資産(アセット)にはどんなものがあるの?

 では、運用資産の投資対象としてはどのような資産(アセット)があるのでしょうか。

 1つずつご説明致します。

株式

 まずは株式です。株式会社と株式投資で詳しくご説明しましたが、株式会社がビジネスを行うことで、売上をあげ、利益を出し、一部を配当として株主に分配する、といった一連の活動を通じて収益(リターン)を得るというものです。

 日本国内に限らず、海外などの株式も含めて資産形成のための運用資産としては中心的な資産になります。

債券

 債券は、国、地方公共団体、株式会社などが、お金を借りる時に発行する借用証書のようなものです。あらかじめ決めた利息を支払いつつ、あらかじめ決めた時点で元本相当部分も含めて返済する(元本が償還される)ものです。

 債券は市場全体の金利水準の影響を受けてその利回りが決まってくるのですが、現在の日本はゼロ金利、マイナス金利と言われる環境であり債券の利回りもほぼ0%近くとかなり低くなっています。

 これから資産形成していく場合、運用資産へ債券を組み入れても収益(リターン)はほとんど見込めない状況となっています。そのような状況を踏まえると、運用資産への組入にはあまり適していないと言えるでしょう。

不動産

 不動産は比較的分かりやすい資産かと思います。不動産を購入し、賃貸で貸し出すことで、家賃収入を得るというものです。1カ月、半年、1年、5年…と時間が経過すればするほどその間の家賃収入が得られる資産(アセット)です。

 実物の不動産を投資対象とした投資信託の一種である不動産投資信託(REIT:Real Estate Investment Trust)というものがあり、投資信託として購入することができます。

 不動産の運用利回りも不動産市場や金利水準などの影響を受けますが、一般的には3~5%程度の利回りになるといわれています。資産形成の運用資産として組み入れるのに適している資産(アセット)と言えるでしょう。

プラチナ、ゴールドなどのコモデティティ

 プラチナ(白金)、ゴールド(金)などの貴金属や、原油やガソリンなど、一般にはコモデティティ(商品、Commodity)と呼ばれる資産があります。

 これらは資産形成の運用資産として適切でしょうか?

 例えば、金の延べ棒を購入して目の前に置いておいたとします。1年後、5年後、10年後、どうなっているでしょうか?

 1kgの金の延べ棒は10年後1.5kgになっているでしょうか?

 残念ながら金の延べ棒が自己増殖することはありませんので、何年たっても自然に量が増えることはありません。

 このようにコモデティティと呼ばれる資産は、それ自体が何か付加価値を生み出す資産ではありませんので、資産の価値が上昇していくわけではなく、あくまで市況の変化による価格変動があるだけです(価格が上がったり、下がったりはします)。

 つまり、このような観点から、資産形成ハンドブックでは、資産形成の運用資産としてコモデティティを入れる必要はないと考えています(株式や債券などの伝統的な資産とは異なる値動きをすることから、運用資産の一部に組み入れることで価格変動の安定性が向上するといわれることもあります。資産家の方ならそれも一理あるかもしれませんが、普通の人はそれを気にする必要性は低いのではないかと考えています)。

 よく「時間を味方につけて長期投資をしよう!」などと言われることがありますが、コモデティティに投資した場合、時間は必ずしも味方になってくれないわけです。

資産(アセット)ごとの期待リターンは?

 いろいろ資産があるのは分かったけど、それぞれどのくらいの運用利回りが見込めるの? と思われる方もいらっしゃるかと思います。

 なかなか運用利回りの予測というのは難しいのですが、我らが日本の年金資産を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用している数字と、外資系運用会社であるJ.P.・マネジメントの予想をご紹介いたします。

基本ポートフォリオの考え方

※年金積立金管理運用独立行政法人のサイトに遷移します。

プレスリリース:J.P.モルガン・アセット・マネジメント、約60資産の期待リターン超長期予想-2021年版- を発表 – 新たな10年、新たなポートフォリオの時代が到来。 コロナ禍の金融・財政政策が未知のリスクを誘発 -(J.P.モルガン・アセット・マネジメント)

※PDFが開きます

 株式や債券、日本、先進国、新興国といろいろありますが、ざっくりまとめるなら、

  • 株式だと4~6%程度
  • 債券だと0~3%程度

 といったところでしょうか。