなに甘いものではありません。
そこで今回は、新NISAでバラ色の人生を夢見ている投資初心者の方に、あえて「不都合な真実」をお伝えしたいと思います。
なお、今回お伝えする不都合な真実は、いずれも過去実際に生じたものです。つまり、マーケットの歴史を学べば知ることができるものばかりです。
でも残念ながら、新NISAについての解説では、まるで新NISAで投資すれば必ず資産を大きく増やすことができる、というイメージが植え付けられてしまうものが多いです。
さらには、ここ10年程度の極めて好調なマーケット環境だけを切り取り、それがあたかも今後もずっと続くかのような誤認をさせる説明も多く、その一因として、解説者が自分の投資した経験のみを基に解説していることが挙げられます。
まさに「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」のが投資の世界。これからご紹介する不都合な真実に目を背けず、しっかりと向き合った上で投資をスタートしてください。
不都合な真実(1):20年間長期積立投資をしても資産が増えない可能性
ちまたの解説では、例えば「S&P500種指数のインデックスファンドに20年間、長期積立投資をすれば、過去の経験則上8%程度のリターンが期待できる」とされています。
しかし投資初心者は、20年間長期投資をすれば年率8%のリターンが得られると勘違いしてしまうのです。
まず1つ目のポイントとして、年率8%のリターンというのは「平均値」であり、実際はここから上下にブレることが多いです。
例えば1972年9月~2022年8月の任意の20年間のS&P500への積立投資のリターンを見ると、最高で22.6%、平均で8.4%となっている一方、最低は0.1%となっています。
つまり、投資スタートの時期が悪ければ、20年間積立投資を続けてもほとんど資金が増えない可能性があるのです。
また過去のデータではマイナス運用となった例はありませんが、将来的には20年間積立投資を続けた結果、マイナスになる可能性も十分にあり得ると思います。
新NISAによる積立投資に過度な期待は持たず、パフォーマンスが悪かったとしても老後資金を確保できるような工夫をしておくべきでしょう。
不都合な真実(2):株価指数が半値以下に下落
突然ですが問題です。
現在およそ3万3,000円の日経平均株価ですが、これが1万5,000円を割り込むまで下がると思いますか?
この問いに対して「まさかそこまで下がることはないだろう」と直感的に感じた方は、まさに「愚者は経験に学ぶ」をしてしまっています。
実はバブル崩壊後30年ちょっとの間に、日経平均が60%以上下がったことが3回あります。
これを当てはめると、現在3万3,000円の日経平均が60%下がれば1万3,200円になりますから、日経平均の1万5,000円割れは大いにあり得る、と考えるべきなのです。
また、S&P500も、リーマン・ショック時の2007年10月~2009年3月までの間に約57%下落しており、個別株はもちろんのこと、株価指数であっても半値以下に下落する可能性は十分にあります。
実際、リーマン・ショックの時は、保有する投資信託の価格が半値以下に落ち込んだケースが多々ありました。過去は長い目で見ればいずれも復活していますが、自らの運用資金が半分以下にまで目減りしてしまう覚悟を持って長期積立投資をするようにしましょう。
不都合な真実(3):株式の死
20年間の積立投資の成果を見せるグラフとして、例えば2002年6月~2022年6月の20年間S&P500のインデックスファンドに積み立てた結果、元本が4倍近くになった、という例を目にすることがよくあります。
しかしこのグラフをよく見ると、投資元本を大きく上回る成果を出しているのは後半の10年間であり、前半の10年間は投資元本が全く増えていないことが分かります。
この10年間の途中には2008年にリーマン・ショックがありましたので、その後元本割れが続いた時期もありました。
また、1970年代の米国株は「株式の死」と呼ばれる時期が10年以上続きました。10年以上の間、株価が横ばいで全然上抜けないという状況だったのです。こんなときに積立投資をしても、元本を増やすことはできないのです。
このように、10年程度の期間で見れば、積立投資を続けていても全く元本が増えない、場合によっては元本割れになるということは容易に起こりえます。2012年以降のバラ色のチャートとは全く異なる動きになる可能性も想定した上で積立投資を行うようにしましょう。
マーケットの世界は何が起こるか分かりません。新NISAで長期積立投資さえしておけば万全、とあぐらをかかずに、できれば長期積立投資と並行して、個別株投資にもチャレンジするなどして、利益を得られる可能性を高めておきたいところです。
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