パウエルがハト派に方向転換、来年の大統領選挙の株価対策期待でNYダウが過去最高値を更新
FRB(米連邦準備制度理事会)はFOMC(米連邦公開市場委員会)にて12日、主要金利を5.25%から5.50%の間で据え置く決定を発表した。経済見通しでは2024年末の政策金利が参加者の中央値で4.6%となった。
利上げが終結した前提でみれば3回分の利下げ幅に相当する。9月に公表した前回の見通しでの利下げ幅は0.5%で2回分だった。FRBは2025年を犠牲にして、選挙の年に金融緩和を前倒ししてきたようだ。
FOMCのドットプロット
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パウエルのハト派転換をうけて、米国株市場は上昇しNYダウ(ダウ工業株30種平均)は史上最高値を更新した。
NYダウCFD(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)
S&P500CFD(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)
金利の方は、FOMCを受けて、米10年国債金利は大幅に低下し、4%を割り込む水準まで金利が低下している。金利低下によってドルも全面安となった。ドルインデックスはとりあえず2022年の10月でピークをつけた格好となっている。
米10年国債金利(日足)
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)
ドルインデックスCFD(日足)
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)
一方、日本の方は日本銀行が目先的に積極的な金融引き締めに動く可能性は小さい。日銀はYCC(イールドカーブ・コントロール)撤廃やゼロ金利解除後もタカ派転換はしないと思われる。とはいえ、批判の多い「マイナス金利」は解除して0.1%の利上げで「ゼロ金利」に戻したいようだ。そのために、日銀がいよいよ動くという観測が浮上している。
日本の量的緩和政策は<国民の預金を連帯保証人とするインフレ政策>である。破滅的なアベノミクス政策は、円安によって企業収益を上げ、その恩恵が家計に還元されるのを待つことが目的であった。
しかし、トリクルダウンはいっこうに起こらず、国民の有意義な賃金上昇をもたらすという点では大失敗であった。この失敗したMMT(現代貨幣理論)実験もゆっくりと終わりに近づいているようだ。
日本10年国債金利(日足)
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)
米国の利下げと日本の利上げ時期が重なると…
米国市場は劇的にハト派志向を強め、来年の利下げ幅は1.25%と見込まれている。米国の利下げと日本の利上げが2024年に行われたらどうなるだろうか?
日本の異常低金利と量的緩和が世界のエブリシングバブルを支えている。そしてドル/円の上昇はエブリシングバブルの象徴である。円売りのゲームに参加しているのは日本の個人投資家だけではない。日銀が異常低金利を続ける中、円は調達通貨となり、20兆ドルのキャリートレードが行われているという。
注意しなければならないのは、こうした円キャリートレードは、株式市場が暴落すれば(1998年のロシア危機・LTCMショックや2008年のリーマンショックで巻き戻されたように)最終的には涙をのむことになることである。
ドル/円(日足)1998年のロシア危機とLTCMショックによる円キャリーの巻き戻し
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後にも先にもこんなすさまじい円高相場を筆者は体験したことがない…
出所:石原順
豪ドル/円(日足)2008年のリーマンショックで大暴落
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株の暴落に注意! 2008年の円キャリートレードの巻き戻しは壮絶だった…
出所:石原順
経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、「中央銀行の刺激策で上昇したものは、インフレや弱気相場にかかわらず、必ず下落する。それは時間の問題であり、どれだけ(下落が)深刻なのかという問題である」と語った。
「信用拡大でもたらされた好景気は、結局のところ崩壊するのを避ける手段がない。残された選択肢は、さらなる信用拡大を自ら断念した結果、すぐに訪れる危機か、ツケを積み上げた結果、いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事かだけである」
(ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス)
以下は2023年12月14日現在のクロス円相場のチャートである。筆者の順張りトレードモデルの「メガトレンドフォロー」の売買シグナルは、ほとんどの通貨ペアが円高転換している。この円高がビッグトレンドになるのか否か、市場の動きを注視したい。
ドル/円(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)
ドル/円(週足)
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ユーロ/円(日足)
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ユーロ/円(週足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)
ポンド/円(日足)
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ポンド/円(週足)
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スイスフラン/円(日足)
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メキシコペソ/円(日足)
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南アランド/円(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)
相場で大損する最大の原因は、「必ず上がるとか下がる」といった思い込みと、損が出た後の対処のまずさである。筆者はトレンドフォローの売買シグナルに従って、相場についていくだけだ。
市場は激しいバブルと崩壊のサイクルを繰り返してきた。長期投資はかなりの乱高下に耐えなければならない。反対に、相場についていくというトレンドフォロー戦略はドローダウン(運用成績の落ち込み)がむしろ安定しているのである。